事例紹介/リフォーム ビル

築33年のビルが
3ヶ月で省エネオフィスに(前編)

-愛知県 東海共同印刷-

Profile Data
立地 愛知県名古屋市
建物形態 RC造5階建+増築棟(1983年竣工)
利用形態 事業所
リフォーム工期 2012年10月~12月
窓リフォームに使用したガラス エコガラス(遮熱真空ガラス)
利用した補助金等 平成24年度 住宅・建築物のネット・ゼロ・エネルギー化推進事業費補助金
施工 豊建

迫る大規模補修、原発事故の記憶…省・創エネ指向にシフト

東海共同印刷社屋のファサード。ベージュのタイル張りが本館、左手に白くせり出しているのが増築棟。1階は一部が中二階になっており、他階よりも天井高が高い。増築棟の屋上に太陽光発電パネルが見える
南北にそれぞれ開口部がある本館の執務スペース。正面の窓は北向き。コピー機の裏側に増築棟が続いている
東海共同印刷代表取締役の古田光由さん。改修当時は専務として事業を直接担当し、トップを支えた
豊建の代表取締役社長・松本 寛さんと、住環境事業部主任の内野 浩さん。施工のほか、当初の現地調査から分析・診断・計画提案・補助金申請サポート・工事後のアフターフォローまで、総合的なコンサルテーションを務めている。豊建では本業の基礎工事と仕上げ工事に加え、省エネ事業に取り組むために、住環境事業部立ち上げと同時に電気やガラス、防水など新たに5種の建設業種の工事資格を獲得した

名古屋市中心部、熱田神宮にほど近い一角に、竣工後30年を経てエコ改修に取り組んだビルがあります。
1983年竣工のRC造5階建の東海共同印刷社屋が建つのは、片側2車線の道路2本にはさまれた三角地帯。営業・制作・デザイン・画像処理まで、印刷と発送業務を除く会社機能を網羅しています。

改修話が持ち上がったのは4年前。とくに大きな修繕もせずにきた建物は、外壁のひび割れも目立ち始めて大規模補修が避けられなくなり、当時のトップだった林 則明さんが省エネルギーの要素も含めた改修を決断しました。
その根底には、前年に起こった福島第一原発事故の経験による再生エネルギーへの指向が。「口だけよりも、やれることをやろう」という社会貢献的な意識もあったそうです。

さらに社屋は「夏暑く冬寒かった」と、現在の代表取締役である古田光由さんは振り返ります。
蒸し暑い名古屋の夏は、南と西の窓から強い日射熱が入るほか建物そのものが蓄熱して室内に輻射熱を放出し、窓のない階段室なども熱気がこもってつらかったとのこと。
冬は冬で若狭湾から琵琶湖、伊吹山を経て吹き込んでくる“伊吹おろし”で窓は結露し、床を流れるすきま風に足下を冷やされながら「カーペットを敷いたり、すきまに段ボールを詰めたりしていました」

社員の間では「ちょっと暑くない? 寒くない?」といったやりとりが多く、エアコンの設定温度は常に高めあるいは低め、外から帰れば大きな気温差が感じられたそうです。暖冷房機器を使わない“中間期”もほとんどありませんでした。
そんな状況に古田さんは「やはり社員の体感を快適にし、暖冷房の効率を上げたい、と考えましたね」

林さんとともに改修事業を担当することになった古田さんがまず相談したのは銀行です。すると市内の専門工事会社・豊建を紹介されました。
豊建は東海地区を基盤に倉庫や工場など新築建物の基礎や仕上げ工事を手がける会社です。
おりしも「設備機器だけでなく建築の目線を持って建物全体の省エネ改修に取り組もう」と考えた社長・松本 寛さんの肝いりで、2011年に新たな部署を立ち上げたばかりでした。

「照明や空調の交換だけでなく、ビルそのものをどうすればいいか考えたい」林さんと松本さん、同じ視点を持ったふたりのトップはすぐに意気投合。同年に始まった経済産業省のZEB化事業向け補助金の交付も視野に入れ、知恵と思いを結集した手作りのエコ改修がスタートしたのです。


「エコ改修はCSRだ」施主と施工の情熱が一致

1階中央部分に配置された情報処理関連事業部。以前は大きな印刷機を置いていたため天井が高い。改修前の室内の雰囲気をよく残している
営業部の執務スペースを北の窓際から見る。奥には総合受付や総務部のスペースがありパーティションで区切られているため、南側の窓からの採光はない。蛍光灯はすべてLEDに交換したほか、パソコンモニターもこの機にブラウン管から液晶へと一新された
3階にある畳敷きの休憩室は、幅約5.5mの欄間つき窓が南壁面いっぱいに切られ、明るい。プライバシーに配慮して以前から型ガラスが入っており、改修時も曇りタイプのエコガラスが選ばれた
4階南側の会議室でも曇りタイプのエコガラスを採用。周囲に同程度の高さのビルが多くて内部を見られやすいので、と古田さん

残暑の中、施工とコンサルを引き受ける立場として現状調査を行った豊建・住環境事業部の内野 浩さんは「建物として限界でした」と当時を振り返ります。
照明は傷んで暗く、古い空調は掃除してもなかなか室内を冷やしてくれません。コンクリートにボードを張った外壁には断熱材が入っておらず、外の熱気がそのまま内部に伝わっていました。

一方、施主の林さんはCSR的観点から「費用対効果よりも、せっかくやるならよいものを。10年後にモトが取れればいい」との考えを持っていました。この意向と建物の現状とを考え合わせて内野さんは検討し、以下の改修計画が作成・提案されます。

・LED照明と高効率空調設備に交換
・外壁と屋上の防水および遮熱塗料塗布による高断熱遮熱処理
・窓ガラスを遮熱真空ガラス(エコガラス)に交換
・BEMS用モニター設置

さらに施主の希望として“太陽光発電パネルの設置”を加えた5つのメニューは「このビルに対してやれることは、やりきりました」と内野さんが胸を張る充実した内容でした。

この計画はZEB化補助事業補助金の申請を前提としており、ビル全体のエネルギー使用量や改修後の削減量まで計算して作られています。
それまでの省エネ改修で主流だった設備機器の交換だけでなく、変えるところも変えないところもひっくるめた分析・シミュレーションが必要なため、多いときには週3回も内野さんは現場に通いつめました。
「会社間の距離が近くてよかったですよ」と内野さんは笑いますが、改修の決定から補助金申請期限までは約1ヶ月しかなく、当時は冗談にもならなかったでしょう。

ちなみに窓のエコガラス交換と遮熱塗料による省エネ効果は、申請用の数値に入っていません。当時、経産省が推奨していた計算ソフトが使えなかったためで、結果ガラスと塗料は補助金対象から外れ、その分の費用がかさむことに。
それでもあきらめなかったのは、施主である林さんが持っていた技術知識と断熱イメージに加え「改修によって社会貢献するんだ」という強い意思があったからにほかなりません。

「施主と施工のコラボレーションあってこそ、の工事でした」松本さんが振り返りました。


工期はたった3ヶ月。ガラス工事もスピーディに

本館1階には、歩道に面して名刺等一般向けのオンデマンド印刷ショップがある。窓は工事前も後も透明ガラスだが、改修後はエコガラス特有のミラー効果が見られるように
既存のアルミサッシをそのまま生かしたガラス交換工事はスピーディだ。足掛け4日間、勤務中の社員に気を遣いながら全85枚の窓を施工完了している。短い工期に対応できるこの素早さも、今回のガラス改修手法として選ばれた理由のひとつ
FIX窓の既存サッシでも引き違い窓と同様のガラス交換工事が可能。工事前とほとんど変わらない外見で断熱遮熱性能が大きく上がる
窓越しに見る、遮熱フィルムが張られた増築棟。窓は本館よりも前面道路に近く、建築基準法により網入りのガラスを入れる必要があった。しかし網入りエコガラスは通常のエコガラスより厚みがあるため、該当する既存サッシの溝に入りきらないという事態が起こった
南西側から見た社屋。手前が駐車場になっていて遮るものがなく、壁面は強い日射をまともに受けている
東海共同印刷社屋の基準階平面図。本館の東側に小さめの増築棟が付き、双方の床面は直接つながっている

施主側とコンサル・施工側の担当者4人のがんばりで、ひと月で詰めた補助申請は無事通過し、2012年10月に東海共同印刷社屋のエコ改修が始まりました。

補助金の都合上、その年の暮れまでには工事を終わらせなければなりません。「大晦日までやるわけにはいきませんから、実際には3ヶ月なかったですね」と内野さん。
ここでも求められたのは、施主と施工の協力体制でした。

オフィスビルの改修は、会社まるごと一時退去ができない限り“居ながら工事”が基本となります。東海共同印刷でも、通常業務を止めないことは大前提。土・日・祝日中心の工事とし、平日は仕事の支障にならない程度にとどめられました。

照明と空調を同時に行うなど工程は複層的に計画されましたが、部署ごとにあらかじめ通達したことで混乱もなく、友好的な空気の中で工事は進められたとのこと。「時折『この照明も換えてね』と予想外の注文をいただいたりもしましたが(笑)」
こうして社内の全照明がLEDに、一部を除く空調設備が高効率のものへと交換されました。

次に、補助金なしでもと施主・施工双方がこだわった断熱系工事にも目を向けてみましょう。

窓を任されたのは名古屋市内のガラス専門工事会社・河村硝子です。担当した神(じん)茂治さんは総面積約86㎡におよぶ窓ガラスの断熱改修について、性能・工期・コストと多角的に検討しました。

選んだのは、既存サッシをそのまま生かしてガラス面だけ遮熱真空ガラスに入れ替える方法。「サッシに手をつけるカバー工法や、アタッチメント付きエコガラスの採用などいろいろ考えましたが、性能が断然高く、工事の時間も短いこの方法が“勝ち”でした」

提案時にはコールドスプレーや白熱灯入り遮熱デモ機などを持ち込んでガラスの性能も体感してもらい、施工担当の内野さんも納得。執務スペースを中心に、32箇所の窓ガラスがエコガラスに交換されました。

ちなみにトイレや給湯室の窓は、今回は対象外。人が長く居ないため体感面での効果が薄い・窓自体が小さくて全体の省エネに影響がないなど、コストと成果を勘案した上で外されたのです。バランス感覚のある柔軟な判断といえるでしょう。

ほかにも、ガラス交換せずに遮熱フィルムを張った窓があります。
それは本館の東側、前面道路に向かって少しせり出している増築棟の窓。既存サッシの溝幅が狭く、指定のエコガラスが入らない状況でした。
新たにサッシをつければ工事が長引き、コスト増にもなります。かといって内窓を設置すると室内側に5cmほど窓枠が出っ張り、移動時の安全に難が生じるとの意見が。
それぞれ長短ある選択肢を時間・費用・安全・見栄えまで含めて検討を重ね、最終的にフィルムの採用が決まったそうです。

そして蓄熱が激しい外壁には、北向きのファサードを除く建物の3面+屋上にくまなく遮熱塗料が塗られました。
築33年の社屋は、白亜の省エネビルとして新たな時を刻み始めたのです。(後編に続く)


取材協力:河村硝子(株)
取材日:2016年6月3日
取材・文:二階幸恵
撮影:中谷正人
イラスト:中川展代

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