事例紹介 / 新築
海風通るさわやかな家
エコガラスS(※)で明るく快適に
神奈川県 O邸
共働きの子育てファミリーが望んだ、動線良く明るい住まい
戦国時代には難攻不落の城をいただき、江戸期は宿場町として栄え、明治以降は文化人も多く住んだ小田原市。海・山・川と豊かな自然がそろい、東京や横浜の通勤圏でもあります。
Oさんご一家は奥様の生まれ育ったこのまちに2018年から在住し、4年後の2021年、新たに居を構えました。
「一年を通じて気候穏やかな、過ごしやすいところです。この土地で明るい家を建てたいと思いました」
住まい手の思いを託されたのは、地元で新築からメンテナンス、リフォームまで住まいづくりを一手に引き受けているコミヤ建設、そして奥様のお父様でした。
大工であるお父様は、建材から計画、性能面に至るまで、コミヤ建設代表の小宮浩和さんと二人三脚で娘夫婦の家づくりに取り組んだといいます。
明るい家に欠かせないのは、やはり窓。O邸の開口部は大きさと配置の妙とで「昼間は照明が要らないし、日が落ちても1箇所つけるだけでしばらく大丈夫」と住まい手も納得する質の高い採光を実現しました。
加えて計画当初一歳半だった娘さんを思い、ご夫妻が願ったのが“小さい子どもにも安全な窓”です。
「窓の高さを手が届かないところまで上げてもらいました」とOさん。物心つく前から開け閉めして怪我などしないようにとの配慮です。成長とともに開けられるようになる窓。家とともに育つことの象徴性をも帯びているようです。
手洗い・換気・リモートワーク。新しいライフスタイルに即した計画
2021年は、新型コロナウイルス発生拡大によってこれまでにない社会的変化が現れた年。この時期につくられたO邸にはそんな世相も映し出されています。
「外から帰ってそのまま洗面・お風呂に直行できます」
水まわりユーティリティスペースに続く動線が玄関ホールから始まり、手洗いはもちろん全身を洗い流せる浴室までLDKを経由せずたどり着くことが可能。室内にウイルスを持ち込まない、基本的な安心が設計されたのです。
キッチンも含め、水栓もタッチレスにしました。
換気も考慮されています。
採用したのは熱交換型換気システム。暖冷房しながら窓を開けずに換気できるので外の冷気や熱気が室内に入ってきません。体感面での快適性と同時にエアコンにかかる負荷が軽減され、省エネにつながるとされるしくみです。
2階には主寝室と子ども室のほかにもうひとつ居室があり、トイレと独立した洗面台も設置されています。
北西に面した居室は現在、机とパソコンを置きリモートワーク室としてOさんが使用。2面採光で換気も万全、万が一コロナウイルスに感染した際には快適な療養スペースとしても機能することでしょう。
明るさと風通しをベースに窓のサイズと配置を決定
O邸の窓はすべて、アルゴンガス入りエコガラスです。開け閉めの仕方も複数のタイプが採用され、どれも高い断熱性能を備えています。
採光はもちろん、隣家との関係や風の吹き方を考慮してサイズと位置が決められました。
南に広がる相模湾からの海風は恵みの卓越風。春や秋のいわゆる中間期はほぼエアコンなしでの暮らしが実現しています。
通年で吹く海風は1階ではリビングの掃き出し窓から室内に入り、ダイニングの上げ下げ窓、玄関ホールや洗面の窓まで流れていきます。
ダイニングと玄関アプローチの境にあたる上げ下げ窓は奥様のお気に入りで「それぞれ半分ずつ開けて、涼しい風を通しています」。
1階の通風はリビングの掃き出し窓とここ、そして玄関のすべり出し窓が主に担っているとのことでした。
2階も同様で、建物のファサードに当たる南バルコニーの掃き出し窓から南北に流れ、効率よく排出されます。
とくに「ウォークインクローゼットの窓がいい」とOさん。
この家の中でもっとも小ぶりな開口ですが、主寝室側から入る南風の出口としていい仕事をしているそうです。通年での風通しは、保管する衣類にとっても安心でしょう。
外とのつながりもしっかり考えられました。
ダイニングの上げ下げ窓は、風通しのほか「玄関に誰かがきたときにわかりやすいですね」
キッチンの真向かいにあるため、型ガラス越しの来訪者の気配を感じられるといいます。
2階リモートワーク室の東窓はOさんのお気に入り。「大きさもちょうどよくて明るいし、何より山の緑が見えて、自然との距離が感じられるんです」
広めの窓台部分も手伝って広さを感じる引き違い窓からは、国府津・曽我丘陵の緑が眺められました。
海も山も近い小田原の豊かな風土を感じさせる風景です。
エコガラスS(※)の窓で冬暖かく夏涼しく。エアコンは少しだけ
断熱・気密性能は住まいの快適さに直結します。O邸ではどのように担保されたのでしょうか。
アルゴンガス入エコガラスのほか、外壁部分に75mm、屋根と天井は160mm厚の吹付断熱を施し、床もグラスウール断熱ボードを採用。建物を包み込む外皮全体に高い断熱性能を持たせています。竣工直後に行われた気密性能試験では、C値(隙間相当面積)0.69㎠/㎡が記録されました。
この家での寒さや暑さの実感を住まい手に振り返っていただきましょう。
竣工後の入居は冬でした。O邸は暖房もエアコンのみですが「昼は何もつけません、日差しが入ると暖かいので。リビングの窓辺はポカポカですよ」床暖房もないフローリングは家族三人のくつろぎスペースだったとのこと。
就寝前の寝室でもエアコンのタイマーは使わず「お風呂上がりに涼しくなったらつけますが、すぐあったかくなります」
タイマーは起床時に合わせましたが、起きればすぐオフして階下に降り、そのまま食事をして家族全員が仕事場や保育園に出かけます。
1階は前夜暖められた室内空気のぬくもりが残っているのでエアコンはなし。
ピンポイントで少し暖房すれば、短時間で暖まって長く保たれる。エコガラスに代表される高断熱仕様の建物外皮が示すもっとも顕著な効果のひとつです。
これは夏場も同じです。
温度28℃、湿度55~60%がO邸のエアコン設定ですが、長く使っても就寝前の1時間程度とのこと。
起床後は寝室・リビングともに空調せずそのまま出勤し、夕方も帰宅してから「お風呂を出て涼めるように、という感じで」タイマーは使わずのんびりスイッチを入れるそうです。
閉めきって出かければエコガラスや断熱壁が外の熱気をブロックし、1日を通して室内に入り込ませていない様子がうかがえます。熱交換型換気システムによる24時間換気も奏功しているのでしょう。
外皮の断熱力が低ければどうしても外の熱気が室内に入りやすくなります。帰宅して扉を開け、内部の熱気に思わず一歩引く…多くの人が一度は経験されているのではないでしょうか。
ガラスが放つ美しさも豊かな暮らしの一部
O邸の敷地は準防火地域です。南面と一部の東面以外の窓ガラスは網入り防火仕様が義務付けられ、奥様いわく「ちょっと辛かったです」。
都市部での家づくりでは、頭の片隅に入れておきたい要素かもしれません。木造建築を基本とし、歴史的にも火事が多かった日本では建物の防火規定が厳しく、壁面以上に火が通りやすい開口部には高い防火性能を課して安心安全を担保しているのです。
それとは別に、O邸には魅力的な窓がありました。
ダイニングスペース脇の木製室内扉にはめこまれた型ガラスは、玄関ホールの灯を柔らかく通してどこかノスタルジック。白を基調としながら場に応じてテクスチャーの違う立体的な壁紙とも、よく似合っています。
もっとも気に入っている窓はどれですか、の問いに迷わずこの室内窓を挙げた奥様のセンスに、新たなガラスの魅力を教えられました。
アウトドアが共通の趣味というご夫妻は、ここに住まうようになってから「今日は家でゆっくりしようか、という日があります」。
そのひとことの中に、シンプルで快適で愛らしいこの家が内に秘めた底力が見える気がしました。
神奈川県O邸使用ガラス
-
・エコガラスS
網入ガラス6.8mm+アルゴンガス16mm+Low-Eガラス3mm・4mm
透明ガラス3mm+アルゴンガス16mm+Low-Eガラス3mm -
・エコガラス
網入ガラス6.8mm+アルゴンガス12mm+Low-Eガラス3mm・4mm
- 取材日
- 2022年9月3日
- 取材・文
- 二階さちえ
- 撮影
- 渡辺洋司(わたなべスタジオ)