事例紹介/リフォーム

終の住処は大開口
窓と庭が織りなす劇的エコリフォーム

岐阜県 Y邸

Profile Data
立地岐阜県岐阜市
住宅形態鉄骨造2階建
(2002年竣工)
窓リフォームに
使用した主なガラス
エコガラス

隣家が解体。変化した周辺環境がリフォームのきっかけ

Y邸のロケーションは清流・長良川にほど近い静かな住宅地の一角です。竣工から17年、外構を含む大きなリフォームを行いました。

「隣にあった古いアパートが解体されたので、土地を買い取って庭をつくることにしました。それが始まりです」と、住まい手のYさんは振り返ります。
医師として東京で多忙な生活を送るかたわら、折にふれてお父様が住まわれていたこの家を訪れる暮らしを長く続けていましたが、お父様の逝去にともない、新たにご夫婦ふたりの生活を念頭においたリフォームを決断したといいます。

2階建アパートは敷地ぎりぎりに建っていてY邸東面との間隔がほとんどなく、午前中の日差しもほぼ入らず閉塞感が大きかったそうです。土地の買い取りがかない、竹林をコンセプトとする庭づくりと住まいのリフォームが動きはじめたのは、2018年の夏でした。

庭以外には「最初はキッチンだけリフォームするつもりだったんです」と語るのは、名古屋で仕事をしながら義父の暮らしをケアするためこの家に同居していた奥様です。
使い勝手が悪かったカウンターテーブルを改善する程度を予定したものの、小学校からの友人である設計室ないとうの内藤惠子さんに改修設計を依頼し計画が動き始めると「せっかく庭をつくるなら窓もリフォームしては」との提案を受けました。

庭に面して現在は掃き出し窓になっているリビング東面は、かつて腰高の出窓がついており、隣家の壁が目に入らないよう常にカーテンを引いていました。
Yさんは「窓を変えられるんですか? できるなら広くしてください、とは言いました。でも、ここまでぶち抜けるとは思っていなかった」

この選択が、リビングの空間を劇的に変えていきます。

終の住処は大開口 窓と庭が織りなす劇的エコリフォーム-詳細写真02

竹をモチーフに新しく設えた庭からリビングの窓を見る。ここには以前、古い2階建アパートが建っており、その外壁は左手に見えるウッドデッキの端部あたりにまで達していたという

終の住処は大開口 窓と庭が織りなす劇的エコリフォーム-詳細写真03

22畳のリビングでお話をうかがった

庭の風景を生かす大開口で“ずっと居たいリビング”に変身

内藤さんが提案したのは、高さ約2.5m横幅4mの掃き出し窓への変更でした。工事後は壁面ほとんどが開口となり、庭の風景をリビングに大きく取り込んでいます。

もとからあった南面の掃き出し窓も、サッシごと交換しました。
「この窓は以前はガラスが4枚入っていて、縦の窓枠がとても狭く感じていました。変わるものですね」とYさんが眼を細める新しい窓は、幅約1.3m×2枚のガラスで構成されています。枠が減って広々とした視界が確保され、お父様が丹精してきた以前からある庭がよく見えるようになりました。

これだけ大きな開口が可能になったリフォームを、内藤さんは「鉄骨造の家だからできた」と振り返ります。
「庭への思いがおありだったので、庭が生きるような窓をと考えました。南の窓の幅は以前と変わりませんが、2枚引きにしたことで外の見え方も違ってきましたね」

奥様も「部屋からの庭の眺めが本当に生きるようになりました。昼もいいけれど、東屋に灯りがついている夜の景色もいいんですよ。義父の庭には、手水鉢に野鳥が水を飲みに来ます」と話します。

 Y邸のリビングは7枚の高窓に加えて天窓も2箇所切られており、もともと開口が多い空間です。隣に建っていたアパートを考慮し、高い位置で多くの光を採ろうという新築時の工夫でした。
これらの窓はそのままに、比較的閉じていた低い位置での開口を充実させたことで居住性が大きく向上しました。その結果は
「ここに来たときは外食ばかりだったけれど、これからは家で食べようと思っています。気持ちがいいから(笑)」というYさんの言葉にも現れているようです。

「できるだけ、家に居たい感じなんですよね」と、奥様がにっこりしました。

終の住処は大開口 窓と庭が織りなす劇的エコリフォーム-詳細写真04

リフォームされた2箇所の窓は、東と南の壁いっぱいを占める大開口。上部の間接照明も同時に換えられている

終の住処は大開口 窓と庭が織りなす劇的エコリフォーム-詳細写真05

設計を担当した設計室ないとうの内藤惠子さん・内藤太一さんにもご同席いただいた。内藤さんの背後にある窓が、その先にある和の庭を引き立てる額縁となっている

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吹抜け上部には高窓が並び、シーリングファンを隔てた位置には天窓も見える。高窓には電動ブラインドがつき、冬場は開けて日射熱を取り込む。「昼間は暖かいですよ」

ベンツのよう? 頼れるエコガラス窓が結露も暑さもシャットアウト

窓にはエコガラスが採用されました。

厳寒期の最低気温は零下を記録する土地柄に加え、結露しやすい鉄骨造の建物では冬場の窓は毎日の結露拭きが欠かせなかったといいます。加えて、日没後が寒くなるという住まい手の体感もあり、高い断熱性能をもつエコガラスを内藤さんは提案したのです。

リビングのほか、玄関や水回りも含めた工事が完了したのは2019年7月。新しい空調機器や家具も入り、生活空間として整ったのは夏の盛りでした。室内環境はどう変わったでしょうか。

「夏の暑さは問題ありませんでした。前はエアコンの効きがよくなかったけれど、新しくして効率がよくなった。シーリングファンの効果もあるし、快適ですよ」
エアコンは24時間稼働で28~29℃設定を基本に、人が多くいるときは26℃に下げて過ごしたそうです。

東面には内藤さんの提案でオーニングもつけられました。上ってくる朝日のまぶしさを遮るためと「これがあると開けっ放しにできますから」。
日射を防ぎつつちょっとした雨にも対応でき、リビングから続く幅1.2mのウッドデッキの空間をより豊かに使えるようになっています。

「新しい窓はガラス1枚1枚の幅が広いし、頑丈で重厚感がある。閉めるときの感じが昔のベンツみたい(笑)がっしりしていて、とても気に入っています。冬も楽しみですね」とYさん。

ベンツのごとく? 頼り甲斐のあるエコガラス窓は以前より重量が増し、気密を取るため開け閉めの最初も重くなります。奥様に使い勝手をうかがうと「前より確かに力がいるけれど、支障はないですね。というより、これが開けられなくなったら終わりでしょ」これには全員吹き出しました。

当分は心配いらないようです。

終の住処は大開口 窓と庭が織りなす劇的エコリフォーム-詳細写真07

東面の開口は腰高の出窓から掃き出し窓へと大きく変貌した。エコガラスの窓が室内の竹フローリング床と外部ウッドデッキをつなげ、自然な連続性を生んでいる

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階段上部から見下ろす。窓とウッドデッキによって、リビングが外部に拡張しているのがわかる

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「今回のリフォームはどこにも失敗がありません」と語るYさん。自らの好みやこだわりを設計者に対して率直に伝え続けたことが成功につながった。「とくに庭がある家なら、窓を変えるのはお勧めですよ!」とも

窓で広がる室内空間。「帰りたくなる終の住処になりました」

持ち家にこだわりがなく、また仕事での移動が多いこともあって賃貸住宅での生活が長かったというYさん。現在も生活基盤は東京のマンションに置いているものの「あと4~5年でここに移住するつもりです」と話します。
「窓のおかげで非常に部屋の広がりを感じる。前より全然広いですよ、窓って大事だね。ゆったりと過ごせる、帰りたい家になりました」

一方、義父の暮らしを支えながらYさんよりも長い時間をここで過ごしてきた奥様は「住まいの概念がすっかり変わりました。リフォーム前は『そんなに変えなくていいんじゃない?』と思っていたのですが、今は全部が気に入っています」

地下水の豊富なこのエリアで多くの家が持つという井戸を掘りなおしたのは、奥様の提案です。庭の隅に立つかわいらしい手押しポンプを見やって「災害時にも水が供給できるといいですよね」

ご夫妻の言葉に内藤さんは「おふたりには提案を受け入れていただき、最後にこうして話を聞けて、やっとホッとしました。気持ちを表現してくださってうれしいです。やりがいがありますね」
住まい手それぞれの暮らしを複合的に考えて仕事に取り組む設計者の偽りない思いでしょう。

今回のリフォームでは窓・カーテン・壁紙・照明・家具に至るまで、窓以外にも設計側から多くの提案がなされましたが、Yさんは「僕がどういうものを欲しているかを内藤さんはよく考えてくださって、わかり合うことができました。設計者とクライアントの息が合わないとやはりダメだと思いますよ」と振り返ります。
隣で奥様も「この人のテイストを内藤さんにわかっていただいたということです」とうなずきました。

キッチンや浴室などの部分改修と違い、Y邸のように空間の質にも大きな変更を伴うリフォームは、まさに住まい手と設計者の共同作業そのものなのかもしれません。

キッチンの脇、新たに設えたダイニングはクリスタルガラスのペンダントライトの光が落ちる美しいスペース。軽くて座り心地のいい椅子は奥様のお気に入りです。
ここから始まった小さなリフォーム計画は、良き伴走者=設計者との出会いによって豊かに広がっていきました。

「過ごし方がまったく変わりました。夫婦ふたりの時間がゆっくりと過ぎていくんです」歳月を経て、住まい手の暮らしとともにその姿を変えながら“終の住処”になろうとしている家を、たくさんのガラスと光が今日も暖かく包み込んでいます。

終の住処は大開口 窓と庭が織りなす劇的エコリフォーム-詳細写真10

夫と同じ医師として働きながら義父とともに家を守ってきた奥様。「小さい窓しか知らなかったので、こんなに明るくなると思いませんでした」この住まいをもっともよく知る者としての実感だろう

終の住処は大開口 窓と庭が織りなす劇的エコリフォーム-詳細写真11

ウッドデッキと人工芝の庭は、夕食後夫婦でゆったり過ごす時間、また訪れるお孫さん達とのバーベキューにと大活躍。緑色の手押しポンプはアクセントになるとともにこの土地の文脈をも物語る

終の住処は大開口 窓と庭が織りなす劇的エコリフォーム-詳細写真12

リフォームに合わせてダイニングセットも新調した。「家具店で座ってしまったのが運のつき」と奥様が笑うカーボン素材の椅子の座り心地は肌に吸い付くよう。軽さも一級品

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乱反射しながら美しい光を放つガラスのペンダントライトがダイニングスペースを彩る

取材協力設計室ないとう
URLhttp://naito-archi.com/
取材日2019年9月21日
取材・文二階さちえ
撮影中谷正人
エコガラス