建築家のみなさま/スペシャルインタビュー

「大きな窓」より「楽しめる窓」を

くりはら・まもる(光設計代表)
1949年生まれ。上智大学文学部卒業後、市役所に勤務しながら早稲田大学専門学校で建築を学ぶ。設計事務所勤務を経て1987年より現職。自然現象や四季の移り変わりを体感できる気持ちのいい住空間づくりを至上命題とし、無垢の木材や珪藻土などの自然素材を多用するサステイナブルな木造住宅の設計に一貫して取り組む。『高野HOUSE(1999年)』『喜多見エコハウス(2003年)で東京ガス「あたたかな住空間デザインコンペティション」優秀賞受賞。『江戸styleの家』で2008年度グッドデザイン賞受賞。2009年『入会地による雑木林の町角づくりプロジェクト』が国土交通省長期優良住宅先導的モデル事業に採択。建築家31人の会同人。


古びて美しくなる自然素材が家づくりの「正解」

東京都内の住宅地の一角にある事務所でお話をうかがった
入口にはコンクリートブロックの塀や室内の壁に塗る珪藻土のサンプルが展示されている
石や貝類を埋め込んだり、和紙を張り込んだり。小さな緑を植えられるニッチも楽しい塀を演出する

――「呼吸する住まい」と名付けた、自然素材や自然エネルギーを多く使う家づくりを長く実践しておられますね。

今から20年くらい前、漆喰が好きな建築主さんの住宅をつくる機会があり、漆喰と竹天井を提案しました。その後メンテナンスをしていくうちに、その「古び方」が、当時多かったビニールクロスなど新建材を使った家と全然違うことに気づいたのです。

年を経るに従って、だんだん美しくなっていくんですね。長い目で見たらこっちの方が作り方として正解なのかな、と。それから少しずつ自然の素材を研究し、使い始めました。

――いわゆるシックハウスが問題にされる前から、自然素材に取り組んでこられた。

壁の珪藻土から始まってフローリングの塗料、今は羊毛の断熱材など見えないところまで自然の素材を使った家づくりをしています。

始めた当時はコストが上がったり、職人さんに嫌がられたりしたんですよ。例えば左官屋さんに「珪藻土は塗ったことがないからわからない。もしひびが入ったらどうするんだ」と言われたり。
これは呼吸する機能があるとてもいい素材だから使いたいんです、と一生懸命説明して、あとで多少ひびが入ってもかまわないという旨で建築主さんにも一筆書いてもらって、塗ってもらいました。

その後しばらくたったら、その左官屋さんが自分の頼まれた仕事で珪藻土を塗っているんですよ(笑)押入の湿気をどうにかしてほしいとお客さんに相談されて、栗原さんに聞いた調湿作用のことを思い出して塗ってみた、よかったですよって。
いいものはそうやって広がっていく、そんな経験もしましたね。

――今は珪藻土も自然素材塗料もあたりまえのものとなりました。住宅は木造のみで建てられるのでしょうか。

地下室はRC造ですが、基本的には木造軸組構法です。
軸組は比較的自由に減築や増築などのつくり替えがきくんですよ。家族構成が変化しても全部壊して新築するのでなく、あるものを利用しながら長く使うことにつながる。資材も無駄にならず、環境に配慮した一番いいつくり方だと思っています。


風景を切り取り、室内を豊かにする窓

「建築主さんが『この家に住んでからは、連休でも外に出かけずに家で本を読んだりビールを飲んだり、そういう時間が長くなりました』といったことをおっしゃられるのが嬉しい。旅行に行く必要がなくなる、気分転換がここでできちゃう、それが家の一番の魅力だと思うんですよ」
障子にあけた小さな窓からは隣地の緑がのぞく。千鳥の装飾は自宅の古い障子にあったものを外して取りつけた。設計事務所ではなく、茶室かお寺にいるようだ。

京都・桂離宮の笑意軒。腰窓の下部に金箔やビロードが張られた豪華な室内から、庶民の生活を魅力ある景色として楽しんだ。現在も宮内庁が近隣農家に委託する形で田んぼを作り、当時の風景が保たれている(写真提供:栗原守)

――住宅を設計される際の、窓に対するお考えをお聞かせください。

めざしているのは、居ながらにして自然現象が身近に感じられ、自分の家が一番気持ちがいいから旅行に行かなくて済んでしまう、そういう家です。

そんな中、窓の役割のひとつとして「風景を切り取る」という面があると思っています。
例えば僕の事務所の窓は、障子にあいた四角い窓から隣の緑と瓦屋根だけが見えます。そこだけ写真に撮ると京都のお寺にいるみたい(笑)そんな雰囲気なんですよ。

――確かに東京都内の住宅地とは思えません。見て気持ちのいいものだけが目に入るということですね。

僕が一番好きな窓は、桂離宮・笑意軒の窓。桂離宮に点在するお茶室のひとつで、障子が入った腰高の窓になっています。部屋の中は金箔とかビロードとか、当時の日本では本当に貴重なものが使われている。天皇のためにつくった建物ですから。
そして窓の外に何が見えるかというと、田んぼの景色なんですよ。

豪華で気持ちのいい内部空間から田植えや稲刈りといった庶民の生活風景を見る。ここにひとつのツールとしての窓の役割があるのかな。
風光明媚ではないごくあたりまえの景色でも、切り取ることによって楽しみ、室内にいる人たちが豊かになれる。そんな気がずっとしています。

これを現代に置き換えれば、たとえ住宅密集地でもヒメシャラ一本ヤマボウシ一本植えて切り取ることで、季節感が楽しめますよね。そういう窓のあけ方もあるかなあ、と考えています。

大きな窓というより、外を楽しめる窓だったらそれでいい、と思うのね。

――シンボルツリーの立つ中庭に降る雪や雨の景色を、リビングの窓から家族みんなで楽しむ…そんな家を幾つもつくっておられます。

ダイニングやリビングから、すぐ近くにある身近な自然を見て楽しむ。そんな「装置としての窓」がひとつあると住宅も違ってくるのかなあ、と。
自然現象や四季の移り変わり、時間の経過を居ながらにして楽しめる、それが一番快適な住宅になると僕は信じているので、そのためにどうしたらいいかをいつも考え、いろいろな要素の中から選択しています。


窓のあけ方次第で都心の住宅地が軽井沢に?

浴室や玄関にも、できる限り窓をつける。「囲われた坪庭を浴室に作れば大きなガラスで外を楽しめるし、風が入るのでカビ対策にもなります。壁や天井を木にして露天風呂みたいにもできるんですよ」栗原さんの設計した家に住んでから長風呂になった、との声も多く聞く。どんなことでも<家にいることが快適な状況に作るもの>を基準に選択する、と笑った

和室の吊押入の下につけられた地窓。暑い時期、低い位置から北の少し冷たい空気を取り入れることで、室内の熱気を排出する(煙突効果)を促す。日本の住まいに伝えられてきた昔からの知恵を現代に活かしている

隣近所の窓が迫っても、こちらの開け方次第で視線のカットは可能になる。大きな窓をつけてレースのカーテンを引くよりも開放的な空間にできることも

――現代の都市環境下での家づくりで、窓の設計はどのように?

リビングを勾配天井にして、そこにトップライトを組み合わせることをよくしますね。
依頼されるロケーションのほとんどが住宅密集地で、南に面して窓をあけてもそこから光が入らないケースが多い、すぐ近くにお隣がありますから。
そんなときにトップライトは必需品で、できるだけ天井の高い空間をという建築主さんの希望にもこたえる勾配天井と組み合わせます。窓のメーカーは雨じまいの良さと意匠性で決めています。

それから「風を取り込む窓」をいつも意識して考えますね。新鮮な風を入れて家の中の風とおりをよくするための窓。
これはそんなに大きくする必要がないので、僕のつくる住宅は小窓が多いんですよ。高さを変えてたくさんつくったり、風の通り道を意識しながらつけることが多いです。
メーカーさんには、20センチくらいの小さい、しかも開けられる窓をつくってもらえたらいいなって思いますね。

北側にはできるだけ小窓をあけます。夏の少しひんやりした空気を取り込むために、低い位置に地窓をつけることも。

――すべり出し窓も、多く使われていますね。

すべり出し窓はずっと使っています。構造面で筋交いが入るようなところでも小さなスペースを使ってあけられるので、風の通り道を非常に作りやすくなるんです。
角度を止められるところもいいですね。開く方向も、風の流れる方向を考えて左右変えられますから、ウインドキャッチャーになって風を呼び込むのにとてもいい窓になります。

部屋の中から外側の拭き掃除ができるといったことも考えます。10年20年暮らす家ですから、後で業者さんを呼ばないときれいにならないものは作りたくないですね。

もうひとついいのは、開ける方向によって外部の視線をカットできること。
隣近所が迫っているところで向こうの家にも窓があるとき、相手の窓が右側にあったらこちらの窓を右勝手に開ければ、見えないんですよ。

――都市の住宅地で欠かせない要素であるプライバシーの確保が、カーテンを引かずにできると。

どの窓を開けてもお隣の視線が気にならない。中庭の緑や、小さめの窓や塀で切り取ったお隣の樹木だけが借景として見えている限り、都心の密集地でも軽井沢にいるみたいな感じになりますよ(笑)


自然エネルギーを活かし、愛着ある「壊せない家」をつくる

現代の住まいとしての性能は当然担保する。「ある程度の断熱気密性は上げて、夏は外の空気をシャットアウトします。エアコンでクーリングされた空気を大事に、家中に回すことを考えています」室内では引戸や欄間を多用し、家全体の風の流れを季節に応じて住まい手自身が調節できるよう配慮している

「古いものが好き。建築主さんの家でも古いものがあると新しい住まいに取り込んだりします」その言葉通り、事務所のあちこちには時代物のタンスやカゴ、照明、臼など「古くて美しいもの」がそれぞれの存在感を持って鎮座している


――「江戸styleの家」という独自のコンセプトでの家づくりも提唱されています。

工務店さん2社と「江戸時代の循環社会を参考にしながら家づくりをしましょう」というグループを作って勉強会をしています。江戸=EDOでもあって、Eはエコロジー、Dはデザイン、Oはオーガニック。
<自然素材を使い、風や太陽などの自然エネルギーを利用した循環システムのある、本物の木を使った小さな家>をコンセプトに、HPにも予算の目安となるモデルプランを載せています。

――環境面から見てある程度の規格を持った住宅のブランド、という感じでしょうか。

まだそこまでいっていない小さな集まりですが(笑)考え方を発信していくことが大事だと思っているんです。

江戸styleの家に限らず、自然エネルギーを利用する家づくりをもっと充実させたいんですね。太陽の光や熱、雨水、緑、地熱、そういったものをうまく利用しながら、原発でつくる電気をできるだけ使わない家をつくっていきたい。
そのために、そういうことに関心を持ったり、目を向ける建築主さんを増やしていきたいですね。

――自然エネルギーを使うことと、木造軸組で長持ちする家をつくること。ふたつのエコが融合する家づくりですね。

愛着ある「壊せない家」をつくるのが一番だと思うんですよ。愛着を持てる家とは、自分が過ごしてきた年輪を感じ、美しく「古美る」ことができる家。
そのためには、もとの素材が本物じゃないといけないんだよね。自然素材を使うことには、そういう目的もあるんです。

家に愛着がわけば、長く大事にして壊さない。心情的に壊せない状態になっていくんですね。次世代に伝わる時も、壊して新築せずになんとか利用しようとしてくれる。そうすれば粗大ゴミにならない、長持ちする住宅へとつながっていきます。

――家自体の持つ力が、住まい手に壊させない…

壊せなくしちゃう、精神的にゆるーく縛って(笑)じわーっとね。


取材日:2013年4月10日
聞き手・文:二階幸恵
撮影:中谷正人


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