事例紹介 / リフォーム
部屋と庭とを美しく繋ぎ
豊かさつくるエコガラス
東京都・K邸
- 立地
- 東京都八王子市
- 住宅形態
- RC造二戸建
- リフォーム工期
- 2021年8月(一日間)
- 窓リフォームに
使用した主なガラス - 真空ガラス
- 利用した補助金等
- 既存住宅における断熱リフォーム支援事業
(環境省)
家庭における熱の有効利用促進事業(高断熱窓・ドア)
(東京都)
築40年のRC住宅をこだわりの我が家に
ガラス窓は外光を室内に導くと同時に、外に向かう視線を通して内側から風景を味わわせてくれる唯一の建材です。
内と外を繋いで、住まう人の心の豊かさに一役買っているエコガラスを今回はご紹介しましょう。
多摩丘陵の広大な広葉樹林帯に開かれた歴史ある住宅団地が、お話の舞台です。
神奈川県のマンション住まいだったKさんは、築40年のとある住宅に心を奪われて2020年に移住。パートナーのMさんとともに、周辺環境と建物の魅力を生かした心地よい住空間を作り上げてきました。
前面道路に接する庭を持ち一見コンパクトなたたずまいですが、見えている側は建物の短手で、奥に向かって居室やユーティリティスペースが連なっています。
その庭に面したリビングスペースでお話をうかがいました。
2年前の入居時に「内装を完全にリフォームしました。僕たちが入る前は3年ほど空き家状態で、前に住んでいた方が自己流で塗った壁がはがれていたりと結構荒れていたので(笑)」とKさん。
プロの内装デザイナーと相談しながら、壁・床・天井と素材や形までひとつひとつ検討し“自らの住処”へと丁寧に生まれ変わらせていったのです。
出来上がったのは、漆喰壁と木のインテリアをベースに室内の観葉植物と庭の風景が呼応する、落ち着きと爽やかさが同居した心地よい空間。
窓外の緑が似合っていますねと言いかけると「家の中をきれいにしたら、窓ガラスが気になってきたんですよ」
エコガラスの窓リフォーム計画は、思わぬタイミングでおふたりの目の前に持ち上がったのでした。
古びて結露する窓をエコガラスで断熱リフォーム
K邸には11の開口がありますが、入居時はすべてリフォーム対象外でした。「設計時にも話は出ませんでした」とKさんは振り返ります。
「前の窓は結露して、サッシの下の方はカビていました」とMさん。Kさんも続けて「窓自体が野暮ったいのに加え、とくに椅子に座って外を見ようとすると横桟が風景を台無しにするのです。なんとかしたいと思っていました」
庭づくりはこの家での暮らしに欠かせないと語り、窓外の風景をリビングの一部にしつらえているおふたりにとって、“古い、結露する、さらに横に桟が入っていて視線を遮られてしまう”当時の窓は、「常に残念な状態でしたね」
悩んだ末にたどりついた解決法は、既存の窓枠を残してガラスだけを交換する窓リフォームでした。
工事を依頼したのは、エンドユーザー向けの窓の断熱リフォームに長く取り組んでいる甲府市のガラスプロショップ『クリアさんの窓の店』です。
店長の林 則子さんに、おふたりは「横桟がなく、きれいな透明で、結露しない窓」との希望を伝え、林さんはエコガラスの一種である真空ガラスを提案しました。
真空ガラスは断熱性能が高く、かつ既存のアルミサッシを使いながらガラスだけを入れ替えられる薄さが特徴。もとの窓枠を生かしつつ、結露をほぼ解消できます。
さらに「K邸はガラス窓が多い住宅です。真空ガラスに入れ替えることで、結露のほかに部屋全体の寒さも改善できると考えました」と林さん。
工事は2021年の盛夏に、1日で完了しました。
ガラスの透明性を楽しみ、断熱力で快適に過ごす
窓リフォームを経て2度目の冬を迎えようとする住まい手に窓と室内環境についてうかがうと、Mさんが開口一番「明るさはもちろん、部屋が広くなりました」とにっこりしました。
林さんに工事を依頼する際、いくつかの窓についておふたりは「型板ガラスを透明のエコガラスに」との希望を伝えています。隣家と軒を接するリビング東南部分など、視線を遮るため型板ガラスが入っていた窓を透明ガラスにと望みました。
プライバシー保持よりもすっきりとした見通せる気持ちよさを大切にしたいという思いが垣間見えるようです。
視線が気になるときはロールスクリーンやブラインドで調整すればいい。それよりも外の風景を十分に楽しみたい。このスタンスどおり、日中のリビングで窓のブラインドが閉められることはありません。そして内が外へと拡張し「広くて明るい部屋」が出現するのです。
“透明”という、ガラスに与えられた特質が住空間そして住まい手の暮らし方に与える影響を、目の当たりにする思いでした。
もうひとつ忘れてはならないのは、やはり断熱性能でしょう。どんなに美しくとも、ガラス一面結露で覆われていたりそばに寄れないほど冷たくて寒い窓辺に、人が憩うことは難しい。
「結露は今はサッシ部分に少しつくだけですね。寒さにはもともと強いので、冬の変化はよくわかりませんが」とKさんは笑います。
暖房器具はリビングのガスヒーターと電気ストーブだけ、しかも稼働するのは職場からの帰宅後「寒いと感じた時くらいです」。2面に窓のある寝室は空調なしで問題なく、起床後も出勤まで暖房なしが普通とのこと。
エコガラスの窓が一晩中、外からの冷気をシャットアウトしている面もあるのでしょう。
他方、Mさんは「寒がりなので、朝起きて寒い時はヒーターをつけますね。暖かくなったらすぐ消します」
彼女はここ以外に自分だけの生活スペースも持っており、K邸の室内環境は主たる居住者であるKさんのライフスタイルが多く反映されているようです。
夏は? と聞くと「この土地は涼しめです」。周囲に豊かな森があり、在宅時は窓開けと扇風機で十分しのげ「暗くなったら窓もブラインドも閉めます。エアコンは帰宅時に蒸し暑さを感じた時に1階リビングで少し使うくらい。観葉植物や漆喰壁も呼吸しているので、あまり必要ないのかもしれません」
西側に窓がなく、上下階にリビングのある東南側も深い軒の出を持つK邸は西日の心配もほぼないのです。
2階のエアコンが稼働するのは真夏の就寝時のみ、それも「2時間程度タイマーをかければ十分です。雨天など湿度が高い時を除いて、日中はまず使いません」
昼間の熱い外気や太陽光の熱も、室内には入っていないようです。
一般に屋根のある2階が1階より暑くなりがちなのはご存知の通り。エコガラスもひと役買っての断熱力が、快適さと省エネ性を実現しています。
家にいるのが好きになる! 窓で外と繋がる“おうち時間”
「窓からの景色が変わった! 毎日庭を眺め、心が豊かになりました」
おふたりの言葉は、今回の窓リフォームが成し遂げたもっとも大きな仕事を語っているかもしれません。
結露がないこと。横桟がないこと。そして外の寒さを遮断しつつ「あるはずなのに、存在していないかのように(Mさん)」内と外を繋ぐこと。
K邸のエコガラス窓はその高い性能を透明感に包みこみ、縁の下の力持ちとして住まい手の暮らしを支えています。
外からの見え方も変わりました。
前の道から柵ごしに見るK邸リビングは、掃き出し窓を通して室内の観葉植物がうっすらと目に入ります。手前に茂る庭の植栽とあいまって全体に奥行き感が感じられ、通りかかる人から「素敵ですね」と声がかかることも多いそう。
よく手入れされた緑のある家として、まちの景観に貢献している様子がうかがえます。歴史ある住宅団地に新しく居を定めるとき、こんなスタンスもまた心地よい暮らしづくりの大切な要素ではないでしょうか。
- 取材協力
- (株)クリア/クリアさんの窓の店
https://clear-g.co.jp/
- 取材日
- 2022年12月17日
- 取材・文
- 二階さちえ
- 撮影
- 小田切 淳