建築家のみなさま/スペシャルインタビュー

外を読み取る最大の手がかり

そがべ・まさし(神奈川大学教授・みかんぐみ共同主宰)
1962年生まれ。東京工業大学大学院修士課程修了後、伊東豊雄建築設計事務所を経て1995年、加茂紀和子、竹内昌義、マニュエル・タルディッツらとみかんぐみを共同設立。住宅や公共・商業施設の建築設計・改修から家具、プロダクト、インスタレーションまで幅広くデザインを手がける。主な作品に「北京建外SOHO低層商業棟」(2004)「愛・地球博トヨタグループ館」(2005)「赤堤の家」(2007)長野県伊那東小学校改築(2009)「Maruya gardens」(2010)など多数。

なかたに・まさと (建築ジャーナリスト 千葉大学客員教授)
1948年生まれ。「新建築」編集長を経てフリーの建築ジャーナリスト


砂漠で出会った、外との関係を切り取る美しい窓

向かって左側:中谷正人氏 右側:曽我部昌史氏

中国・新疆ウイグル自治区を代表する都市トルファンに建つ蘇公塔。高さ44mを誇り、中国有数のイスラム建築として知られる。(写真提供/曽我部昌史)

――いろいろな展覧会のオープニングや講演会で会ったり、日本建築学会の委員会でご一緒したりしていて、いつの間にか友達のようになってしまったんで、知り合ったきっかけを覚えていないんですが…。

覚えてません(キッパリ)

――…そうですか…(笑)
曽我部さんの設計する建物からは、不思議な個性を感じるんですね。建物は形と開口部の取り方でまったく表情が変わってしまう。とくに開口部は重要だと思っています。
これまでいろいろと旅行などをされてきた中で、好きな窓、印象に残った窓はありますか。

学生の時、シルクロードのトルファンという街に行ったことがありました。そこに蘇公塔(そこうとう)という、素焼きのレンガでできたイスラムの寺院があります。
周囲が砂漠だから、遠くから見ると砂漠の砂がそのまま立ち上がり、塔をかたちづくって建っているように見えるんです。それがすごく面白いなって。

外壁の表面にはイスラム紋様のパターンが入っていますが、中に入ると照明もなくて真っ暗。そんな中にところどころスコーンと穴があいていて、そこから空だけが見える。
音も光も全部吸収するような"砂的"な表面でできているインテリアに四角い穴だけがあいていると、その「かたち」だけが見えてくるんです。

そういう存在感、外との関係を切り取るかたちだけがきれいに見えている…それがショックだったかなあと思います。
ヨーロッパにしてもアジアにしても、建物の中が暗いじゃないですか。中が暗いと、窓の形がすごくきれいに切り取られる感じがあって、そういうのはいいなあと思うんですね。


内からどう見えるかを考え、素っ気ない窓をつくりたい

――ご自身で窓をつくるときはどのような考え方をしていますか。

基本的にみかんぐみでは、窓で特別なことをやりたくはないんですね。難しいディテールのために大きなエネルギーをかけるより、素っ気なくやっていきたいと思っています。

日本の現代建築では、とくに窓は既製品がいろんな性能を引き受けていて、その枠を使ってつくらざるを得ないところがあります。でも、それがどこか引っかかっていて。
やっぱり単純な素材・要素の組み合わせ方、その構成が生み出す価値で建築全体ができあがっていてほしいなあ、といつも思っているんですよ。

サッシが見えたりするのは本当はあんまり好きじゃないんですけど、かといってそれを隠すために膨大な努力を払うのも、今度は意識しすぎている感じがして矛盾していると思うし。

だから大抵、開口部は普通に切りますが、多少気にするときには壁そのもので窓の開口のアウトラインをつくり、サッシ自体はひとまわり大きいものを壁の外側につけます。そうすると内側からはガラス面しか見えなくなり、障子の枠も全部隠れて、まん中の召し合わせだけが見えるようになります。

――窓の大きさや位置は、どうやって決めていますか?


大抵は、中からどう見えるかっていうことで決めています。
一番重要なのは、隣の土地に何が建っているかとか、周りの道がどっちを向いているかとか、敷地境界線がどこにあるのか。それによりますね。


たとえば隣に建物があり、もうひとつ別の建物もあって、そこに敷地境界線があったら、すき間ができますよね。そのすき間に対して窓がどういう位置にあるか、窓が隣のコンディションをうまいこと生かせるかどうか。そういうことが中心です。


その上で、だいたいこのへんに窓があったら視線が抜けるなあとか、あるいは道路がずっと向こうまで流れているなら、その方向に視線が向くように窓を開けておく。このへんに住まい手の居場所があって、建物の外皮がここにある、じゃあこのあたりに窓を開けておく…


そういうことを大枠で決めて、ディテールはそのあとですね。天井いっぱいまで開口があった方がスカッと空が抜ける、とかは。


――外観についてはどうでしょう。意図的にこう見せよう、といったことはない?


ある種の節度あるものであってほしいとは思っていて、そのためのコントロールはしますが、それ以上のことはしません。建物の上部を全部ガラスでバーッと通してとか、コーナー部分を何かする、といったことはしない。いつもそうですね。
そういうことをしなくても、空間の価値というかコントロールは、絶対できるだろうと思っています。



窓を手がかりに、外へと広がる意識

生産緑地の風景を切り取る、曽我部邸2階の窓。(写真提供/曽我部昌史)
白が基調の1階スペース。若手アーティストに依頼した植物の壁画は、日々描き足され"成長"しているという。(写真提供/曽我部昌史)

――窓に対する曽我部さんの考え方やつくり方の具現化のひとつが、2007年に設計された御自邸の窓ですね。

僕の家は1階と2階が螺旋状につながるプランで、仕切り壁も扉もほとんどないんですが、下半分のゾーンと上半分のゾーンで内装の色を変えました。ほとんど白とほとんど黒という感じに。

土地探しの段階から、僕には「北側にいい風景が広がっている場所がいい」という変なポリシーがあったんです。そうすると順光になってきれいな風景が見える。それが気持ちいいなあと思っていて、北に生産緑地のある土地を選びました。

窓からの眺めがきれいに見えるように、リビングや食堂のある2階のインテリアの壁を黒くしたんです。そうすると、外の風景が暗めの空間の中に切り取られるでしょう? 
照明もあまりないところでこそ外の風景が美しく見えた、蘇公塔での経験に関連しているかもしれないですね。
反対に寝室や書斎のある1階は、室内での過ごしやすさを考えてインテリアの色を白くしました。


――外との関係を大切にしたい場所の壁は、外がきれいに見えるように黒く、日常的な動きが中心になるときは白くしたということなんですね。北側以外の窓はどうなっていますか。


ここは三角形のとがった土地プラス旗竿というめちゃめちゃな形状の敷地で(笑)矢印みたいな土地なんですよ。
この旗竿に面して窓をつけました。自分の土地ですから、邪魔なものは建たないだろうと。


それから、周囲にある2軒の家の敷地境界に向かった部分も窓にしました。たとえ建替えられたとしても敷地境界上に建物は建ちませんから、ここを窓にしておけば将来にわたって安全だろうということなんですね。


そして緑の風景のある北側には、大きな窓をふたつ、バンバンと開けました。


やはり僕にとっては、外をどう読み取るかということの一番大きな手がかりというか、影響を受けているのが窓の位置なんです。


――曽我部さんの住宅は、自分のいる場所を意識させるような室内空間の構成ですね。家族のための空間を意識させるプライベートな場所がある一方で、そこから緩やかに連続するリビングなどでは窓から風景が強く主張してきて、室内にいながらも意識は窓を介して外へとつながっていく。

これは、住宅という限られたボリュームの空間であっても、住まい手の意識を外の世界まで広げていける空間構成だと思います。そのような空間をつくるときの手がかりが、曽我部さんにとっての窓なんですね。ありがとうございました。


構成・文:二階幸恵

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