事例紹介/リフォーム

エコガラスの向こうは
愛する庭の風景

東京都 N邸

Profile Data
立地東京都八王子市
住宅形態RC造2階建(セミデタッチトハウス)
リフォーム工期2017年5月
窓リフォームに
使用した主なガラス
真空ガラス

数度にわたる転居と窓リフォームの経験を生かす

東京都心から気軽に行けるハイキングコースとして知られる高尾山。そのふもとに、地形を生かす開発で豊かな緑を育んだ住宅団地が広がります。
この中に建つN邸は、別の一住戸と壁を共有する“セミデタッチトハウス(二戸建住宅)”で、南側に専用庭がある築36年の2階建です。

笑顔で迎えてくれたNさんは、ご主人そして愛猫クーちゃんとここに暮らしています。数度の転居歴とそれに伴う多様な居住経験を持つNさんは、住まいに向ける思いも明快。「そのときどきのライフスタイルに合った場所や家に住み、年に一度の海外旅行より毎日の暮らしを大切にしたいと思っています」 と話してくれました。

エコリフォームのきっかけは冬場の結露でした。
今は独立している3人のお子さんと、同じ住宅団地内の別住戸に暮らしていた15年ほど前「結露で窓の外が見えなくなってしまうのがいや」と、生協のチラシで見かけた断熱リフォームに興味を持ち、(株)クリアに電話。
「それ以来のおつき合いです」と、N邸の全エコリフォームを手がけてきた店長の林 則子さんがにっこりしました。

今回のエコリフォームは2017年5月の入居とほぼ同時に行われています。「エコガラスの性能はわかっているので、すぐに(笑)」とNさん。
採用したのはエコガラスの一種・真空ガラスです。管理規約により窓枠を変えられないことからガラスのみの交換とし、浴室を除く9つの開口部を対象にしました。

エコガラスによる断熱力アップは、窓を通じた冷たい外気の流入や暖房空気の流出に歯止めをかけます。
N邸内の室温感覚や暖房機器の使い方はどうでしょうか。早速うかがってみましょう。

エコガラスの向こうは 愛する庭の風景-詳細写真02

昭和50年代に日本住宅公団(現UR都市機構)によって開発された住宅団地は土地の自然な起伏を生かした緑濃い住宅地。この時期の公団住宅では中高層建物だけでなく、専用庭のある接地型住宅などヒューマンスケールを基本に置く設計も多く取り組まれた

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転居は東京と八ヶ岳の2地域を拠点に行われたという。寒冷地である八ヶ岳での居住経験も、迷いのない窓の断熱リフォームにつながっているのだろう

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取材にお付き合いいただいた黒猫のクーちゃん

エコガラス窓+最低限の暖房で寒さも結露もない住まい

N邸は1階にリビングダイニングや水まわり、2階に寝室とワークスペースが配置されています。

1階はご主人の小さな作業場、浴室、リビングダイニング、キッチンまで東側に全て窓があり、リビングには庭に面した南向きの掃き出し窓もあります。

リビングは食事やリラックスタイム、また来客を迎えるなど日々の生活を担うN邸のメインスペース。冷気が入り込みやすい大きな掃き出し窓もエコガラス採用で高い断熱力を備え、常に快適な室温が保たれています。

冬の朝は起床後まずこの部屋の石油ストーブに点火し、設定温度18度〜20度で稼働します。晴れた日は日差しが部屋の中まで届くので、朝食後にはストーブを消し、2階で仕事を始めます。
その後は夕方まで無暖房。陽が落ちる頃にガス床暖房を弱〜中モードで稼働し、就寝時までストーブは使わずに過ごすそうです。

2階ワークスペースはアロマセラピストのNさんと、オルガニストでありオルガンビルダーであるご主人の仕事場で、パソコンやデスク、キャビネットのあるホールと、3台の鍵盤楽器が置かれたスタジオとで構成されています。

メインの暖房は中央のホールに置かれたファンヒーター。各室のドアを開け放せば暖気が行き渡り、あとは必要に応じてそれぞれの部屋に置いてある小さな暖房器具を使用しています。
1階同様全ての部屋に東向きの窓があり、寝室は北側にも窓がありますが、結露もなく冷気を感じることもないといいます。

1,2階ともに穏やかな暖房機器利用だけで快適な室内環境が実現されているN邸。窓から流入する冷気を遮断しお部屋の暖かさをキープするエコガラスの効果がうかがえます。

加えてクリアの林さんは「夕方以降はカーテンやシャッターなどで早めに遮蔽すると、窓からの冷気の入り込みをさらに防げますよ」とアドバイスを贈りました。
断熱力にかけては単板ガラスやペアガラスを寄せつけないエコガラスですが、決して万能ではありません。その性能は、遮蔽設備を上手に使うことで十二分に発揮され得るのです。

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2階中央に配置されたワークスペース。この両脇にスタジオと寝室があり、上部は屋根裏収納となっている。東向きの腰窓を真空ガラスに交換

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スタジオは船底天井。チャーチオルガン・デジタルピアノ・ハモンドオルガンが置かれる。2箇所ある窓の外はどちらも道路が走り、楽器の音が近隣住宅に直接届かずにすんでいる。窓を通してこのエリアのシンボルツリーであるケヤキも目に入る、良い環境

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寝室は高さ1.3mほどの腰窓が北と東向きにつく。明るいが、通常のガラスでは外部からの冷気入り込みが心配だ。真空ガラスに交換済

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テラコッタ様のタイル張り玄関は、角度を振ってつけた扉の対面にガラスブロックを入れて採光している。開口はないが真北のため寒さがあり、小さな石油ファンヒーターを回すことも

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1階最奥部のリビングでお話をうかがう。約14畳の広さがあり、庭側に4枚引きの掃き出し窓がある。窓リフォームを手がけた(株)クリアの林 則子店長も甲府市から駆けつけてくださった

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リビングとキャビネットで仕切ったキッチンの勝手口扉は乳白のエコガラス。目隠しですかと問うと「それもありますが、一時的に外に置くゴミ袋などが見えない方がいいかなと思って」と答えが返った

高い性能は心と暮らしを潤す豊かさのために

もうひとつ、Nさんにとってこの家の窓は“大好きな庭を見るため”の額縁でもありました。
「リビングから眺める四季折々に移ろうお庭の景色は、我が家の財産なんです」

決して広くはなく、どちらかといえば箱庭のようにかわいらしいこの専用庭は、窓を通して眺めると実際よりもはるかに奥行きを感じさせる風景を作り出していることに気づきます。
外側には小径の樹木を並べて目隠しのような状態をつくり、その内側に四季折々の草木や鉢植えの花、野鳥のやってくる水場などを設置。緩やかにつけられた地面の勾配が全体の立体感を高めています。
住宅団地の一角であることを忘れさせる緑の小宇宙が、そこにはありました。

リビングの窓ごしにこの景色を楽しむには、いくつかの条件があります。
結露しないこと。寒さや暑さ、不快な日射などでカーテンやシャッターを閉めずにいられること。そしていつも室内が快適であること。
真空ガラスの掃き出し窓には、厳冬期でも結露は見られないといいます。夏場の日射は2階ベランダの床を兼ねた深い庇でカットされ、嫌な西日もここでは「きれいな斜光として庭に差し込んできます」とNさん。
真夏の午後に外気温がぐんぐん上がっても、窓を開けなければ「室内は快適な温度が保たれています」

こうして一幅の絵画のような風景は、エコガラス窓の存在をベースに一年じゅう暖かくあるいは涼しい快適なリビングに取り込まれ、住まい手の心と暮らしを潤しているのです。

「窓を通して朝日を浴びたり、空の色を見たり、たとえマンションのベランダであっても緑やエクステリアを楽しむ… そのどれもが“その人をつくっていく”もの。窓はだから大事なんです。必然的にガラスにもこだわることになりますよね」

隣で聞いていた林さんが「窓から暮らしを広げる…そういうことなのでしょうね」と、うれしそうにうなずきました。

住宅の開口部には、室内に明るさをもたらしたり換気を行う等の大切な役割があります。
同時に“透明である”という、他の建材にないその特質は住まう人の視線や気持ち、ときには空間そのものを内側から外へと拡張させ、美しいあるいはなにげない風景に対する感動や広やかな場に身を置く心地よさを与えてくれることも。

データや数字で可視化された性能は数値にならない豊かさのために。エコガラスの仕事がまた、広がっていきます。

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緑のピクチャーウインドーに彩られるリビング。インテリアコーディネートの心得もあるNさんが統一感を持ってしつらえた室内デザインとあいまって、魅力ある空間が形成されている。夏場以外は窓の網戸を取り外して良好な視界を保つ

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庭を外部から見る。室内から見たときとのスケール感の違いがわかる

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リビング東側の窓もエコガラスに交換した。外部に見える枠は自動シャッター用。足元には石油ストーブが置かれている

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リビングでご主人と好きなお酒を楽しむのが共通の趣味、とNさん。「だからリビングは大事にしたいですね」少し早めに始めるときはもちろん庭を眺めながら

取材協力(株)クリア
URLhttps://clear-g.co.jp/
取材日2019年12月2日
取材・文二階さちえ
撮影中谷正人
エコガラス