工務店・ガラス店のみなさま/スペシャルインタビュー

「ガラスの現場」を担う責任(後編)

平野尚司(ひらの・しょうじ)
1959年生まれ。大学卒業後、東京のガラス店にて修行し、1986年平野硝子入社。2004年代表取締役社長就任。 バブル崩壊とリーマン・ショックという2度にわたる経済界の激震に遭い、その経験から、大正時代より続く老舗ガラス卸商という業務形態に、直販さらにエンドユーザー対象業務をプラス。現代の社会情勢を見据えた新たな会社のあり方・事業展開に向け、日々思いを巡らし続ける。 プライベートでは地元・浜松で活躍するシャンソン歌手・ボンジュール平野として知られ、20年近くライブハウスやカフェスペースで歌い続ける。年に一度は大きなコンサートも開催するが、本人はあくまで「芸術じゃなくて芸事。手習いみたいなものですよ(笑)」


<昔ながらのガラス屋さん>が消えていく

工場内には今も大きな作業台があった。「昔はメーカーさんから来た大判のガラスを問屋が切断してガラス屋さんに配達、現場納品していたんです」

――個人や小規模のガラス販売店・問屋さんが、最近は減ってきています。

大きな原因のひとつは、窓ガラスの複層化でしょうね。
メーカーさんから原寸実寸で商品が届けば、ガラスを切ったりはったりする技術はいらなくなり、必要なのは倉庫機能と配送機能だけ。

効率化という面はもちろんあるでしょう。でもそれでは、従来のガラス屋さんとしての商売は成り立たなくなっていきますよ。
完成品センターといったものは必要になりますが、個人のガラス屋さんは要らない世の中になりつつあるし、どんどん加速していくでしょうね。

昔、<カッティングセンター構想>というのがありましてね。
メーカーさんが各地にカッティングセンターを作って原寸で売るからガラス屋さんは板取りも切り回しもしなくていい、そういう設備もいらないからコストダウンできますよ、という時期がありました。
そのときはお客さまの利便性向上に、ということだったのでしょう。

で、それまでガラス職人さんが板取りして切っていたのをやめて、原寸で買うようになった。
それが10年20年続いた結果、そういうことができる人がいなくなっちゃったんです。

――お客さまに納める最終的な商品を自分の手でつくる技術が失われた、と。

バブルの後は、メーカーさんもカッティングセンターの維持が難しくなりました。
すると今度はセンターの集約化となり、原寸で届かなくなるし、センターから遠い地域では2週間も待たないとガラスが届かないような状況になった。
でもそのときはもう、ガラスを切れる人がいないんですよ。それで廃業したガラス屋さんもいっぱいあります。

昔ながらの形のガラス屋さんは、結局、要らなくなってくるんですね。


ガラスの現場を担う責任、次世代を育てる義務

自社でデザインした美しいテーブルに、ガラスのプロとしての高い意識が表出する

――これからのガラス屋さんは、どうなっていくのでしょうか。

新築の世界とか、ハウスメーカーの仕事では必要とされなくなるけれど、それでもガラスは割れるし台風で網戸は飛ぶし、いろいろなことがあるでしょう? 
最終的に、現場には誰かが必要なんですよ。

その部分を担う責任、というのかな。
ガラスで生きてきたんだから、やらにゃいかんし、できにゃいかん。そこに商売があるのかなあ、と思います。
メーカーさんができないことをやるということだよね。だからリフォームだろうと。

――エンドユーザーに向けて、カタログには表れない情報の提供や、現場を見た上でのプロの提案を行う、というスタンスですね。

そのあたりに活路、存在価値があるとは思うけど、ビジネスの形としてはどうかな(笑)
ただ、仕事であれなんであれ、社会に必要とされていないものは自然となくなっていくわけです。だったら必要とされることをやればいいんじゃないか。そんな感じですよね。

ほかに、ガラス業界全体を見渡すとしたら「みんなで後継者のことを考えた仕事をしましょうよ」というところでしょうか。

――どういう意味ですか。

バブルがはじけたときから、この世界はダンピング競争・安値受注が続いてきました。最終的には現時点で自分がなんとか生活できる、そこまで下げてしまう。
以前は親方が、使えない弟子に対してお金を使っていました。その部分をどんどん削って今の状況がある。でも、それはコスト的にはおかしな話なんです。

本来、親方には次世代を育てていく義務があります。そうなると、今売られている価格の倍をいただかなければならないんですよ。
自分のご飯が食べられればそれでいいわけじゃない、次世代に残す貯金も含めたコストを考えた価格設定をするべきと思っています。

「勇気を持って、倍で売りましょうよ」ということですね。

――それこそが<適正価格>。

これはガラスだけでなく建設業界すべてが抱えているコスト構造の問題です。ここを直せない限り、未来はない。みんなでやめちゃった方がいいんじゃないですか(笑)


リフォームは他業種との連携で。ベストなチームの要となる

業界への憂いは深い。その反面「仕事は自分の人生でありアイデンティティ。好き嫌いとか明日はやりたくないとか、そんな気持ちが浮かぶこと自体がおかしいと思います。棺桶に入るまでこうなんだろうなあ」そう簡単には降参しないよ、と言いたげに笑った

――厳しいお言葉が続きますが、地域では、少なくなったガラスのプロとして頼りにされています。

ガラスだけでなく、補修で一度うかがったお客さまから網戸張替の依頼が来たり、工事を見ていたお隣の家からカギの取替依頼が来たり。そういう広がりはありますね。

畳の張替、ペンキの塗替、トイレの水まわりと、うちの業務外の依頼もあります。そういうのも全部受けて、仲間に振るんですよ。
同じように畳屋さんの方からも「このお客さまの網戸の張替に行って」という話が来る。ペンキ屋さん、ガス屋さん、水道屋さんと、設備業のネットワークの中で仕事のやり取りはよくやっています。

最初はお互いに紹介し合っていたけど、依頼してくれるお客さまはやっぱり、平野硝子として職人さんを連れて行くと安心するんですよね。だから今は、うちが受けた仕事では下請けとして入ってもらっています。

補助部材を使うような窓工事は大工さんについてきてもらって、ちょこっとやってもらうときれいに納まる場合もいっぱいあるんですよ。
意識のある職人さんは、下に入ることなど気にせずどんどん仕事とってくれって言ってくれるし、最近は大工仕事や電気仕事も絡むちょっと大掛かりなリフォームも受けています。

――トータルなリフォームの窓口としての存在感を発揮しつつあるのですね。

総合リフォームという看板を上げるより、そのときそのときでベストなチームをつくればいいんじゃないかな。

これは今まで、工務店とか設計事務所がやっていたものです。
でもうちがお客さまをつかんでいる場合には、設計であってもうちの下に入ってね、と。それを受けてくれる柔軟な考え方ができる人と組んでいければいいと思うんですね。

――未来はない、と先ほどおっしゃいましたが、明るいお話を聞けて安心しました。

先がないのは、今までのガラス屋さんの在り方に固執して考えたときの話ですよ(笑)


取材日:2014年7月17日
聞き手:二階幸恵
撮影:中谷正人

有限会社勇工務店
平野硝子株式会社
静岡県浜松市
従業員数22名
事業内容/各種ガラス・サッシ工事/エコリフォーム/ガラス補修/エクステリア工事/窓・ドア工事/建築用ガラス販売/防犯対策相談 等

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