事例紹介 / 新築
働くママが建てたZEH
支えるのはエコガラス
千葉県 C邸
子どもふたりと暮らす我が家を。ワーキングマザーの家づくり
シンプルで愛らしく、性能はバリバリ。C邸はBELS5つ星のZEH住宅です。
省・創エネ能力に長け、災害に強く、そして快適な住まいを建てたのは、ふたりの子どもを育てるパワフルなワーキングマザーでした。
戸建賃貸住宅で暮らす中、本気で家づくりを考えたとき迷わず相談したのが地元の同級生、早川剛史さん。房総エリアを中心に高性能住宅の設計・施工を手がけるZEHビルダー・早川建設の若き代表取締役です。
間取りやデザイン関連は「子どもの性別が違うので部屋を分けるのと、お雛様と兜の飾りがしまえる収納がほしいと言った以外、ほぼおまかせでした。あとは白木調のナチュラルな感じがよかった」
屈託のない笑顔から、早川さんへの信頼が伝わってきます。
希望にこたえて早川さんが提案したのは、木造平屋建でほぼ正方形の平面、中央にリビングダイニングを据えて周囲に居室や水まわりを配置するプランでした。
廊下がなく玄関から直接リビングに入り、家族の個室は確保しながら仕切りのない空間を増やす間取りです。
耐候性の高い窯業系サイディングの外壁を選択し、メンテナンスコストがかからない配慮もしました。
「無駄のない、SDGsにかなった家だと思います」と早川さん。
“家づくりはお金の話から”と言っていいほど、早川建設では日頃からお施主さんとの綿密なファイナンス計画を大事にしています。単なるコストカットではないプロとしての気配りは、ひとりで子育てしながら家づくりと子どもたちの進学資金づくりに頑張り続けるCさんへの力強いエールだったでしょう。
エコガラス窓で明るく。強くて暖かい超断熱住宅
一方、妥協しなかったのは性能面です。
意匠や間取りにこだわらないCさんが譲らなかったのは「災害に強くて、エアコンやこたつをあまり使わず、カビない家」でした。
住宅の強度に対する意識は、2019年の台風被害を経験した房総地域の多くの人々に共通しています。
さらに暖房機器の非使用=省エネルギーで、カビない=結露しない家 であることは、ZEHビルダーの中でも最高ランクの6つ星を獲得している早川建設の家づくりにそのまま合致するもの。多彩な提案がなされたのはいうまでもありません。
壁も基礎も天井も、建物全体が硬質ウレタンフォームの断熱材でくるまれ、計画換気と通気層構造で結露発生を防いでいます。外の暑さ寒さにじかに触れる建物外皮はその断熱力が省エネ性と快適性に直接関わってくるため、性能の確保は大事なポイントです。
中でもガラス窓は、壁以上に外と内で熱の通り道になるところ。シングルガラスの場合、夏は家に入り込む熱気の7割、冬は外に逃げる暖房空気の6割が窓を出入り口にしています。
この最大のウィークポイントともいえる窓で、C邸はアルゴンガス入りのエコガラスを採用しました。
西日や朝日の日射熱を受けやすい東西北面の窓には遮熱タイプ、南面の窓では断熱タイプのエコガラスを選択。さらに南側の軒を深めにして夏の直射日光を当たりづらくしています。
窓に高い断熱性能を持たせるのは「なるべく大きな開口を取りたいから」と早川さん。
熱の出入り口になる窓を小さくすればその分だけ室温は安定しやすく、エアコン類の効きもよくなって、それなりの省エネは実現されるでしょう。
けれど、壁ばかりで光が入らず昼間からあかりをつけ、外の風景もあまり見えないとしたら… 心地よい住まいとはなんだろう、と考えずにはいられません。
「大開口には性能が必要です。大きな窓があれば昼間は照明なしでOKですよ」早川さんの言葉が説得力を持って迫ってきます。
徹底した省エネライフ。楽しみながらゼロエネをめざす
早川建設が腕によりをかけたZEH住宅の住み心地はどうでしょうか。
2021年11月に入居しこの冬を過ごしたCさんいわく「暑いくらい暖かいですよ」
エアコンはリビングのほかCさんの寝室に設置済みで、子ども室にも用意はあります。が、住み始めて以来使っているのはリビングの1台のみ。設定温度は20℃です。
稼働頻度も低く「子どもが寒いといったら自動運転しますが、あまりつけません。つけていてもお風呂から出てくると暑いのですぐ消してそのままですね」
就寝時に寝室が寒い時はドアを開け、リビングから暖かい空気を流せば大丈夫、とCさん。「エアコンは“食い”ますから」日中の効率が良い太陽光発電への配慮に加えて高いコスト意識ものぞかせました。
結露については、ないどころか「24時間換気の家なので乾燥しやすい」との早川さんの言葉通り、室内は乾燥気味です。Cさんは「お風呂が終わったら浴室や洗面脱衣室のドアを開けっぱなしにして、家の中に湿気を流しています」
そして入居後の電気代は、月換算で約5000円。オール電化の家、しかも冬の話です。太陽光発電や高効率家電の使用を差し引いても、目をみはる成績でしょう。
ここには家じたいの性能のほか、Cさんのライフスタイルが色濃く反映されています。
この家に住み始めてから「常に電気のことが頭にあります」とCさん。
洗面近くの壁に設置されたパワコン用スイッチや、スマホに転送されてくる太陽光発電・使用量を頻繁にチェックし、そのときどきで無駄のない電気の使い方を選んでいるというのです。
C邸の太陽光発電は設置費用を売電収入で返済するプラン。完済後本物のゼロエネハウスになるともいえ、Cさんの頑張りはもうしばらく続きそうです。
なかでも活躍しているのが『スロークッカー』で、発電量の多い日中、平日は夕食の下ごしらえをし、休日は「お菓子など手の込んだものをつくります」
“楽しんで省エネする”この姿勢は、ぜひ見習いたいところでしょう。
「家が倍になったのに時間ができた」との言葉も印象に残ります。
家事が終わったら早めに就寝、朝はさっと起きて洗濯機を回し、暖かい部屋でストレスなく動けるのです。「前の家ではこたつの中ばかり。寒いと動けないですよね」
寒くない、そして暑くない家に暮らすことの真髄は、実はこんなところにあるのではないでしょうか。ZEHビルダーの早川さんも、暖冷房機器にかじりつかずに暮らせる環境を「人生を得する家」と呼んでいます。
取材終盤、日が傾いてもなかなかエアコンを回さないCさんに「寒いからそろそろつけたら?」と気遣いの声をかけつつ、早川さんは話します。
「コスト的には背伸びしたけれど、いい家を建てたいという強い思いで削れるものは削り、攻めの姿勢で思い描いた暮らしを彼女は手に入れました。家づくりはやはり共働きでないと通常は難しいんです。そこを諦めずにCさんは自分の足で道を作ってきた。友人として会社として、とてもうれしいです」
冬の日差しがひだまりをつくるリビングの窓辺で寝転ぶのが好きといい「実家に帰るとエアコンとこたつがあっても寒くて、早く帰ってきたくなるんですよね」とCさん。
笑顔の裏に隠されている途方もない頑張りがつくった小さい宝石のような高性能ハウスを、幾度も振り返りながら帰路につきました。
- 取材日
- 2022年1月8日
- 取材・文
- 二階さちえ
- 撮影
- 金子怜史