学校関係のみなさま/事例紹介

エコ改修と耐震改修で、学校生活が快適に!

兵庫県神戸市立多関東中学校 -神戸市-

エコ改修と耐震改修で、学校生活が快適に!



主なエコ改修項目 工期:2007年4月~2008年3月
断熱
開口部…
ペアガラス
校舎屋上…
外断熱
遮熱・日射遮蔽
教室窓…
庇・ルーバー設置
校舎屋上・体育館屋根…
高反射塗料
校舎壁面…
壁面緑化
自然換気
校舎内…
温度差換気/風のやぐら・バランス窓
教室…
夜間換気用換気窓
教育空間の充実
エコルーム…
地域材の利用
(杉材 t=12mm)

神戸市垂水区の多聞東中学校(1974年創立)は、2005年度から2007年度にかけて環境省エコフロー事業のモデル校に指定され、 先人の知恵を受け継ぎながら地球環境への意識を育む学校エコ改修に耐震改修と合わせて取り組みました。


多聞東中学校のエコ改修のコンセプトは「生きる知恵の継承」。先人の英知の結晶である伝統的日本建築のすぐれた技術や手法を学んで生かし、 さらなる発展をめざすという改修です。
窓や開口部には障子や格子、校舎全体の通風には越屋根、壁面は縁側や藤棚と、多くの「和」の建築の要素がモチーフとして採用され、現代の最新技術と融合してエコ改修の特色となりました。


茅葺、障子、越屋根…昔の知恵を現代に生かす

エコフレームが印象的な多聞東中学校の外観。

エコフレームが印象的な多聞東中学校の外観。

教室の窓に設置され「障子」「すだれ」の役割を果たすエコルーバー。

教室の窓に設置され「障子」「すだれ」の役割を果たすエコルーバー。

エコルーバーのついた窓を室内側から見た様子。

エコルーバーのついた窓を室内側から見た様子。

窓の下部には櫛の歯状のナイトパージ(夜間換気)用窓が見える。

窓の下部には櫛の歯状のナイトパージ(夜間換気)用窓が見える。

廊下の上部に並んで揺れるバランス窓。

廊下の上部に並んで揺れるバランス窓。

校舎屋上に建ち、自然換気のカナメとなる風のやぐら。

校舎屋上に建ち、自然換気のカナメとなる風のやぐら。

改修では、省エネ、CO2削減、学習環境の改善を同時に実現するために、断熱・遮熱、通風、昼光利用まで、さまざまな技術が盛り込まれました。

「校内ヒートバリア計画」の名のもと、校舎から体育館までトータルな断熱・遮熱が実施されています。屋上や屋根部分には 外断熱防水処理・高反射塗料の塗布が施され、玄関部分の屋上は植物プランターで緑化しました。
建物の外側を保護することで日射熱を抑える一連の工夫は、伝統的な日本の民家の要素である「茅葺屋根」や「しっくい塗りの壁」の技術にならったもの。 断熱・遮熱効果のほか、結露も防いで快適な室内環境を保ちながら、建物の長寿命化にもつながるといいます。

教室の窓はペアガラスに交換され、5段のエコルーバー、さらにライトシェルフが設置されました。南側窓からの強い日差しはルーバーが遮り、 外の光はライトシェルフが奥まで届けることで、熱の侵入を防ぎつつ廊下側の席まで明るい教室を実現しています。
柔らかく安定した光を室内に取り入れるこの手法は、日本建築の「障子」や「格子」「すだれ」をイメージした技術。照明や冷暖房用のエネルギーを削減し、 かつ教室内の温熱環境改善を図っています。窓の下部には夜間換気用の窓(ガラリ)も付けられました。

廊下や玄関ホールでは、バランス式の回転窓がゆったりと揺れています。風の流れで開閉して自然換気を行い、 強風時や降雨時は自動的に閉まるしくみです。この窓は校舎の階段室上部に設置された「風のやぐら」と連動しています。
窓から校舎内に取り入れられた自然の風は教室内を流れ、廊下・階段を通り、最後に風のやぐらを伝って上に抜けていきます。 これは伝統的な日本建築の「越屋根」をイメージした手法で、先人のすぐれた換気技術を現代によみがえらせています。


環境配慮のシンボルとなった「緑の耐震フレーム」

中庭から見る、緑化されたエコフレーム。

中庭から見る、緑化されたエコフレーム。

エコフレームを見上げると、がっしりした耐震ブレースが見えた。

エコフレームを見上げると、がっしりした耐震ブレースが見えた。

多聞東中学校では、耐震補強材を活用しつつ教室環境などの改善を図るレンガ色の『エコフレーム』を環境配慮のシンボルとしています。

エコフレームは、2棟ある校舎の1・2階部分の壁面に計3カ所設置されています。北校舎の南面と南校舎の北面に付けられて中庭で向かい合うエコフレームには、 壁面緑化が施されました。また、南校舎の南面のエコフレームには両側にパーゴラを配置して「緑の小径」がつくられ、生徒や教職員と地域住民の交流スペースとなっています。

伝統的な日本の「藤棚」や「縁側」の手法と同様に自然な光や風を教室内にもたらしつつ、憩いの場をもつくりだしている、そんなエコフレームといえるでしょう。


植物栽培や自然体験で生きた環境教育を展開

中庭から見る、緑化されたエコフレーム。

中庭から見る、緑化されたエコフレーム。

エコフレームを見上げると、がっしりした耐震ブレースが見えた。

エコフレームを見上げると、がっしりした耐震ブレースが見えた。

県内の学校施設関係者が集まったエコ改修の研修風景。

県内の学校施設関係者が集まったエコ改修の研修風景。

エコ改修は環境教育とも密接に連動しています。屋上・壁面緑化やエコファーム、さらには耐震技術まで、改修を教材にしながら自然に学んで 生活の中の知恵に気づき、ひいては地球環境の改善に貢献できる「生きる知恵」を受け継ぐ。それが多聞東中学校の環境教育の取組みです。

校内には環境学習の基地となるスペースが複数整備されました。
玄関ホールには環境表示モニターと可動式の展示パネルが置かれ、子どもたちの活動発表や校内の環境情報発信の場となっています。 また視聴覚室は内壁に県産木材が張られ、木の香り漂うエコルームとして生まれ変わりました。 室外での環境教育の場も充実しています。
南校舎南面には階段状の「エコファーム」がつくられ、稲や草花、野菜などを四季を通じて生徒たちが育てるようになりました。 堆肥・土づくりから収穫まで一連の栽培活動を実体験することで、環境はもとより食育・情操教育、人間の生活についても学ぶ場となっているとのこと。

また、学校の敷地東側に広がる雑木林は、エコ改修をきっかけに自然観察路や広場がある「環境林」となりました。生徒と教職員、 さらに地域に住む人々が力を合わせて整備しながら、生態系学習や地域交流の場として活用している森です。

さらに、将来のエコリーダー育成をめざす多聞東中学校では、地域の協議会や団体と学校との協同による「多聞東中学校エコスクール倶楽部」発足(2008 年)を始め、兵庫県内の学校施設関係者の研修として校内視察が行われるなど、環境学習の拠点としての活動も進められてきました。
地域の核となるエコスクールとしての継続的な取組みとその深化が、これからも注目される学校です。


 

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