新井政広(あらい・まさひろ)
大学では化学を専攻、卒業後は大手材木商で木材輸入等を担当。83年(株)アライ入社。89年より高断熱・高気密住宅づくりに取り組み始める。2003年社長就任。Q値1.0前後という高い断熱性能を持つ"Q-1住宅"を数多く手がけ、高断熱住宅づくり全国トップクラスの実力派工務店として知られる。穏やかな物腰と、点検のため長身を折って床下や天井裏に自ら入る誠意あふれる仕事ぶりにファンは多い。新木造住宅技術研究協議会所属、2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会(HEAT20)委員。
HEAT20という、国の委員会に出ているのが大きいですね。最近では断熱改修の工法について一生懸命やっています。
IBEC(財団法人建築環境・省エネルギー機構)に行けばいろんな情報が拾えますし、懇意にしているメーカーの方から、新しい情報が掲載されたウェブサイトについて連絡がもらえることもあります。
ひと月に一度、地域の業者さんが集まる会議が商工会議所であり、そこで話をしています。最近では被災地を視察したときの写真を発表して、お互いにどう思うか話し合ったり。これも情報交換ですね。
設計事務所に呼ばれて、断熱住宅をつくるための図面の描き方を説明することもあります。柱の入れ方、この方向は必ず通してほしいという話から、描かれた図面を見て「これだと気密が取れないよ」といった話を。
断熱住宅をつくり始めた当初は、設計士さんを呼んではしょっちゅうやっていました。「断熱はこうやらないとダメ」という話から、2×4をやっていた人もいたので柱の入れ方まで。
構造図をうまく描けない設計士さんもいたんですが、私はいわゆる「平面図を見て図面を描き、住宅をつくるやり方」を現場で全部教えられ、鍛えられていたんですね。ちゃんと住宅をつくるにはここに梁を入れなさいとか、そういった基本が身についています。これは教えてもらえば誰でもできるんですよ(笑)
新木造住宅技術研究協議会(新住協)というNPOの会員です。
代表である室蘭工業大学の鎌田紀彦教授との共同研究で、実際にある高断熱住宅に温湿度やエネルギー消費を計測する機器を設置し、通年でデータを集めて分析・研究しています。断熱化すれば、誰がみても冬はいいですよね。じゃあ夏はどうなの? ここを知りたいというわけです。
こういう議論は常にありますが、使い方によるんですよ。だからこそ多くの情報や研究結果を広く知らしめていかないと、と思うんですね。
新住協で、LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)の住宅づくりに取り組んでいます。
以前つくった断熱住宅にオール電化で太陽光発電パネルを屋根に載せた家があり、この家の使用エネルギー量をCO2発生量に換算すると、マイナスになっている可能性があるとわかったんですよ。
今は、発電量その他の正確なデータを取って分析を始めようとしている段階です。
ちょうど、自分たちが建てさせてもらっている住宅にどれだけのエネルギーが必要で、逆にそのエネルギーをつくるとしたらどんなやり方が最適なのかを、考えて勉強する必要があると思っていました。会社のテーマとしても設定していて、そんなタイミングでの取組みになっています。
「変えないこと」だと思います。方針を変えない、それによってお客さまの目が少しずつ変わっていったということではないでしょうか。
だからこそ、責任を持ちたいと思いますよね。
建設時のエネルギーのことや日本の法律の規制を考えれば、まだすごい山を登らなければならないですよ(笑)
今取り組んでいるLCCM候補住宅のデータ分析・研究が進んで独自の指標が出てくれば、自分たちとしてはちょっとゴールが見えてきたかな、というのがありますね。
使っているエネルギーと自分でつくるエネルギーとが年間でペイしてしまう、そんな高断熱住宅がつくれればね。それでなんとか、というところかなあ。