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事例紹介 / 新築

賃貸住宅にもエコガラス
豊かな住空間をより多くへ

埼玉県 Y邸

立地
埼玉県所沢市
住宅形態
木造軸組2階建(賃貸)
延床面積
102㎡

今月の家を手がけた工務店

(株)エイワンプラス
https://www.aone-plus.com/

持ち家全盛の時代にエコガラスのある戸建賃貸を

2018年時の日本国内で居住されている住宅ストック数は約5362万戸で、借家つまり賃貸住宅はその3割強の約1906万戸。さらにそのうちの7〜8割がマンションやアパートといった共同住宅で占められています。
持ち家優勢、かつ賃貸は集合住宅全盛を感じる数字です。

けれど、たとえ賃貸であっても幼い子がたてる物音や振動に気がねなく暮らしたい、大きなペットと一緒に住みたい、マンションとは違った開放感を享受したい… そんな思いを抱いて戸建を検討する方も、もちろん存在します。

戸建賃貸住宅の着工は1980年代以降減り続け、住宅の品質の促進等に関する法律(品確法)が施行された2001年以前に建てられたものが8割近くという“一大中古王国“が形成されました。
選ぶ際には古さに起因する暑さや寒さ、防犯や防災面などには、やはり留意しなければならないでしょう。

そんな中、高い断熱性能に防犯性も加えて建てられた戸建賃貸住宅があります。
地球温暖化や環境保全が叫ばれ、新築戸建や分譲マンション、一般建築の省エネ化が半ば常識となった現代にあって、取りこぼされてきた“快適で省エネな賃貸の住まい”です。

賃貸住宅にもエコガラス 豊かな住空間をより多くへ-外観

Y邸外観。南西に向かって開け、遮蔽物もなく日当たりは良好だ。とくに夏にはエコガラスの力が試される

借り手にも地球環境にも優しい省エネ賃貸の家

所沢市のほぼ中心に広がる住宅地の一角に2020年4月、Yさんご一家は引っ越してきました。
ここからそう遠くない中高層の賃貸マンションで暮らしていましたが、お子さんの成長で手狭に感じるようになり、また音や振動で下階に迷惑がかかる可能性を考えて戸建への転居を決断したといいます。

竣工直後のこの家をYさんは「実は、インターネットの紹介サイトで間取りだけ見て決めたんですよ」と笑いながら話します。賃貸ならではのスピード感です。

ほぼ第一印象で選ばれたといえそうなその住宅はしかし、窓にはすべてエコガラスが採用され、壁には100ミリ厚のセルロースファイバーを充填。十分な外皮断熱力を持ち合わせていました。

戸建賃貸には珍しいこの特長は、家主であるOさんの経歴に起因しています。

Oさんはかつてガラスメーカーに勤務し、エコガラスをはじめとする高機能ガラスを扱っていた、いわばガラスのプロフェッショナル。賃貸住宅経営を始めるにあたって「建物の断熱なんて、ほとんどの大家さんは考えていませんでしたね」と笑顔で話します。

効果について、住まい手にうかがいましょう。

賃貸住宅にもエコガラス 豊かな住空間をより多くへ-家主

家主のOさん一家はY邸の隣に住んでいる。賃貸住宅に断熱性能という要素を取り入れようとする“家主のトップランナー”的存在だ

夏の空調は「家族が長い時間を過ごすLDKのエアコンを弱めにつけます。温度ムラもないし、すぐに冷えて、本当に逃げないですよね」とYさん。
就寝前の寝室では「寝る1時間前にエアコンを回しますが、すぐ冷えて保たれるので設定温度28℃でも寒いです」とにっこりしました。

冬場も思い出していただきました。

12月と1月のみ、LDKのエアコンのタイマーを使って起床前に暖房しますが、その時期以外はホットカーペットだけ。「昨年は12月中旬まで、エアコンをつけませんでした」
寝室ではオイルヒーターを使い、エアコンは回しません。温風を出さずに輻射熱でじんわり暖めるオイルヒーターは、居室がしっかり断熱されて本領を発揮する暖房機器。Y邸の断熱・気密性能がよくわかるお話です。

この断熱効果はエネルギーの使用量に如実に現れました。電気料金が以前住んでいた家の半分になったというのです。
「暖房も冷房もつけたいときにつけて我慢していません。なのに電気料金は月約1万5千円。LDKの広さが二分の一だった以前の家では3万円でした」

電気料金の高騰が気になるこの夏も、心配はなさそうです。

  賃貸住宅にもエコガラス 豊かな住空間をより多くへ-リビング

21畳余のリビングダイニングキッチンに5箇所の開口部がある。とくに南と西に切られた大きな窓が室内環境に与える影響は大きく、エコガラスの断熱遮熱性能の腕の見せどころ

西日も暑さも泥棒にも強い 防犯エコガラスが家族を守る

南に大きな掃き出し窓を並べたY邸のLDKには、西面にも窓が切られています。前面道路が走るため、西日を遮る建物はありません。暑さを感じることはないのでしょうか。

「眩しさはあるけれど、暑さはありません」とYさん。日が回ってくればデザイン性の高い室内ブラインドをおろしますが、日射熱対策というよりは「テレビが見づらいので」と笑いました。

賃貸住宅にもエコガラス 豊かな住空間をより多くへ-テレビ

テレビに向かうソファは家族全員の居場所。午後から差してくる西日が室内ブラインドで遮蔽されていた

キッチン脇では縦長のすべり出し窓がほぼ真西を向いていますが、こちらはロールカーテンを採用。半分だけ下げて眩しさを防ぎながら「外の様子が見えるようにしています」
やはり暑さ対策ではないということでしょう。エコガラスの遮熱力が存分に発揮されている様子がうかがえます。

賃貸住宅にもエコガラス 豊かな住空間をより多くへ-ロール

キッチン窓のロールカーテンを半分下ろしたところ。すぐ外に歩道が走るが「視線は気になりません」とYさん

このキッチンの窓は、室内に風を取り込む際にも大きな役割を果たしています。

中間期の午前中は家じゅうの窓を20分ほど開けて掃除をするというYさんは「それ以外にも調理する前に開けたり、部屋全体に風を通したいときに、ここと玄関の窓を開けます。よく通りますよ」
縦すべり出し窓のすぐれたウインドキャッチ機能を十分に生かした使い方でしょう。

賃貸住宅にもエコガラス 豊かな住空間をより多くへ-すべり出し

縦すべり出し窓がつかまえる風はLDKを通り、東側の玄関ホール窓へと抜けていく

そして家主のOさんにはもうひとつ、こだわりがありました。高断熱のエコガラス窓のすべてに高い防犯性能をも持たせたのです。

防犯ガラス窓は2枚のガラスの間に透明な中間膜が入り、バールなどによる打ち破りに対し強い抵抗力を発揮します。エコガラスの断熱力による快適性に加えて外部からの侵入に対する安心感が生まれ「守られている感覚」を住まい手に与えてくれる開口部です。

賃貸住宅にもエコガラス 豊かな住空間をより多くへ-CP

エコガラスの断熱性能に防犯力を加えた安心の窓。昨今多く聞かれる強盗事件などへの対策のひとつにもなるだろう

日本の住宅には、大正時代までその多くが“持つものではなく借りるもの”だった歴史があります。
政府の持ち家政策によって、現代では戸建でもマンションでも“所有する”形が主流になりました。賃貸住宅は仮の宿とされ、性能もそこそこでいいのではといった雰囲気も少なくないのは否めません。

けれど、誰にとっても住まいは生活の基盤であり、快適さも省エネ性も本来等しく追求されるべきもの。地球温暖化防止やSDGsの観点からも、賃貸住宅の性能向上は求められているのではないでしょうか。

「ここに住んで、良さをじわじわ実感しています」とYさん。こんな笑顔がもっと増えていったら… そんな思いでY邸を後にしました。

賃貸住宅にもエコガラス 豊かな住空間をより多くへ-TV

リラックスしたご子息の姿から、居心地の良さが伝わってくる

取材日
2023年3月6日
取材・文
二階さちえ
撮影
金子怜史

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