事例紹介 / リフォーム
エコガラスで夜もぬくぬく
中層マンションの窓リフォーム
千葉県 W邸
- 立地
- 千葉県白井市
- 住宅形態
- RC造15階建マンション
- リフォーム工期
- 2022年6月(1日間)
- 窓リフォームに
使用した主なガラス - 真空ガラス
- 利用した補助金等
- 既存住宅における断熱リフォーム支援事業
(環境省)
住宅用省エネルギー設備等導入促進事業
(白井市)
日が暮れてもカーテンいらず。12階の暖かな窓辺
リビングスペースに並ぶ大きな窓。視線の先にあるバルコニーには木製手すりや緑がしつらえられ、12階住戸の浮遊感に落ち着きを与えています。
Wさんご夫妻と娘さん、そして愛犬が暮らす住まいの窓リフォームは2022年の初夏、1日で完了しました。
2007年の建物竣工時から入っていたアルミサッシをそのまま生かし、ガラス面をエコガラスの一種・真空ガラスに取り替えたのです。
リビングのほか主寝室や子ども室、玄関のあかり取りまで、すべての窓が対象となりました。
奥様は「リビングのカーテンは就寝するまで閉めません。以前は日が陰ったら急いで閉めて、日差しで暖まった部屋のぬくもりができるだけ逃げないようにしていましたが、今は大丈夫」
毎朝拭いていた結露も気にならなくなったといいます。
内窓でしかリフォームできない?! 諦めず工事店を探す
「窓ガラスの交換リフォームは、ずっと前から考えていたのです」とWさん。とくに冬の寒さが厳しかったといいます。
もとの窓は単板ガラスで「日中は日差しで暖かいのですが、夜になるとぬくもりが窓から一気に外に出て行き、寒くなります。カーテンを引いても、その下から冷気が入ってきました」
換えたい理由はもうひとつありました。ガラス面の傷です。
入居後すぐに遮熱フィルムを張ったそうですが、愛犬やまだ幼かった娘さんがたちまち「ガリガリにしてしまいました」と奥様。
フィルム会社に相談すると、空気中に散る粒子が体にもよくないのですぐ張り替えるようにと言われ「それならガラスを換える方がいいと思いますよね」
さっそくリフォーム会社やマンションの施工会社に複層ガラスへの交換を相談しました。
が、返ってくるのは「耐風圧に問題があるので、できません」「内窓設置なら可能です」といった言葉ばかり。開け閉めの点で内窓は選択外だったご夫妻は、立ち往生を余儀なくされてしまいます。
我慢の年月が続いた後、やってきたのが新型コロナウイルスの流行でした。
寝室の一角でリモートワークすることになったWさんは当時を振り返り「何をやっても北向きの部屋は寒いんですよ」と苦笑い。暖房をつけながら、窓の断熱改修への思いが再燃します。
今度は複数の施工会社で相見積もりを仲介してくれる会社に相談しました。しかし内窓のみの対応だったり「ガラス交換できますよ」と言いつつ製品のメーカーがわからなかったりと、やはり不安の種は尽きませんでした。
ご夫妻は諦めず、ガラスメーカーのウェブサイトにアクセスして県内のガラスプロショップにたどり着きます。
連絡を受けた(株)木村ガラスの木村眞由美さんは、その日のうちに職人さんを伴ってW邸に直行、現場調査を行いました。「たまたま職人さんが事務所に帰ってきていて…よかったです」
木村さんが提案したのは、真空ガラスへの交換でした。
とくに南側は開口寸法のほかに既存サッシの溝幅も考慮した上で、現時点でもっとも性能の高い製品を提示。
「リビング側は4枚立ての大きな開口でしたが、既存サッシの状態がよかったのです。ガラス交換で断熱性能を上げればよい結果が出るだろうと判断しました」
2021年1月末に初見し、翌2月の半ばには工事内容まで決定と、スピーディな対応でした。
窓の断熱力+住まい方で冬も夏も快適に
工事は6月半ばの実質半日で終わり、効果はすぐ現れました。
W邸は玄関とリビングをつなぐ廊下の中央に扉があり、ここを境に住空間を南北を分け、時に応じてどちらか一方をメインに空調します。室内環境のカナメともいえるでしょう。
夏の日中はこの中扉を閉め、愛犬の居場所である主寝室のドアを開放してエアコンを稼働。Wさんのリモートワークも終わっているため家族全員が通勤通学で出かけます。「帰ってくると北側の主寝室から玄関、子ども室はよく冷えていますが、南はやはり暑いですね」
帰宅後に中扉を開け、リビングのエアコンとサーキュレーター、シーリングファンに切り替えます。就寝時は寝室のみ空調しますが、翌朝のリビングで暑さは感じなかったとのこと。夜のうちに冷やされた空気の流れ出しをエコガラスが防いでいるのがうかがえる話です。
そして冬は冒頭の通り。壁いっぱいの開口から差し込む日差しはリビング中央付近まで届き、ひだまりの空間に。そのぬくもりをエコガラスが日没後も保ちます。
カーテンなしで暖かく過ごせる夜のリビング。なんとも魅力的な空間ではありませんか。
オール電化のW邸は、エコガラスに換えて初めて迎えるこの冬の電気料金を確認するのが楽しみ、といいます。Wさんいわく「快適な場をつくるのが大事。省エネはあとからついてくると思うんですよ」
エアコンを使わずに我慢する生活はずっと続けられないし、体にも悪い。まずは無理なく快適な環境をつくることが大切。エコガラスの役割がここにもありそうです。
管理規約、補助金…信頼できる施工者と段取りがカナメ
W邸リフォームでもうひとつ参考にしたいのが“時間の使い方”です。
長い間、マンションの窓リフォームといえば内窓設置でした。窓は共用部に位置づけられ、ガラスもサッシも勝手に交換できなかったのです。
それが変わったのが東日本大震災後。住宅の断熱化の重要性が唱えられるようになり「うちのマンションでもガラス交換などが検討できるようになりました」
ご夫妻はここに留意し、本格的に動き出す以前から管理会社を通じて規約面での検討を理事会に伝えていました。ここでガラス交換が認められていたことで、木村ガラスへの工事依頼もスムーズにできたのです。
管理組合による工事の了承は、マンションの断熱リフォームにおいてはやはり避けられない通過儀礼といえるかもしれません。
補助金の申請でも、時間やタイミングは重要です。
2月に工事内容が決まりつつも施工が6月になったのは「自治体の補助金申請の関係です」と木村さん。
今回のリフォームは、環境省と自治体をそれぞれ事業体とする2種類の補助金交付を受けています。
ひとつめの、環境省による『既存住宅における断熱リフォーム支援事業』の申請手続きは、初見・現調から見積もり・確認を経て交付申請・承認までほぼ半月と、目を見張るようなスピードでなされました。
実は例年、この時期に補助金公募はありません。しかし今回は異例で、しかも工事完了報告の提出期限は夏となっていました。
ここで木村さんは考えます。
ふたつめの自治体補助金は当時、締切が過ぎていました。しかし新年度の公募が出るのは例年ほぼ確実。だとすればそれを待って工事に着手するのが得策ではないか…
数多くの申請業務で蓄積した経験による読みは的中し、新年度の5月に自治体補助金の新たな申請受付が始まります。これをクリアし、晴れて6月工事となったのでした。
その間、施主と施工者の間で頻繁な連絡が続いたのはいうまでもありません。「木村さんとのメールのやり取りが大事でした。やはり信頼のおける相手でないと」とWさん。
自治体に限らず多くの公的補助金は締切までの期間が短く、工事時期と申請日の兼ね合いは複雑と一、筋縄でいかないのがほとんど。窓リフォームの補助金申請はガラスプロショップの腕の見せどころのひとつになりつつあります。
相談・依頼先を探す際、心に留めておきたい要素といえそうです。
- 取材協力
- (株)木村ガラス
http://www.kimura-glass.co.jp/
- 取材日
- 2022年11月5日
- 取材・文
- 二階さちえ
- 撮影
- 小田切 淳