ロゴ

Builder’s Voice 工務店・ガラス店の声

ZEHの家づくりで未来をつくる

早川剛史(はやかわ・たけし)

1985年生まれ。建築専門学校卒業後、建設会社にて営業職および現場監督として勤務したのち、2010年早川建設入社。2016年専務に就任し営業を兼ねつつ経営に参画。2020年代表取締役就任、現在に至る。2019年~2021年ZEHビルダー5つ星認定。

「人が喜び、楽しんでくれる家づくりをする」との企業理念の下、建前に終わらない高い志を掲げ家づくりの現場で実践。生まれ育った南房総地域を愛し「地元の家づくりで不幸になる人をなくし、今も将来も幸せになってほしい」と、ときに顧客を圧倒するほど熱く語り続ける。その人物に多くの施主は魅せられ、住宅ローンや火災保険に関する深い造詣も含めて全幅の信頼を寄せている。
趣味は筋トレ。精悍な体躯で常に社員を気遣う『はやけんの大黒柱』だ。二級建築士・福祉住環境コーディネーター

ZEHビルダー5つ星。建てるのは“喜びと楽しみのある高性能住宅”

2019年度から2021年度まで、ZEHビルダー5つ星として認定を受け続けておられます。建てる住宅も100%ZEHですね。自社の基本環境性能はどのように定めていますか。

ZEHビルダーは2015年から登録しています。
自社性能の基準値はQ値1.51、UA値0.39、C値0.5以下、ηAC値1.5、ηAH値1.5が指標です。ほかに長期優良住宅であること、太陽光発電、第一種換気などですね。

窓まわりについては。

アルゴンガス入りLow-Eガラスが基準で、日射取得タイプと日射遮蔽タイプを使い分けています。通常、東西面の窓は小さく、南向きの窓を大きくしてもっとも高い性能を持たせます。それによって住まいは快適になりますから。

“窓があるから家族の団らんが生まれる”そう考えています。
例えばカウンターの前にピクチャーウインドーがあるような“イイ感じの家”でも、窓が断熱されていないとそこに居られませんよね。

確かに。でも、御社の商圏である南房総エリアは温暖で穏やかな気候というイメージがあります。どの程度の性能が必要なのでしょうか。

南房総でも、冬は気温がマイナスになる日もあるんですよ。
けれど住まいに高い性能を求める人は、いません。みんな見ないふりをして情報も入れないし知ろうとしない。それでヒートショックが増えて医療費がかかる、という状況です。

ZEHの家づくりで未来をつくる-太陽光屋根

実質的拠点である『館山家づくりBASE』には、事務所棟を中心にモデルハウスやゼロエネ賃貸住宅、レンタルスペース等が建つ。黒い屋根の事務所と隣り合うレンタルスペースの屋根に設置された太陽光発電パネルで社内のエネルギーをまかなっている

ZEHの家づくりで未来をつくる-取材風景

事務所内の打ち合わせスペースでお話をうかがう。現在早川建設で家づくりをしているKさんもご同席くださった。居心地のいいこのスペースは打ち合わせに訪れる施主の家族、子どもたちにも好評。この日もKさんのお子さんふたりがリラックスして遊んでいた

性能重視のスタンスはいつからでしょう。

2014年頃です。
それ以前から住宅建設はローコスト全盛の時代になっていて、建設コストを下げ続けていました。長期優良住宅や耐震等級3は保っていたものの、ローコストを求めるお客様は性能に興味がないんです。
安い住宅は快適ではないし、傷みやすくなります。そんな住宅をつくり続ける会社に存在意義はあるのだろうか。仕事をする自分たちにとっていいのだろうか…そんな思いがありましたね。

高気密高断熱を実現する工法と出会ったタイミングで、当時専務だった私が現在のスタンスに舵を切りました。

ZEHの家づくりで未来をつくる-打ち合わせスペース

奥にもうひとつある打ち合わせスペースにはパソコンや建材サンプルが並ぶ。事務所の窓もすべてLow-Eガラス

同時に社内体制も変革していかれた…

横浜の建設会社から故郷に戻り入社した時点ですでに売上がだいぶ下がっていて、まずいなあと思っていました。営業の仕事から始めましたが受注は増えず、職人さんのレベルも上がらなくて。

2016年に専務に就任し経営に関わる立場になって、会社の下地作りからやり直しました。
営業マニュアルを作成し、職人さんや業者さんを鍛え直し、ゼロエネ住宅に取り組み始めたのも、この頃からです。

家づくりの正しい知識を伝えられれば、他店に行かれてもかまわない

お施主さんはどのような方ですか。営業の方法は?

お客様は30代ファミリー層、初めて家を建てるという方がメインですね。

営業やPRにはHPやSNSを使っていますが、2020年4月にモデルハウスを建ててからHPのアクセス数が倍、集客数が1.5倍に上がりました。

モデルハウスが見たくて来社されるお客様が多いです。前に県道が走っているのですが、その通りすがりに見つけて来られる方もたくさんおられますね。ロケーションがいいんです(笑)

最初はご家族だけで自由に見ていただいて、気に入ったら打ち合わせに入ります。

ZEHの家づくりで未来をつくる-モデルハウス外観

事務所の窓からテラスごしに2階建のモデルハウスを見る。打ち合わせと空間体験が同時にできるのは施主にとって僥倖だろう

打ち合わせでは性能の話をしっかりなさるでしょうね。

「今だけでなく、五世代を守れる家をつくりましょう」と話します。
でも、実はローンの組み方や台風など災害時の保険といった“お金の話”をきっちりやるんですよ。
価格面で逃げると将来がダメになると思っているので。

どういう意味でしょうか。

お客様には、高性能住宅で有名なハウスメーカーからシフトしてくる方もおられます。その会社にはないデザインや間取りの自由度、そして価格に期待して早川建設に来られるんですね。
そのような方には「ハウスメーカーで建てれば、そのお金は地域に落ちずに海外に行きます。うちで建てれば地域の子どもたちのためになります」と話をします。

安易にローコストな家は建てません、ということですね。

説明するのは早川建設の考える正しい家づくり、“将来を見据えた、健康で安心・安全な家づくり”です。イニシャルコストはかかるけれど、かかる光熱費は私たちの家の方が安いので35年後には逆転しますよ、と。
すると「そのレベルでもっと安く建てられないか」と聞いてくる方がいる。そのときは安く建てる工務店を紹介します。お客様の願いを叶えるために。

ZEHの家づくりで未来をつくる-モデルハウス

モデルハウスはリビングダイニングや階段室、水まわり、個室までがそろい、2階では早川建設が基準とする性能に関する詳細な説明パネルや模型を閲覧できる。希望者は家族だけで随時見学でき、その気軽さが好評だ。2階の窓からは前面を走る県道が見える。ここは車通りが多く、運転中に見かけた顧客候補が見学を申し込んでくることも多い。オンライン見学会やQRコード読み取りによる動画配信など、リモート対応も怠りない

ライバルである他店を紹介するんですか?

“正しい家づくりのための知識を得てもらう”のが目的で説明するので、聞いて納得した上でローコストを選ぶことは不幸ではないと思うんですよ。安くなった分、他のものにお金を使えばいい。
ただ、他所で「早川建設と同じレベルの家で安くできる」と言われたらそれはやめたほうがいい、とは言いますね。

ZEHの家づくりで未来をつくる-表情

「若い方ほどいい家に住んでほしい」という。省エネ性能による恩恵を計算しやすいし、高齢になるほど安い家のいろいろな弊害に影響されるから、と。早川建設のスタッフにはファイナンシャルプランナーの有資格者もおり、設計や建設だけでなくローンの組み方や火災保険までコスト面の実用的な相談にも力を入れている。家づくり中のKさんは30代だが「話を聞きに来たらいきなりお金の話から始まって、でもそれがよかったです」と振り返った(撮影時のみマスクを外していただきました。以下同)

SDGsも念頭に。故郷の常識を張り替え、五世代続く家をつくりたい

HPでは「地域で進化する先導的工務店でありたい」とうたっておられます。どんな工務店なのでしょうか。

南房総エリアで家を建てるときは“親戚の誰かから工務店が紹介される”のが常識なんです。
だから家づくりの知識を得ようとしないし情報も入らない。建てる方も努力しないから結局は住む人が割りを食うことになるのに、それも言えない。
ここを変えたいんです。地域の常識を張り替えたい。だから話をしたあとに他所に行かれてもいいんですよ。

正しい家づくりにはお金がかかると納得してもらうために、どのように説明し伝えているのですか。

家は基本的に“幸せな人”が建てるので、まず子どもの話をします。
あなたの子どもが相続するとき、性能が高い家なら売れるけど、安く建てたらボロボロになる。解体費だってかかる、それでいいの? 二世代三世代使える家は決して高くないんですよ、とね。

打ち合わせのほかに家づくりセミナーやイベントもしますし、建物見学会も随時行っています。
若いご夫婦向けに、ゼロエネ住宅を体感できる平屋の賃貸住宅も建てました。仮住まいではなく実際に住んで体験してほしい。そこで得た情報を将来の家づくりに役立ててもらいたいという思いです。

ZEHの家づくりで未来をつくる-チラシ

社長就任時の挨拶状にも人柄が表れている。味気ない葉書よりも、会社を知ってもらいながら楽しめるよう、A4サイズのチラシ仕様にした。ユーモアの中に地元の未来を担う決意と気概があふれる

敷地内には住民向けのレンタルスペースもありますね。地域貢献の一環でしょうか。

こういったスペースは市内にも何箇所かありますが、運営側の対応がいまひとつ。私はJCの理事長でもあるので、気持ちよく使ってもらえる場をつくりました。使用料は1時間500円で市内最安です(笑)

地域や社会に向かう広い視野を常にお持ちです。

市役所やJCと一緒に、SDGsの普及にも取り組んでいます。

SDGsって、工務店こそがやるべきだと思うんですよ。スクラップ&ビルドはダメだと言いながら今も続いているでしょう?

早川建設の家は“メンテナンスフリー”。これは「その後のリフォームでの売上を考えない」ことを示しています。
定期点検は竣工後3ヶ月から20年後までもちろんやります。そこで不具合があったら、ドライバー1本でその場で直す。壊れる前に無料で直すからメンテナンスフリー、というわけです。

それとは別に、SDGsは17項目の連携が大事と考えています。個人的にはフェアトレードの綿花のタネを蒔いて育て、それを原料にTシャツをつくるという活動もやっていますよ。

ZEHの家づくりで未来をつくる-レンタルスペース

最新のシステムキッチンからピアノ、机椅子までをそろえた板張りのレンタルスペースは、低料金と使いやすさで地域住民に大人気。中学生の自主勉強からシニアの健康教室まで多様な活動が可能だ。早川建設の標準仕様で建てられ、利用者はゼロエネ建物の室内環境を体験できる

強固な理念と志に裏打ちされたお取組や経営手法を、スタッフの方々とどのように共有し、浸透させているのでしょう。

現在公開しているHPはスタッフ全員でつくりました。また、週一のペースで営業職向けや管理職向けの勉強会をそれぞれ社内で開催しています。

女性スタッフも大勢おられますね。

女性が多いのは大事です。まず男性がこぎれいになる(笑)
SNSなどで女性目線を取り入れることで、客層も変わってきました。女性が表に出てくると安心感が生まれるんですね。うちは設計者も女性ですが、打ち合わせ時に「ここに家事コーナーをつくったら」とか「コーヒーが美味しそうに見える照明にしましょう」などと提案して喜ばれています。

新型コロナウイルス発生拡大の影響で、新築住宅着工数が回復しています。これから何をやっていかれますか。

二世帯住宅の普及に力を入れていきたいです。そして短い時間で壊す家でなく、五世代続く家をつくりたい。
そのためには“家は自分たちだけのものではなく、子どもや孫にまで残すもの”という考えをお客様に納得・共感してもらうことが必要だと思っています。

早川建設のミッションは『未来を、今つくる』。だから、今の基準に満たない“昔の基準の新しい家”を、これ以上この地域に建てられては困るんです。

ZEHの家づくりで未来をつくる-取材風景小谷さん

女性スタッフがいることについて、Kさんも「(女性設計者である)小滝さんが提案してくれた家事コーナーはいいですよ」と太鼓判を押した。

ZEHの家づくりで未来をつくる-スタッフ

モデルハウスの玄関に飾られたスタッフの名前入りブロマイド。“はやけん品質”の源泉がここにある

取材日
2021年5月16日
取材・文
二階さちえ
撮影
小田切 淳
有限会社早川建設
社名
有限会社早川建設
URL
https://www.hayaken.co.jp/
住所
千葉県南房総市(本社)/館山市(館山店)
社員数
12名
事業内容
注文住宅・アパートの設計施工及び請負/性能改善リフォーム・機能改善リフォーム/建売住宅販売/不動産賃貸業

バックナンバーはこちら

PageTop