工務店・ガラス店のみなさま/スペシャルインタビュー

家づくりは作品づくりにあらず

若林 賢太郎(わかばやし・けんたろう)

1980年生まれ。大学在学中から不動産会社に勤務し、3年間の修行を経て2005年桂工務店入社。2018年7月、創業者である父の後を継ぎ取締役就任、現在に至る。
住宅をメインとする建築施工・不動産業務のほか、設計業務は自身が代表を務める『クルクルシュタット住宅設計室』にて担当。設計に対し常にフラットな姿勢を保つ一方で施主の要望を受けての提案・工夫に妥協はなく、建材から構造・性能・設備まで予算内での最高レベルを希求。にこやかにして謙虚、柔和な物腰の奥にゆるぎない信念が秘められている。

プライベートでは市民吹奏楽団の総監督兼指揮者として活動、休日は音楽家の顔に。定期演奏会やコンクールなどで指揮棒を振り、ほかにテューバ演奏もこなす。二級建築士・宅地建物取引士

設計にこだわりなし。施主の希望が最優先

昨年夏にお父様から取締役を引き継がれました。現在はどのようなお仕事を?

1年で2〜3棟の新築住宅と十数件のリフォーム、ほかに店舗や倉庫など非住宅建築もいくつか手がけています。
エリアは茨城県南部から千葉県北西部、お客さまはご紹介がほとんどです。

土地探しから設計、施工までトータルな家づくりを請け負うなかで、心がけていることは。

お客さまの話・希望をよく聞くことですね。自分自身のこだわりが特にないので、なんでもできます。紀州ヒノキや八溝材*を使いたいというお施主さんのご希望で、山まで木を見に行ったりもしますよ。

もちろん、地震に強くて長持ちするなど、“当たり前のこと”としてやるべき要素はあります。とくに茨城県南部は地盤が悪いので、地盤改良はほぼ必須です。
性能面では“必要最低限の高断熱”という考え方を取っています。

基本設計からご自身でされますが、デザインに関してはどうお考えですか。

必要なのはお客さまの要望や構造・間取りなどの“必然”。特殊な条件がない限り、奇抜なことはやりません。
先代社長である父の「作品を作っているのではない。自分がやりたいことを押しつけるな」という言葉どおりだと思っています。ただ、自分ではないつもりですがお客さまや職人さんからは“かなりこだわりがある”と思われているようです(笑)

お客さまとの打ち合わせでは、実際に住む方々について細かく聞きます。趣味・年齢・お体の状況などなど。土地を探す場合には建坪の希望やお子さんの学区まで。

その場で図面を手描きしながら話すんです。平面図も立面図も描きながら、施工の仕方や予算のことも言ってしまう。お客さまと一緒に考えながら進めていきます。

家づくりは作品づくりにあらず-詳細写真01

太い丸柱がそびえる事務所でお話をうかがう。あらわしにされた梁や方杖も目を引く木造空間

家づくりは作品づくりにあらず-詳細写真02

施主と向かい合う現場で描かれた手描き図面。その力は想像以上に違いない

窓は多機能。他の建材と圧倒的に違う

“必要最低限の高断熱”とは、どの程度の性能なのですか。

やり過ぎないくらい、でしょうか。他社と競うようにUA値を下げるのは興味ないというか(笑)
とはいうものの、今計画しているモデルハウスは壁に200mm天井に400mmの断熱材を入れて、これ以上ない性能のものをつくろうと考えていますが。

完全なゼロエネ住宅ではなく、予算もきちんと考えての“最低限の高断熱”。その指標として認定低炭素住宅を多く建てています。取手市内で注文住宅としての第1号を手がけたのもうちなんですよ。
一次エネルギー消費量や外皮性能も全部自分で計算するので、予算や設計条件によって調整できます。

断熱面の影響が大きい“窓”についてはどうお考えでしょう。

窓は、壁や屋根やドアといったものとは圧倒的に違います。
人が出入りする、室内から外を見る、風や光を入れる、そして断熱…多機能ですよね。ここ数年でそう気づきました。

どの機能を重視されますか?

難しいですね、どれを優先したらいいのか(笑)
開口部は大きさや配置、バランスが大事だと思っていて、設計時はそれを考慮しています。掃き出し窓はできる限り使いません。結局カーテンを閉めたきりになってしまうので。

窓に断熱性能を付加する際はどのように。

開け閉めに手間がかかって嫌だとお客さまが感じられる場合以外は、内窓が中心です。リフォームでも、やはり内窓設置が多くなりますね。

家づくりは作品づくりにあらず-詳細写真03

過去に担当した住宅の一次エネルギー消費量計算結果。低炭素基準、次世代省エネ基準ともにはるかに下回る数値が出ている

家づくりは作品づくりにあらず-詳細写真04

窓の断熱力アップをメインとする省エネ改修にも力を入れ、ホームページでも発信している。LINEでの見積対応に現代性が

設計施工のスタンスを堅守。施主とともに“ああだこうだ”を楽しむ

今後、新築住宅の需要は減少すると言われています。どのように対応していかれますか。

今までと変わらないし、変えるつもりもありません。
設計から施工までトータルに手がけるスタンスは間違っていないと思っています。「物流倉庫にトイレをつけたいと言われた」といった案件を不動産屋さんが持ち込んでこられたりして、プロの方からも便利に思ってもらえているようです。

でもやっぱり、お客さまが目の前にいる仕事が絶対楽しいですよ。
さまざまな要望がある中で、ああだこうだやるのがいい(笑)いろいろ言ってもらうことがスタート地点になるんです。何も言われなかったらOK、では決してない。

やることが毎回いつも違うので、そういった面では現場の大工さんが大変ですが、それでも楽しいです。

スタッフはご自身を含む4名、設計はおひとりで。ご苦労もあるのでは。

設計などの業務が大変ということはありません。

つらいのは職人さん不足で、会社の規模がもう少しあればとも思いますが、それでも地元で30年やってくると、何があっても対応できるんですよ。東日本大震災のときには“屋根にブルーシートをかけてほしい”という要望がたくさんあり、僕も職人さんと一緒に屋根に登っていました(笑)。
いざというときに動ける体制があることが、地域貢献になると思っています。

*茨城・栃木・福島の3県にまたがる八溝(やみぞ)山系で伐採されたスギ・ヒノキ・マツ・サワラといった材木の総称。木目や色の美しさ、狂いの少なさ、強度などを備えた良材として知られる

家づくりは作品づくりにあらず-詳細写真05

「お客さまからの要望がある方がいい。なかったらどうしたらいいかわかりません」と笑う。住まい手の希望を糧に自らも楽しみながら、世にふたつとない高性能住宅を建て続ける

取材日2019年4月24日
取材・文二階さちえ
撮影渡辺洋司(わたなべスタジオ)
株式会社あけぼの通商
社名
有限会社 桂工務店
URL
https://www.katsurakomuten.net/
住所
茨城県取手市
社員数
4名
事業内容
木造新築住宅(自然素材・制振設計・ゼロエネ・紀州材使用等)/リフォーム(木工事・水まわり・外壁・屋根・シロアリ防除等)/設計(住宅・非住宅・各種許認可業務・一次エネルギー消費量計算・省エネや耐震相談等)/不動産業務
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