下浦玲子(しもうら・れいこ)
1945年千葉県生まれ。東京都職員を経て、1984年に家族と共に北海道・十勝に移住、翌85年(株)下浦ハウス立ち上げ。以来、営業・プランニング・財務管理・顧客の資金計画の相談まで、経営者の意思を現場に浸透させ実行する推進役として第一線を走り続ける。さらにトップの名代として多くの外部折衝も担当、会社のスポークスマンとしての役割も。
生来の明るさと気配り、さらに自ら「本州のバイタリティ」というアクティブな行動スタイルは周囲を巻き込み、常に新たな地平へと牽引する。趣味は短歌。「せせらぎもやがて大河となることを我は信じて今日も生きなん」の一首に、企業人としてのぶれない姿勢と覚悟とがにじむ。
十勝は夫の故郷です。以前は東京で別の仕事をしていましたが、義理の兄が亡くなり、両親の希望もあって帰ってきました。
同じ仕事をするなら、十勝の人と喜びを分かちあえることをしよう。そう考えたとき、衣食住の中でも人の心の育ちに大きく影響する「家」の世界へと、入っていきたいと思ったのです。
その準備として、会社設立前の3ヶ月間、高級婦人服のブティックで販売の仕事をしました。なぜかというと、この土地の女性のことを知りたかったから。
家って、女性の存在がすごく大事ですよね。女性が太陽みたいに輝いていなかったら、やっぱりいい方向には進まないと思ったんです。明るく元気に家づくりに邁進するために、働かせていただいたという感じ。
その後、同じように3ヶ月間、建築会社で営業を学んだ夫と共に下浦ハウスを立ち上げました。
そうですね。十勝は寒いですから、とにかく結露の出ない工法を、と探しまくりました。そして<エアサイクル工法>にめぐり会い、その後はずっとこれしかやっていません。
地域の気候風土を大切にできることと、太陽・地熱・人間の発する熱まで取り込むパッシブなシステムであることが、とても魅力的な工法です。
エアサイクル工法の中でも「十勝型」というか、うんと寒い地域向けの家です。コストよりもまず暖かい家にすることを基本に、手間を惜しまずにつくっています。
対象エリアは十勝全域で、二世帯・三世帯・四世帯も珍しくありません。キッチンふたつ、トイレが3つ、玄関も3つ、という規模の家にもなってきます。
それでも省エネルギーであること。ここではそれが大事なんですよ。
会社を興す時点から、窓のことはきわめて神経質にとらえていました。十勝は冬は寒いですし、夏はめっぽう暑いですから、一番弱い部分は窓なんです。
なので、最初から全部の窓にアルゴンガス層12ミリのLow-E 複層ガラスを入れた樹脂サッシを使いました。扉は断熱ドアです。
この土地では、それが当たり前だと思ったのです。でも周囲は誰も使っていなくて、仲間からもずいぶん笑われました。高いですからね。
窓のことは、会社設立時からお世話になっているガラス問屋さんに相談していました。特注の内窓サッシを作っていただいたこともあります。
いろいろ悩み続けていたとき「こういう窓があるんですよ」とトリプル真空ガラスのことを教えていただき、躊躇なく「それでいきましょう」と。
今は、熱の取り込みを重視したい南の窓は通常のLow-Eガラス、それ以外の窓はトリプル真空ガラス、が基本です。
私たちは、無数の会社がある中で選んでくださったお客さまから、お金の使い方もゆだねられているんですね。だとしたら、たとえ高価であっても家そのものにたくさんお金を使わなければ、それも大事に。
そんな考え方をしています。
はい、大切にしています。毎年7月から、8月だけ除いて12月くらいまで、毎週土日で展示会をさせていただいています。
ここ数年は、住宅についてすごく勉強しておられるお客さまがインターネットで検索して、来てくださいます。私たちが言っていることとやっていることがイコールなのかを、確かめにきてくださるんですね。
それに応えるために、構造のミニチュアモデルを作って展示会場に置いたり、床に強化ガラスを張って床下まで全部見ていただく、といったこともしています。
来られた方には、まず「居住空間はどうですか」と声をかけます。その後に器材関係、とくに「暖房器具はどれだけありますか」と。
あまりにも数が少なくて、皆さんびっくりされています。
やはり十勝の家は「どれだけ燃費がかかるか」が勝負ですから。そして室内での温度差がないこと、イコール結露が出ないことを念頭におくのが、私たちの家づくりです。
壁の中にある空気層を自然対流する空気が建物内の温度や湿度を調整し、室内どこでも極端な温度差ができずに乾燥を保てるので、結露やカビも発生しづらいんですよ。
展示会にいらっしゃるお客さまは工法も建材もデザインもよく勉強されていて、この工法の良さがバッチリ伝わります(笑)ありがたいですね。
お正月に、ローカルのテレビと新聞で年始の挨拶をし、年賀状やメールを出します。あとはHPくらいですね。
私たちの基本は「面談営業」。担当者の人となりと工法とを両輪で買っていただき、お客さまと家づくりの喜びを分かち合いながら成功する…それが仕事の基本だと思っています。