遠藤 俊(えんどう・しゅん)
1972年生まれ。大学建築学科を卒業後ゼネコンに入社、現場監督として建築全般を経験する。1998年遠藤硝子入社。工事担当として現場業務に従事し2010年代表取締役に就任。現在に至る。
大正8年の創業から百年続く老舗硝子工事会社の四代目は、ゼネコンの建設現場で腕を磨いた叩き上げ。遠藤硝子入社後もガラスの現場にて修業を積み、社長に就任。豊富な経験に裏打ちされた広い視野でガラスを再認識、夢と可能性を見出す。
現場を愛し、常に自ら手を動かす。仕事に対する真摯な姿勢は多くの職人に慕われ、建設現場で一目置かれる『ENDO GLASS』の作業着に象徴される質の高い仕事を生み出す規範ともなっている。
けれんのない爽やかな語り口が印象に残るとともに、現場監督時代に身につけた“整理整頓”へのこだわりもまた強烈。「周囲はうるさいと思います(笑)」。一級建築士・一級建築施工管理技士・一級ガラス施工技能士
大学卒業後の4~5年間を現場監督として働き、建築の全体が見えるようになりました。
楽しさや辛さとともに建築という仕事の醍醐味を感じ、いろいろ経験させてもらいましたね。
前職の最後に、小さい現場ですが現場責任者を経験して、遠藤硝子に入社しました。
IT化が加速する時代だったこともあり、まずは社内に共有の1台しかなかったパソコンを全員に支給しました。その後スマホも支給するなどで効率化を実現しています。
事務所や倉庫などの業務環境は、現場監督時代の経験を生かして“5S”を遂行すべく、書庫から道具類まで“全とっかえ”しました。
外から見えないように熱反ガラスを張っていた店頭を高透過ガラスに入れ替え、打ち合わせスペースから事務所までよく見通せるように。ゆっくりお茶が飲めていただろう古いソファや(笑)賞状なども取り払いました。ガラスのサンプルをたくさん置き、誰でも入りやすい場にしています。
近所の工務店の方が気軽に見に来て、仕事につながったこともありました。
夜はLEDでライトアップして、帰宅途中の人に窓のエコリフォームをアピールしています。「毎日見ているんですが」と言って窓のリフォームをご依頼くださったお客さまもいて、今ちょうど助成金申請のお手伝いをしている最中なんですよ。
ほかにIT化の一環として、ガラスメーカーさんと共同で予算管理や発注システムを独自に構築したりもしています。
9割以上が新築です。創業時の建具業から二代目の祖父がガラスに転じて以後、変わっていません。ゼネコンからの発注で病院や学校、オフィスビルなどのガラス工事を請け負うことが多いですね。
なのでエコガラスの案件はまだ全体の1割未満ですが、気持ちは5割(笑)専任の担当者も置いています。
エコリフォームはこれから伸びる一方だと思いますよ、特にオリンピック以降は。そのときまでに力をつけておきたい。新規参入ではなく「前からずっとやってるんですけど」と言えるようにね。
ほとんどが個人のお客さまです。HPを見て電話やメールでエコリフォームのお問い合わせをいただくことが、6~7年前から増えました。
他社と相見積もりもされているので、質問への即答やご希望があればすぐ現場にうかがうなど、迅速な対応で差別化を図っています。
真空ガラスと内窓、この2種類がエコリフォーム提案の基本です。
金額を同じくらいに設定し、結露や防音、夏の暑さなど状況に応じて「自分の家ならこうします」という言い方で提案。ほかにマンションであれば管理組合の規約に関する最新情報をお伝えしたりもします。
お客さまにとっては決して安い買い物ではないので、数年かけてひと部屋ずつガラスを交換する仕事をご依頼いただくこともあります。
HPが中心です。ブログを書いているのですが、まめに更新すると検索の上位に上がってくるようですね。
ほかにポスティングや地域紙への広告掲載もしています。
年に数回はゼネコンやハウスメーカーさんのリフォーム担当部署を回って、説明会や勉強会をさせてもらうことも。
出席した方の引き出しには一応情報として入り、忘れた頃に電話が来るのですが…これによる展開はまだこれからですね(笑)
LINEを活用しています。
すべての現場名のグループLINEをつくって、担当者・職長そして私とで情報を共有しているんです。
打ち合わせ内容も含めて、とにかくいろいろな情報を共有します。「知らなかった、聞いていなかった」ほど生産性の低い会話はないので、情報共有に関しては徹底してますね。
仕事の様子をアップすることで励みにもなる。現場監督をやっていたので、仕事は現場がすべてだと本気で思っています。必要であれば道具を持って手伝いにもいきますよ。
職人さんとも近くて、一緒に飲みにも行きます。「社長、こんな仕事をしているから、あとでブログに上げてください」と職人さんが写真を送ってくれたり。
風通しのよさがいいことにつながる、という感じですね。
職人さんからは「便利な作業機械を見ました、うちでもどうですか」といった写真付きの提案もあれば「お客さんのところに行くので新しい靴下を買ってもいいですか」なんていう問い合わせもきます。
私のモットーは「見た目は、重要」で、仕事では誰に対しても良い対応をするよう徹底していますから、靴下ももちろんOKですよ(笑)
LINE以外では、HPで毎日の出面報告や連続無災害記録の更新を掲載しています。
無災害記録はもう1500日を超えました。2000日を達成したらみんなでお祝いしたいです。
HP上では一応そうしていますが、電話やメールは全国からいただきます。遠方の場合もお話を聞き、近くのガラス屋さんに依頼していただけるようにアドバイスをする。これは全社に浸透しています。
お客さまとの実際のやり取りにはメールを多く使います。余計なコストをかけないように。
「こういう角度で写真を撮って送ってください」と、現場の状況が見える写真をお願いするような商談もとても多い。なるべく経費をかけずに問題を解決できればいいですよね。
さらに、金額も含めてお問い合わせにはできる限りその場で即答しています。「行ってみなければわからない」という回答は、お客様にとって不親切だと思いますから。
ガラスのことならなんでも相談にのります。ワンストップで受けとめて、できるだけのことをする。「遠藤硝子に連絡してラッキー」と思っていただきたいんです。
従来は「工事会社は近所の小さな割れ替え仕事などはやらない」という風潮がありましたが、「それってどうして?」って。
今はコンパクトひとつから修繕します。曲線でできたテーブルに合わせてオーダーメードのカバーガラスを作ったりもする。板ガラスでできないことはまずありませんから。さすがにガラス瓶は無理ですが(笑)
お気に入りの手鏡や大事にしていた額が割れても、対応してもらえるところがないんですね。どこで対応してもらえるか尋ねたら「とりあえずホームセンターに行ってみたらいかがですか」そんな風に言われた、と聞くこともあります。
でも、うちがやればすぐ直せるんですよ。その場でガラスを切って入れるだけ。私がいれば私がやるし、他の者でもやれます。
それですごく喜んでもらえて、リピーターになってくれるんですよ。鏡一枚から大きなリフォームの仕事につながったこともあります。
資格を取ったのは、現場の人と実のある話をしたいという思いからです。
一級建築士を持っていればゼネコンの担当者さんと、ガラス施工技能士を持っていればガラス職人さんと会話ができるし、腹を割って話せますよね。
資格がすべてではないし、資格をもっているイコール仕事ができる人、ということではないのですが、資格を取るために努力した経験と、持っていることへの責任感が大切だと思います。
私は結婚式の直前まで資格の勉強に没頭していました。式の準備を一緒にできなかったことを今でも妻には申し訳なかったと思っています。
結婚後に取得した資格もあるのですが、こと資格の勉強になると没頭してしまい、子育てがおろそかになったこともあります。このあたりも、妻にはお詫びと感謝を伝えたいですね。
ずっとガラスでやっていきたい。やれたら幸せですね。
内装とかサッシもといったお声もかけていただきますが、冷静に考えればガラスだけで会社が成り立っているのはすごいこと。もっと極めていきたいです。
ガラスは、可能性があるいい商売だと思っています。断熱性能もデザインも、大きなガラスがうまくおさまったときの達成感も。
だから、ガラスのことで何か聞かれて「ちょっとわかりません」という答えは絶対にしたくない。うちに問い合わせて解決しないことはない、任せてほしい、そうありたいですね。
“誠心誠意”。新築でもリフォームでもお客さまに対しても同業者に対しても「絶対真面目にやりましょう、嘘はダメですよ」。
それさえのがさなければ、大丈夫です。
たとえばガラスを入れるとき、ほんの少しだけ角が欠けていても、枠に入れてしまえば見えません。でも10年後にはわかってしまう。「これを入れちゃうのは誠意がないよね」ということなんです。こういうことにうるさい社長でなければ。
会社の作業着の背中には、大きく社名を入れています。これを着ていくと、千人規模の大きな現場に初めて入っても「遠藤硝子さんですか、どうぞどうぞ」と迎えてもらえるんですよ。
それは、みんながそういう仕事の仕方をしているから。誰ひとりとして変なことをしてこなかったからです。
これからもプライドを持ってやっていきましょう、ということですね。
ガラスには夢があるんです。