Designer’s Voice 建築設計者の声
1983年生まれ。日本女子大学家政学部住居学科卒業、同大学院家政学研究科住居学専攻修了。2008年~2011年山本理顕設計工場勤務。2015年~ピークスタジオ一級建築士事務所共同代表。日本大学・日本女子大学非常勤講師(2021年~)一級建築士
藤木俊大(ふじき・しゅんた)
1983年生まれ。東北大学工学部建築学科卒業、同大学院工学研究科都市建築学専攻修了。2008年~2013年山本理顕設計工場勤務。2015年~ピークスタジオ一級建築士事務所共同代表 一級建築士
日本全国を対象に住宅・店舗・公共施設・官公庁など大小さまざまな建築の計画設計を行う一方、事務所のある神奈川県川崎市のエリアリノベーションにも参画。さらに地域イベントのプロデュースやグラフィックデザイン、インテリアの設計まで取り組みの対象は多岐にわたる。手がける作品は人のつながりや関わりを生む中間領域を真摯に追求する姿勢を映し、デザインの洗練と温かみが同居する。
2018年グッドデザイン賞(南三陸町役場庁舎)、2019年キッズデザイン賞(森と自然の保育園SORA)、2020年日本建築学会作品選新人賞(南三陸町役場庁舎・歌津総合支所・公民館)/グッドデザイン賞(誰かのための家ー六甲の住宅)、2021年東北建築大賞2020年大賞(南三陸町役場庁舎・歌津総合支所・公民館)/グッドデザイン賞(武蔵新城のエリアリノベーション)他受賞多数
設計の要はつながりや関わりを生み出す『中間領域』
住宅から保育園、自治体庁舎までさまざまな建築の計画設計のほか、地域のまちづくりも手がけておられます。設計のベースとして何を大切に考えますか?
藤木 境界やラインの引き方でしょうか。他者とのつながりや関わりといった面で、クローズではなく開かれたものをつくりたいと思っています。
佐屋 パブリックとプライベートの関係、“中間領域”についていつも考えますね。実現が難しいと思っても、デッキや建具のつけ方によってつながれる場をつくろう、と。
中間領域とは、どういうものでしょうか。
藤木 いい意味で曖昧な空間、「これは◯◯」と言いづらい場ですね。スキがある、だから限定的にならないというか。
今、都市公園の公募設置管理(Park-PFI)制度が適用された事業で、川崎市内の公園にある管理事務所の建設を進めています。
4月に竣工する予定ですが、事務所のほかにチャレンジショップや地域のグループが活動できるレンタルスペース、周囲にはベンチやカフェも配置します。
企業のオフィスと、市民が楽しんだり休憩する空間が混在している…
佐屋 誰でも立ち寄れる場としました。ピークスタジオの事務所も一部、そこに移転する予定です。
断熱面だけで窓がマイナスに思われるのは残念
窓や開口部に対するスタンスを教えてください。
藤木 中間的な場をつくろうとするときは、内部空間でも「外っぽい」のが重要です。なので、しっかり光が入るようにハイサイドライトにすることも多いですね。
あと、基本的に窓は大きく取ります。ここから向こうが外でここからは内、とあまりならないように。
周囲に樹木が多いなど外の環境が良いところで大きな窓があれば、“緑の中に暮らす”感じになります。
日射のコントロールは?
佐屋 庇をつけるより、床スラブや手すり壁を立ち上げるなど、“建築で解決”しています。例えば石垣島のオフィスを設計したときは、伝統的な沖縄の民家で見られる『雨端(アマハジ)』を使いました。
建材としての窓やガラスにどんな性能を求めますか。
佐屋 窓は防汚性能があればいいですが… 予算がローコストな計画が多いので(笑)高性能な設備はあまり使いません。
開口部の断熱については全体にメリハリをつけ、中間領域は少し寒めでも室内はしっかり暖かくします。
設計時にもし性能とデザインが相容れない場合、優先するのは。
佐屋 性能を無視することはありません。努力して最善の方法を探し出し、性能を満たしていきますね。
藤木 窓は断熱できる方がいいと思います。
断熱等級を上げるには窓は小さく、あるいはない方がいいといいますね。でも、等級が取れるからと窓をなくせば暮らしへの犠牲が大きすぎる。小さいのもさみしいです。
窓がマイナスに思われるのは残念、(温熱)等級によって豊かさが失われないようにしないと。
例えば事務所の東側はガラスの大開口です。この窓があることで、前の道を通る人と挨拶を交わしたりできるんですよ。
『共在感覚』を糧に許容の場づくりをめざす
まちづくりに取り組むタウンアーキテクトとしての側面も強くお持ちです。
佐屋 ここ(新城エリア)に事務所を置いたときは知り合いもいませんでしたが、いろいろなつながりができて今はしっかりしたまちなかのミュニティになりました。
ただ、コミュニティはできすぎると排他的になる面もありますよね。
これからPark PFIで取り組む事業は、“公園”というさらに公共性が高いものが対象。我々の場づくりの力が試されると思っています。
- 取材日
- 2023年12月7日
- 取材・文
- 二階さちえ
- 撮影
- 小田切 淳
- 社名
- ピークスタジオ一級建築士事務所
- URL
- http://peak-studio.net/
- 住所
- 神奈川県川崎市
- 社員数
- 5名
- 事業内容
- 建築設計・グラフィックデザイン・家具設計・タウンアーキテクト業務