事例紹介 / リフォーム
白い内窓はエコガラス
短工期で悩み解消、心地よい家に
東京都・M邸
- 立地
- 東京都八王子市
- 住宅形態
- 軽量鉄骨造2階建
- リフォーム工期
- 2023年6月(2日間)
- 窓リフォームに
使用した主なガラス - エコガラス(内窓)
- 利用した補助金等
- 先進的窓リノベ事業/こどもエコすまい支援事業/既存住宅における省エネ改修促進事業
(東京都)
幼い子の体調が鏡 暑くて寒い家の窓をエコリフォーム
平成に生まれた新しい住宅地の戸建窓リフォームをご紹介しましょう。
Mさんご一家が暮らす築30年弱の住まいは、東西南北にたくさんの窓を持つ2階建。メイン空間であるリビングや和室には南向きの大きな掃き出し窓や出窓があり、個室やユーティリティも必要十分な開口が切られています。
迎えてくれたMさんいわく「窓を開けることは、あまりありません」
東京都の最西端に位置するこの土地は、秩父山系の豊かな緑の恩恵を受けつつ「夏は暑くて冬は寒く、夕方になると一年を通じて南から強い風が吹くのです」
「夜も静かなので、開けているとご近所に声が響いて迷惑にもなりがちです。気持ちよく窓を開けられる環境ではなかったという感じでしょうか」と続けました。
採光を主な役割としてきた窓といえるかもしれません。
けれど開閉しなくても、シングルガラスの窓は部屋の外と内とで熱が自由に出入りしてしまう最大の通り道です。
夏季は「エアコンを何台も回しても効かず、買い替えてもダメ。扇風機も併用したし、夜も空調なしでは眠れませんでした」
冬季はエアコン+ガスストーブ、廊下には石油ストーブも置き、就寝時はそれぞれの部屋でオイルヒーターを使用。それでも寒さは防げず「朝起きるとリビングのガスストーブに「室温“L(ロー)”の表示が出ていました」とMさん。数値が出ないほど低かったと苦笑しました。
窓まわりの結露も激しく、とくにキッチンとリビングは毎日の拭き掃除が欠かせず大変だったといいます。
開口部の断熱性能が低い住宅では、せっかくエアコンが涼しい、あるいは暖かい空気をつくっても窓から流れ出してしまい、代わりに外の熱気や冷たい空気が入ってきます。
暖冷房機器をいくら充実させても、暑さ・寒さ・結露の全面的な解決は難しいのが実情といえるでしょう。
窓リフォームに向けて最後に背中を押したのは、ヨーロッパで暮らす娘さんが帰省した際、お孫さんを襲った体調変化でした。
「冬に来て、風邪をひいてしまったのです。乳幼児なのでガスストーブも使えませんでしたし」
Mさんの言葉は、いつも以上に室温が下がっていた状況をもうかがわせます。
ならばと帰省を夏にすると今度は「暑くて暑くて、子どもの汗がすごかったです」と、取材時に同席くださった娘さんが振り返りました。
「日頃ヨーロッパの温水全館暖房の家に住んでいるので、暑くもなく寒くもない環境に慣れてしまっているんですよね」
近年、顕著にいわれるようになったヨーロッパと日本の住環境の違いを目の当たりにするようでした。
どうにかしなければ。M邸の窓リフォーム計画が動き出します。
ガラスのプロと百回相談! 補助金も防火も考えて内窓を選択
窓リフォームの構想は、Mさんには以前からありました。
周囲に高い環境意識を持つ人々が多く、窓の改修をした複数のご近所から「まだやらないの?」との声がけもあったとのこと。補助金関連の情報も、もちろん持っていました。
これまで踏み切らなかったのは、この家を建てたプレハブメーカー系列のリフォーム会社の「経年住宅なので補助金は出ない、うちとリフォーム契約してほしい」との話があったから。
しかしMさんは納得できず、知人を通じて紹介された(株)クリアの林 則子さんに相談します。
「百回くらい、電話やメールでやりとりしたでしょうか」
林さんは断熱ガラスのプロフェッショナルです。互いに粘り強く対話を続ける中で納得と信頼感が醸成され、Mさんはプレハブメーカーの誘いを断って窓に特化したエコリフォームを決断します。
クリアは補助金関連も明るく、結果として環境省・国交省・東京都から3つの補助金を受けることができました。
ハウスメーカーから強めの営業がかかっても安易に納得しなかった施主のがんばりが、良い出会いにつながったといえるでしょう。
選んだ手法はエコガラスの内窓の設置です。ここにはいくつかの理由がありました。
窓リフォームには、内窓設置のほかに既存サッシを生かしてガラスだけを入れ替える“ガラス交換”や、サッシも含めまるごと窓を取り替える方法もあります。
けれどMさんは「結露がひどかったので、既存のアルミサッシをそのまま使いたくありませんでした」。サッシごとの交換も、工事自体が大きくなると感じたといいます。
加えて敷地は準防火地域*で、窓リフォーム後も窓には網入りガラスを使う必要がありました。
既存サッシには今まで網入りシングルガラスが入っていましたが、エコリフォームに必要な網入りエコガラスは厚みがあり、既存の溝幅にはおさまらなかったのです。
防火地域内に建つ建築物の開口部は、ガラスとサッシ両方の性能がそろった上での認定が求められます。網入りエコガラスへの交換を希望する際、既存サッシを使いたいときにはガラスのプロショップとよく相談する必要があるでしょう。
ちなみにサッシごと取り替えるなら、工事方法自体は変わるものの、性能や防火認定での問題はありません。
夏も冬も居心地よい部屋 温度ムラ解消が安心安全も運んできた
効果について、うかがいましょう。
複数のエアコンを回しても暑さに辟易していた夏は「リビングの天井にある1台をつけて廊下に続く扉を開けておけば、家全体が涼しくなります」
隣接するダイニングキッチンや和室のほか、吹抜けの階段を通って2階まで冷気が流れていくといいます。
多種類の暖房機器が欠かせなかった冬もエアコン1台で暖かくなり「夜中に授乳などで起きても寒くありません」と娘さん。
「マンションで暮らしている人も納得できる暖かさだと思います」
さらにMさんは「洗面やお風呂のような、ちょっとしたところの暖かさや居心地が違うんですよ」とも。
ヒートショックがもっとも多く起こるのが浴室やトイレであることは、すでに広く知られています。リビングや寝室からの移動時や脱衣を伴う入浴など、温度差が大きいほど体にかかる負担は重く、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす可能性も高まるのです。
家の中での温度ムラ解消は、窓リフォームが果たす重要な役割のひとつでしょう。
「孫が来たときの体調が違います。以前はあまり家のあちこちに行かせないようにしていましたが、それもやめました」Mさんがにっこりしました。
電気料金も目に見えて下がっています。
太陽光発電パネルをつけた影響もありますが、とMさんはことわりながら、冬の電気代について「工事前年の2月3月と比べて半分くらいになりましたね」
もうひとつ印象的だったのが、ご家族の“気持ち”の変化についてのお話です。
娘さんは「暑い寒いと言わなくなりましたね。『ドア閉めて! 開けっぱなしにしないで!』がなくなりました」と、笑顔で振り返りました。
これは多くの人にとっても、思い当たるふしがあるのではないでしょうか。
カギは情報収集と学ぶ意思 “納得の窓リフォーム”が家族を守る
計画から施工まで寄り添ったクリアの林さんは「引っ越したり、一時的な転居もせずに、たった2日間の工事で問題が解決できて本当によかったです」
エコガラスの窓リフォームの強みである、短工期と日常生活への支障のなさを語ります。
さらに「窓リフォームは体にも良いですね。室温の乱高下はやはり悪い影響を与えますから」とも言い添えました。
これを受けて娘さんは得たりとばかり「実はそろそろまずいと思っていたんです」
「父がエアコンのスイッチを切ってしまうことがあって。脱水やヒートショックがあったらどうするの、危ないよ! って。娘としては心配していました」
ヒートショックと室温の関連を示すエビデンスは、近年いくつも発表されています。
いまだ道半ばの感がある日本国内の建築物の断熱化は、快適性・省エネ性・地球環境の改善のみならず、乳幼児から高齢者まで“誰もが健康に安心して過ごせる住環境”の実現にも、なくてはならないもの”でしょう。
エコガラス窓の役割は小さくありません。
今回の窓リフォームでMさんは「たくさん勉強しました」。
そして「めっちゃ満足しています。これからやる方は、できれば家じゅう全部の窓をやった方がいいと思います」
てらいのないその言葉は、多くの情報を得て深く考え、自らの家と家族を守った住まい手の静かな気概に満ちていました。
- 取材協力
- (株)クリア/クリアさんの窓の店
https://clear-g.co.jp/
- 取材日
- 2024年4月23日
- 取材・文
- 二階さちえ
- 撮影
- 小田切 淳
* 防火地域・準防火地域:都心の住宅地など多くの建物が集中する地域での火災を防ぐために、各建物間にある一定の空間を“延焼の恐れのある部分”として、そこに接する外壁部分に防耐火性能を持たせ、不燃・難燃性能のある建材を使うことなどを義務付けた地域。窓も外壁の一部とされ、防火性能の保持が必須とされる