事例紹介/リフォーム ビル

工事期間も変わらぬ医療を 光と風の病院のエコ改修(前編)

-山口県 光風園病院-

Profile Data
立地 山口県下関市
建物形態 鉄骨造3階建
利用形態 慢性期医療・回復期リハビリテーション病院(210床)
リフォーム工期 2010年9月~2011年3月
窓リフォームに使用したガラス エコガラス(真空ガラス)
利用した補助金等 平成22年度経済産業省エネルギー需給構造改革推進投資促進税制
施工 宮崎硝子(株)



増改築歴50回。変化を続ける病院が大規模な窓ガラス交換に踏み切った

瀬戸内海を望む建物からは、海を隔てて九州・門司港が見え、空気が澄んだ日は遠く大分の山並みも眺められる。結核療養所として始まった病院は、現在は老健や特養、在宅介護支援センターなども併設し、総合的な高齢者医療・福祉サービスを展開している
光風園病院理事長の木下毅さんは1980年代から高齢者医療の改善に取り組み、研究を重ねてきた、日本の慢性期医療・老人医療のトップランナー。その指揮のもと実践される医療・ケアサービスは、慢性期や認知症のほか回復期リハビリテーションまで、トップレベルの評価を得ている
緑の眺めも美しい窓が並ぶ作業療法室は<木漏れ日でなければダメ>というこだわりのリハビリテーション空間。「院内でも一番雰囲気のある場所ですね(髙田さん)」
海に向けて開く窓からの豊かな光と風と眺望は、病室環境を左右する大きな要素のひとつ

瀬戸内海の西端、周防灘を望む下関市長府は、古くは長府藩の城下町、幕末には高杉晋作の奇兵隊が陣屋を置いた地として、歴史ロマン香るまちです。

医療法人愛の会 光風園病院は、第二次世界大戦直前の1940年(昭和15年)からこの地の医療を支えてきました。 初めは結核療養所として開設され、1950年代までは慢性期の療養型病床をメインとした老人医療を、その後今日に至るまで、認知症や回復期リハビリテーションも含めた総合的な高齢者医療に取り組み続ける病院です。

設立70余年の歴史の中、拡大・変化するニーズに合わせて建物の増改築も重ねられてきました。

理事長の木下毅さんは、医療・療養の場では「明るさと空気と風通しが大事」と語り、窓が大きく明るい空間をつくり続けています。
規模の大小を合わせ「この20年で50回近く増改築しています」と、現場で指揮を執り続けてきた総務部長の髙田和土さん。現在も2013年12月に竣工が予定されている回復期リハビリテーション病棟の新築工事が行われています。

今回行われたエコガラスによる窓改修のきっかけについて、木下さんは「最初は遮光フィルムを張ろうと思いましたが、そんなんじゃダメだ! って言われたんですよ」と笑います。

以前から木下さんのもとには、西日の暑さや冬の夜の寒さを訴える患者さんやご家族、医療スタッフの声が伝わってきていました。
そんなとき、地域の活動で一緒だった宮崎硝子(株)の宮崎隆社長から、エコガラスによる窓の改修アドバイスがあったのです。

宮崎さんは、まず職員食堂にエコガラスの体験モデル機を置いてスタッフに効果を知ってもらい、その一方で工事の見積も木下さんに提出。
さらに、経済産業省資源エネルギー庁の「エネルギー需給構造改革推進投資促進税制(エネ革税制)」の対象になることも伝えた上で、改修を提案しました。

「サッシを残してガラスだけ換えるならそれほど大変ではないし、免税措置もあった。それで患者さんの生活環境と職員の労働環境がよくなるなら、いいでしょう」と木下さん。
こうして、建物内で外気に触れるすべての窓をエコガラスに交換する大規模な改修が、2010年9月から翌年3月までの約半年間をかけて、実施されたのです。


光あふれる病棟がさらされてきた、厳しい熱射と山からの冷気

4つの病棟はそれぞれ渡り廊下でつながれている。山側に病室を配置しない片廊下タイプのため、建物の平面が細長く延びている
4人床の病室。南側の壁はほぼ全面が窓になっており、入口側のベッドまで光が届いて明るい。
談話コーナーと車いす置き場を兼ねた広い廊下は、大きな窓から入る自然光で照明要らずの明るさ。風通しもよく、病院独特のにおいを感じることもない
患者さんの食堂は、高台からの眺めと、園芸専門スタッフが温室で丹精した蘭の花が美しい、光風園病院自慢の憩いのスペース。ベッドから出て食事をしにいく行為も医療・リハビリテーションの一環という
食堂に勝るとも劣らない眺望スポットとなっている談話コーナー。海の青さと山の緑が美しい
廊下はすべて病室の北側で延びる。大きな窓で明るいが、外がすぐに山肌となっているところもあり、自然の冷気がじかに伝わりやすい

海岸線からほど近い高台に建つ光風園病院は、敷地面積約50,000坪、標高は約47m。南に開け、北には山を背負う、豊かな緑に囲まれたロケーションです。

4つの病棟はそれぞれ長期療養・難病医療や緩和ケア・回復期リハビリテーション・認知症など、医療分野別に患者さんを受け入れています。

個室から4床室まで、すべての病室は海の見える南側に配置され、大きな窓が印象的。
山側に向いた廊下にも多くの窓をつけて、自然光による明るさと通風を確保しています。急性期の病院の廊下で見られるような診察室や検査室への道筋を案内するテープもなく、落ち着いた雰囲気が漂っていました。

食事を医療サービスの重要な要素と位置づけ、寝食分離をうたって食事時はベッドから離れるよう促していることから、患者さん向けの食堂も充実しています。
各病棟に配される広々とした食堂は、どれも壁いっぱいに窓が切られ、瀬戸内海や山の緑が楽しめる眺望スポット。花や人形、季節の装飾が絶えない居心地の良い場所です。

さらに、お見舞いに訪れた家族と食事や会話ができる場として用意された談話コーナーも、食堂同様見晴らしがよく、ゆったりとした憩いの場となっています。

海の見える緑の丘で、たくさんの窓に囲まれる明るい空間。それは「暖かな光とさわやかな風」をその名にいただく光風園病院をまさに体現するものでしょう。

しかし温熱環境の視点から見たとき、そこには厳しい実情がありました。

南向きの大きな窓は明るく快適な反面、強い日差しや西日が入りやすく、夏の室内温度を上げてしまいます。やむを得ずカーテンを引けば、せっかくの明るさや眺望は半減。さらに現場のスタッフからは「一度暑くなると、クーラーをかけてもなかなか冷えない」の声が絶えず上がっていました。

一方、冬場はとくに廊下の寒さが厳しくなります。日の当たらない北側の崖地から「ガラス窓を通して、冷気が直接伝わってきました」と看護スタッフは話します。

髙田さんいわく「光風園病院の暖房は5台の灯油ボイラーでつくる温水を全館に回す方式で、病室ごとの温度管理が難しいんです」。
ボイラー室に近い部屋は暖かいけれど、離れるに連れて寒くなる。スタッフからは病室ごとに室温のムラがあるとの報告もあり、お見舞いにくるご家族からも病室の寒さを訴える声がしばしば聞かれたとのことでした。

冷房や暖房を強くしても、病室や廊下の窓から外の熱気や冷気がいとも簡単に入ってきてしまう…。豊かな開口部を備えた光風園病院にとって、ガラスの断熱力を上げることは温熱環境改善の基本だったといえるでしょう。


灯油消費量がダウン。暑さや寒さの体感も和らいだ

西2病棟平面図。中庭を囲む回遊型病棟はすべての病室が南向きかつ大きな窓を持つため、十分な明るさがある反面、西日にもさらされる。北側は冬、山からの冷気が廊下の窓に直接伝わりやすい。建物全体の動線が長いため、病棟の両端に食堂を配置して患者さんの移動時の負担を低減している 東2病棟平面図。南西に向かって開く形で病室が並び日当り抜群だが、夏場の日射がとくに患者さんの日中の居場所である3面採光の食堂を直撃する。また、夜中起き出す患者さんが過ごす談話コーナーや廊下のソファー付近は、北側窓から入る山の冷気で改修以前の冬はひどい寒さとなっていた 2010年1月から2012年10月までの光風園病院の灯油消費量のグラフ(縦軸の単位はリットル)。2010年9月から翌年3月の改修工事以降、一年を通じて減少傾向にあることがわかる。電気消費量の場合、省エネ対応クーラーへの交換による効果などエコ改修以外の要素も入りやすい。しかし光風園病院の灯油消費量の増減は、暖房全般を引き受けるボイラーの運転状況をそのまま反映しているため、建物の断熱力のバロメーターのひとつとなる 西2病棟に勤務するスタッフにお話をうかがった。右からケアワーカーの津和崎麻葵さん、看護師の川野亜季子さん、病棟科長の山田智子さん
看護師の中村祐美子さんが勤務するのは、重度の認知症を専門にケアする東2病棟。身体拘束をしない、ナースコールのコードも撤去しない、窓も自由に開けられる、といった患者さん本位の医療・介護サービスが実践され、全国屈指の認知症ケア体制として知られる
ロールカーテンが下げられ、適度に遮光された談話コーナー。以前使っていた横引きのカーテンよりも使い勝手がよいという。窓の向こうには瀬戸内の青い海。バルコニーに続く右側の扉は下半分にアルミ板が張られていたが、改修時にエコガラスに換えられた
総務部長の髙田和土さんは、総務・人事・営繕・渉外・福利厚生まで、医療部門をのぞくすべての病院機能を統括する光風園病院のキーパーソン。ざっくばらんなその語り口と細やかな心配りに、スタッフからは絶大な信頼が寄せられている

光風園病院では、今回の窓の改修工事でエコガラスの一種・真空ガラスを採用。既存のサッシをそのまま生かし、ガラスだけを高性能なものに入れ替えることで、開口部の断熱力をアップしました。 ガラス交換方式の工事は予算面のほか、工事にかかる時間が短いことも、24時間動き続ける病院にとっては有利な要素といえそうです。

改修の効果を数値で見てみましょう。工事終了後の2011年冬以降と、工事前の灯油使用量を比較すると、年ごとに外気温の差異はあるとはいえ減少傾向が見られます。

電気と違い、灯油使用量は暖房がメイン。建物の断熱力が上がり、館内に回す温水が冷えなくなればボイラーは動かず、灯油は消費されません。「それはすぐに数値に反映すると思います(髙田さん)」

患者さんやスタッフの方々の体感はどうでしょうか。

慢性期の医療サービスを担当する西2病棟の山田智子看護科長は「病室から食堂に移動するときの廊下がとても寒い、という患者さんの声が多かったんですが、エコガラスにしてからは、移動時に患者さんに着せる掛け物のコントロールもしやすくなったと思います」 近くにある病室を凍えさせていた<吹き抜け階段から流れる冷気>もなくなった、とにっこりしました。

西2病棟の看護師を務める川野亜季子さんは、働く者の立場から「夏場はクーラーをかけても温度が下がらず、暑くて設定温度を少し低めにせざるを得ない状況がよくありました。今はすぐ冷えるので、いったんは低くしてもまた設定温度を上げて、そのまま保てます。前とは違うなあと思いました」

重度の認知症患者さんをケアする東2病棟の看護師・中村祐美子さんは「この病棟では、夜中に患者さんが起きてきて、スタッフと一緒に廊下のソファーで過ごすことがよくあります。冬は保温機能のある下着を重ね着するほど寒かったんですが、工事の後は廊下の窓ガラスから直接来る「しんしんと冷える寒さ」はなくなりましたね。着るものの枚数が減りました」
夏は夏で、患者さんが日中のほとんどを過ごすガラス張りの食堂に差し込む日差しとその暑さに困っていましたが、ガラス交換のほか「ブラインドをつけて西日も防げるようになり、少し違うんじゃないかと思っています」

ガラスという素材ならではの効果もありました。

山田さんいわく「非常口や病室のバルコニーにある扉は、以前は下半分がアルミ板でした。それを下まで全部ガラスにしたら、車いすの目線からも外が見えるようになって…。アルミと比べて熱効率もよくなりましたが、なによりも室内が明るくなりました」

スタッフの笑顔に、患者さんの療養環境とスタッフの労働環境、双方の改善に向けてエコ改修が上げた成果を目の当たりにしながらも、当然のように疑問がわいてきます。

病院は24時間365日患者さんが存在しスタッフが働き続ける、ある意味で<特殊な空間>。そんな場で業務に支障を来さずに半年もの工事を行うとき、住宅やオフィスとは違う苦労や工夫がないはずはない…

「計画の最初の工程から、現場スタッフを巻き込みながらやっていくんです」髙田さんの言葉に、ヒントが隠れているようです。(後編に続く)


取材日:2013年4月25日
取材・文:二階幸恵
撮影:中谷正人
イラスト:中川展代

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