事例紹介/リフォーム

明るく広々と。
暮らしやすくて暖かい平屋の家

長野県・K邸

Profile Data
住宅形態 木造軸組平屋建
住まい手 夫婦+子どもひとり
建築面積 108.68m2
延床面積 99.99m2



今月の家を手がけた建築家:岡江 正(岡江建築設計研究所+CIRCLE)


囲まれ必至の分譲地の中で望んだ住まいは南向き・平屋・全館暖房

K邸は県産材を70%以上使った木造住宅。分譲地内に建ち、現在は西側にのみ隣家がある。庭のある南面以外はいずれ住宅が建つことが予想されるが、住まい手は強い意思で平屋を望み、プライバシーを保ちながら外部からは想像できない開放感を内包する家となった
中央に据えたキッチンの左右に廊下が走り、居室や水まわりが並ぶ。キッチン背後は家族共有のウォークインクローゼットとし、上部はロフト。木のガラリはロフトの高窓からの光や風を通し、厳寒時は予備エアコンの吹出口にもなる
Kさんお気に入りのナラ無垢の床材を張ったリビング。主寝室やゲストルームとの間は引戸にした。ふたつの窓を隔てる壁には、ぶ厚く入れられた断熱材の存在感が
廊下の再奥からリビング側を見たところ。左手に浴室やトイレ等が並び、キッチン内部を通れば西側の廊下に抜けられる。手前の引戸はクローゼットの入口

日本有数の山岳地帯・北アルプスや美ヶ原高原に抱かれ、国宝・松本城を擁する松本市。美しい風景や城下町ならではの多彩な文化を誇るとともに、冬は気温−10℃以下、夏は35℃以上を記録する土地です。
関西から転居し、10年前から信州に住むKさんご夫妻は、終の住処として北部の大町市からここに移ってきました。

家づくりのポイントを問うと「平屋・南向き・全館暖房です」と、明快な答えが。
京都出身のKさんは、密集した住宅地に建つ北向きの二階家に育ったといい「結婚して鉄筋コンクリートの集合住宅に住んだとき、南側から入ってくる日差しの暖かさと、平屋の暮らしがこんなにも楽であることを初めて知りました。それで、家を建てるなら南向きの平屋をと」
家事で楽をしたいんですよね、と屈託なく笑いました。

そこに「寒い松本に暮らす限りは」と全館暖房の希望を加え、地元の工務店・岡江組に家づくりを依頼しました。

設計を担当した岡江 正さんは、分譲地の一角にある敷地を見て「数年後には、まわりは隣家で囲まれます。当初から平屋をご希望だったので、内側にしっかりした空間を持ち、家の中でも楽しく面白い住まいを考えました」と振り返ります。

片流れの大屋根の下、キッチンとリビングを中央に据え、両脇に寝室や水まわりを配置するシンプルな平屋ができあがったのは、2013年の秋でした。

22畳弱のリビングダイニングには真南を向く掃き出し窓が並び、その先には木製デッキと庭。対面型キッチンの幅2.5mの開口からは家じゅうが見渡せ、息子さんの遊ぶ姿も確認できます。
北にいくほど高くなる勾配天井はキッチンカウンター部分で約3.7mあり「子どもとボール投げして遊べる(Kさん)」開放的な空間となりました。
キッチンを挟む2本の廊下は、室内に回遊性も生み出しています。「息子が友達を連れてくると、ずっと走り回っています」とKさん。

「廊下はみんな極力省きたがりますが、この家では遊びに使える空間になっているんですね」」家の中に楽しさを、と考えていた岡江さんから、してやったりの笑顔がこぼれました。


光と風と開放感 囲まれた家を快適にする窓たち

リビング全景。掃き出し窓の先はいずれ庭として植栽が整備される。左手に趣味スペースの土間が見える
ガラス戸と腰高窓とで土間への視界は良好、外光も取り込める。ご夫妻のスキー用具の乾燥室も兼ねたこのスペースを「気に入ったものだけを見られる<お洒落な物置>にする予定です(笑)」とKさん
正面奥の窓から北側の安定した光が入り、白壁に反射して室内をまわっている
               明かり取りと通風の役割を持つ北側ロフトの横長窓。開ければ夏場も熱がこもらず、南側リビングまで風が流れ落ちる

K邸のメインの開口は、南面に3つ並んだ掃き出し窓。ふたつはリビング、残りのひとつが主寝室用です。
既製品ながら幅は1.9mと広めで高さも2m超、採光・視界ともに申し分なく、いずれ整備される庭との一体感も期待できそうです。

一方、建物西側の子ども室やゲストルームの窓は、お隣の家がすでに間近にあるため採光と風通し用に割り切り、シンプルな腰高窓としました。

東面もいずれ隣家が建つのが前提で、小さめの窓がつけられています。
しかし玄関近くに配置された趣味スペースの土間だけは例外で、外から出入りできるくもりガラスの掃き出し窓を作りました。
さらに土間とリビングの間の室内壁にもガラス張りの建具と腰高窓が。これはKさんの希望で「隣にどんな家が建ってくるかわかりませんが、朝日をもらえるならと岡江さんにお願いしました」
くもりガラス+緩衝帯ともなる土間で視線を遮りながら採光し、室内窓では圧迫感を軽減。さらにはお気に入りのものたちをリビングから眺める楽しみまで考慮した工夫です。

そして北の壁には、高窓がつけられました。キッチン裏につくられたウォークインクローゼット上部はロフトになっていて、そこに切られた横長窓が高い位置から光を落とすのです。

岡江さんいわく「2階の小屋裏になんであんなに大きな窓がいるの? と言われるのですが、北側からの安定した光が入ってきて夕方まで明るいし、白い天井に反射して家全体を照らせます」
同じく北側にある子ども室と廊下の窓は通風を担当し、開ければ南の掃き出し窓に向かって家じゅうを風が流れるとのこと。

東西南北4面の窓はすべてアルゴンガス入りのLow-Eガラス。それぞれ明確な役割を持ち、快適な暮らしに貢献しているようです。


−10℃の日もエアコン1台、設定温度は20℃

右手廊下奥に見えるのがエアコンのガラリ。この位置から床下に向けて温風が出て、家じゅうに届く。とくに浴室やトイレに近いため「お風呂は本当に暖かくて快適です」とKさん。岡江さんも「水まわりに近いところに熱源を持ってくると、一石二鳥」とうなずいた
掃き出し窓から射し込む日差しがリビング床面を暖め、ダイレクトゲインが実現されている。温風による床下暖房は通常の温水や電気の床暖房ほどの熱は感じられないが、息子さんは年中裸足で駆け回る
深い軒と広めのデッキを特徴とするファサード。木製のデッキではバーベキューのほか「子どもとふたりでお昼のときは、ここにござを敷いてお弁当を食べたりします」。南向きの片流れ屋根には最大5kw/hの大きな太陽光発電パネルが載っている

K邸はCASBEE*1のSクラス評価を受けた低炭素認定の住宅。長野県のエコ住宅基準『ふるさと信州・環の住まい*2 低炭素認定型』にも適合し、80万円の助成金を受けています。室内の温熱環境や省エネルギーは、どうなっているのでしょうか。

オール電化のK邸では暖冷房はエアコンのみで、メインとなるのは床下暖房です。寒冷地用高効率エアコンの温風を床下に入れ、家全体の床を暖めています。

「24時間暖房で、11月から寝るときも外出するときも入れっぱなしです。設定温度は20℃くらい。25℃にしてもあまり変わらない気がするんですよ」去年は23℃くらいでしたが、とKさん。
真冬は外気温−10℃以下になる土地で設定温度20℃はさすがに寒いときもあるのでは? と心配になりますが、住まい手の体感は「じっと座っているとちょっと冷えるかな、くらいですね。子どもはランニングとTシャツ、裸足で遊んでいます」

基礎断熱+外張り断熱+充塡断熱にLow-Eガラス窓を組み合わせ、高いレベルの断熱性能を確保した成果が現れているのでしょう。
南窓によるダイレクトゲインの効果も、そこにはプラスされています。

夏場は、比較的過ごしやすい土地柄に加え、1.2mほど出ている軒が日差しの入り込みを防ぎ、さらに窓や壁が外の熱気をシャットアウトするため「エアコンをつけずに閉め切っていて涼しい。かえって開けない方がいいです。涼しさは抜群!」とKさん。
エアコンをつけるのは1シーズンに10回あるかないか、だそうです。

さらに省エネ面では、最大5kW/hの太陽光発電パネルを備えており、電気料金は「年間でプラス」。売電価格切替前の施工とはいえ、オール電化の住まいとしてはまさに〈ゼロエネルギ−ハウス〉といえます。


豊かなイメージが生み出すデザインの数々

天井に張られた柔らかい吸音材と、調湿や消臭効果のあるホタテ貝由来の塗料でソリッドに仕上げた壁とのコントラスト
諏訪市にあるレンズメーカーが業務用に作る光源を使って開発したLED照明は、モダンで美しいその姿が目を引く。「21個あるんですが、全部つけても42Wしか電気を使いません。これは国産のチップでないと出せない性能なんです」

デザイン的な魅力もまた、K邸のあちこちで見られます。
勾配天井には存在感ある梁が並び、ナラ無垢材の床と呼応しながら、白い室内にリズムを与えています。

ストライプ柄の天井は、公共施設などによく使われる吸音材で仕上げられました。ご近所への気遣いのほか「壁を固めの自然塗料で塗ったので、触らない部分は柔らかい素材に。きれいですよね」岡江さんがにっこりしました。

リビングからキッチン後方まで、壁に連なる丸い明かりも目を引きます。これは長野県内のレンズメーカーが開発した業務用照明器具を、住宅向けにアレンジしたLED照明。
天井につけるとメンテナンスが大変になることを考えて設置は壁面にし、室内の白さで光を反射・拡散する仕掛けです。
店舗建築のような雰囲気を取り込んで住まいに個性を与える。さりげなく、しかし常に新しいデザインを追求しようとする設計者の思いがにじんでいるようでした。

この家を一言で表すなら? の問いに、Kさんは「シンプルな白い家、ですね。庭づくりもまだまだこれからだし」と答えます。
飾らないその言葉と笑顔に、平屋であることを忘れるほど不思議に広いこの住空間は、たくさんの建物に囲まれようとも、そのおおらかさも楽しさはいつまでも変わらないに違いない、と思いました。



岡江組・岡江建築設計研究所+CIRCLE


取材日:2015年2月12日
取材・文:二階 幸恵
撮影:中谷 正人

*1 CASBEE(キャスビー):建築環境総合性能評価システム。建物の品質を環境性能で客観的に評価する。SからCまで5段階で格付けされ、住宅の資産価値や各種補助金交付の目安にもなっている


*2 ふるさと信州・環(わ)の住まい:長野県が独自に設定する住宅助成制度。次世代省エネルギ−基準以上の省エネ性能や一定以上の割合での県産材使用、バリアフリー化、県内工務店による工事であるなど複数の性能用件を満たす木造住宅を募集し、住宅建設費用の一部を助成する


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