田端 隆(たばた・たかし)
1972年生まれ。大学卒業後、建材販売会社での修行を経て1997年より家業に携わる。2008年、法人化とともに代表取締役に就任。
若いスタッフとともに、サービス業としての徹底したスタンス、OBのファンクラブ制度創設など、常に業界の常識を打ち破る試みに挑戦。窓のプロとしてのプライドと謙譲の精神を兼ね備えた誠実な提案を実践するウィンドウ・コンサルタント(窓の相談役)として、顧客から厚い信頼を寄せられている。<自分自身も商品の一部>として肉体改造やHPその他での頻繁な露出もいとわない厳しさと、スタッフに対するこまやかな気遣いが同居する、繊細にして強靭な経営魂の人。2級建築施工管理技士(仕上)、福祉住環境コーディネーター、セキュリティアドバイザー、システムアドミニストレーター。
最初に作ったHPは、すごく洗練されていました。でも問い合わせもあまりなく、コンサルタントの方に相談したら「カッコよく作り過ぎ。顔を出せ」と言われたんです。頼みやすさが売りのお店ならその方が理にかなっているだろう、と。
同時に、それまでの<会社の紹介ページ>的な見せ方を<窓で困っている人が検索したときにヒットするページ>へ変えました。
会社名はどうでもいいんですよ、社名で調べる人なんていないですから。だから例えば<寒い、窓、結露>で検索して、どうしらいいのかをお客さま自身で調べられる構成にしたんです。
この商品がスタッフのオススメ、と載せています。あるのとないのとではお客さまにとってはかなり違うそうです(笑)
窓の職人というより、サービス業として自分たちを位置づけているんです。若い人間ばかりでやっている以上、親しみやすさこそが売りだと。
自分も商品の一部だと意識し始めたら、お客さまから見ておうちに入ってもらいやすい、また頼むねって言いやすい存在になるには「身なりもしっかりしないといかん」と思うようになりました。
それで肉体改造もしました。30代の頃は僕、すごく太っていたんですよ。いつも作業服で髪の毛ボサボサで、外見に気を遣わなかったので(笑)
数は少ないですが一騎当千の人ばかりで、彼らがいないとやっていけません。お願いしますとひたすら頭を下げています。
以前、別のスタッフ4~5人でやっていたとき、女の人にはこの仕事は無理だと思い込んでいました。「もう君は笑っているだけでいいから」と言って、仕事を全部抱え込んでいたことがあるんです、すごくしんどいのに。
そうしたら「電話番以外に私の仕事がない」と辞められてしまって。
相手を信用して頼むことができず、教えるより自分がやる方が早いと思っていたんですね。あのときはすごく挫折しました。
だから今のスタッフには、工務も事務も気持ちいいくらい放り投げて(笑)自分でやらず人にやっていただく、ということを、本当に勉強させてもらっています。
最初はそうですね。でも今は、工務は元大工でなんでもやれるスペシャリストですし、事務には見積や発注まで完全に任せている。欠かせない存在です。
アホやないかと言われますが(笑)うちの会社を語る上で一番大事な部分です。
このシステムは2010年に考えました。
恥ずかしげもなくファンクラブと言うからには、必ずリピートがあって、会社のことも僕のことも気に入ってもらわなければならない。だから、複数回の工事依頼をしてくださった方だけに声をかけます。
そんなプライドを持ってどうするんだと言う人もいましたが、人数ではなく中身が大事だと思っているので。
すごく励みになりますね。
うれしいのは、これが<生きている名簿>であることです。会員番号が若い、つまり昔からの会員の方でもちゃんと連絡をくれる。最近決まった工事の中にも、2008年に最初に工事した方からのご依頼がありします。
こうして蓄積されていくことが、とてもありがたいんです。
ファンクラブ会員証もちゃんとあり、工事後に置いていきます。電話の近くにかけておけるように紐をつけて。
お客さまに「会費は無料だし、ポイントもたまっているようだし、何かあったら田端くんに頼めばいいかな」と思っていただければ、それで十分選ばれる条件になりますから。
塗り替えとかトイレの増設とか、窓以外のご依頼もあります。うちはリフォーム屋さんではないのですが、ティースリークラブのメンバーとして「どうしたらいい?」って頼ってくれるんですね。
そんなときは窓口となり、ペンキ屋さんでも左官屋さんでも電気屋さんでも、仲間うちに話を振って、やってもらっています。
最近では本業よりそっちの方が多いんちゃう? って思うほど(笑)
5年後の会社は窓専門、一番窓際の職種。窓っていうと田端くんのところがあったね、と言っていただけることが、最終的にめざすところです。
リフォーム屋さんにはならず、でもお客さまからのご依頼がある仕事の窓口はすべてやっていきます。
他業種の仲間との横のつながりでひとつのワークチームがつくれるので、それを重視していきたいですね。
会社が小さくて総合化できないから。スタッフがいないので、総合リフォーム屋さんにはなれないと思います。やはり専門店でないと。
僕のビジネスプランでは、社員さん5人以上には大きくならないんです。一般のお客さまの満足度を追求できる仕事を選ぶなんて偉そうなこと言っていたら、5人が精一杯(笑)
人数は別として、やはりやりたい仕事がやれるのはいいことだし、選ばれる会社でなければできないですから、今はその種まきをしている状況でしょうか。
ベストな提案をしてお客さまの悩みを解決し、ありがとうと言っていただくこと。それがすべてです。
<代わりがきく仕事>が、いやなんです。
窓やサッシの仕事をするだけなら、商品は同じですから僕でなくてもやれます。「別にお前じゃなくてもいいよ」と言われちゃう、それはいやだなあと。だから提案し、付加価値をつける。
勝手な、まったくの片思いなんですが、ティースリークラブの会員をはじめとするお客さまに対して「僕がいないと、この人たちが困る」と考えているんですね。
この思いが僕を支えています。もし僕が仕事を辞めたり会社がなくなってしまったら困るなあ、と言ってくれる方をひとりでもふたりでも増やしたい。
極端なことを言えば、たまたま窓屋なだけで、もしお客さまの困りごとが「おいしいお寿司屋さんを知りたいんだけど」だとしたらお勧めのお寿司屋さんを紹介できる、それでいいんです。
さすがにお寿司については誰も聞いてきませんけど(笑)
とりあえず何か家のことで困ったときに真っ先に相談してみようと思ってもらえる、「困った時にはあいつがおる」といつも言ってもらえるようになる。それが僕の、そして会社の存在意義だと思っています。