Builder’s Voice 工務店・ガラス店の声

チームで仕事する喜びを求めて(前編)

海野昌人(うんの・まさと)
1976年生まれ。経営者を志し、大学卒業後リフォーム会社に3年間籍を置くことで営業力を鍛える。2004年家業であるアルミ建材店の一般向け窓部門として窓工房を開設。2007年ひのまるチェーン東京支部スペーシア大賞敢闘賞、2008年真空ガラス拡販部門感謝状受賞、2009年リグラスカップ総合部門全国10位、真空ガラス拡販部門感謝状受賞。 一貫して「エンドユーザーを相手に直接売る」スタンスを取り、またエクステリアなど他のアルミ建材を扱わない「窓に特化した経営方針」でも知られる。控えめなたたずまいと穏やかな語り口の奥に通底する、強く静かな意志が印象的。防犯設備士・気象予報士


言葉で、文で、思いを伝えたい

2005年から丸3年間、お客さまに毎月欠かさず送り続けたというfaxニュースレター。力のこもった手書き文字に「伝えたい思い」がにじむ。目下、これに替わる新たな顧客向け媒体を企画中。

――同業者の集まりから定時制の高等学校まで、さまざまな場所でエコガラスに関する講演をしていらっしゃいます。

人前で話す機会はなかなかないので、勉強のつもりでやっています。
普通、30分も話を聴いてもらえることってないですよね、結婚式のスピーチだって誰も聴いていないし。
でも、こういったお題があればある程度は聴いてくれる。だからそういう場には、多少苦痛であってもチャンスがあれば出てきました。

――苦痛、なんですか?

話すのが得意じゃないからドキドキですよ(笑)でも、商売とか売上とは別の部分で、僕自身の言葉でエコガラスのことを伝えてみたいという気持ちがあります。
それに加えて経営者である以上、話をして思いを伝える力はやはりつけておきたいと思うし。

もうひとつ、文章を書けるようになりたいです。

今はウェブサイトでもメールでも、文を書くことがまさに仕事の一部になっているでしょう? 僕はどちらかというと理系で文はダメなんですが、下手くそなりに伝わり、説得できる文を書けるようになりたいな。

文で説得する・させるのは、話すことと同じくらい大切だと思うので、コツコツ学び続けて、自分を成長させていきたいと思っています。

――直接話すときは「説明」のスタンス、間接的で押し付けにならずにすむ文章の場合には「説得」を試みる姿勢ですね。どちらにせよ「相手に伝えること」を、とても大切に考えておられると。

うまくはないけれど思いを伝えられる、そんな文が書きたいなあって思うんですよ。


人材採用・スタッフ教育に力を注ぐ

「採用では『雇ってやる』というスタンスはダメ。仕事だけさせて自分は経費で左ハンドルの車を買うとか、そういったことは今後もしないと思います」 きれいに整頓された事務所1階の工場。ガラス施工技能士等の資格取得にはとくにこだわらず、技術力・営業力ともバランスのとれた人材育成をめざす。

――日頃の業務で難しいと感じられるのはどんなことですか。

スタッフの採用ですね。お仕事をいただく以上に大変なことだと感じる面もあります。
縁故などでない限り、うちくらいの規模の会社が普通に募集して、すんなりいい人が入ってくると考える方がおかしいんじゃないかと思うんです。
世の中には百年も続いている会社や、都会の真ん中にあって福利厚生も充実している会社がたくさんあるし、僕だったらそっちに行きますもん(笑)

そんな中で人材を求めることは、製品を売ることと同じではないでしょうか。お客さまにこちらの情報を全部出したうえで僕らを気に入ってくれれば「窓工房にお任せしたい」とご注文いただける。買いたい気持ちも固まらないうちから無理にラブコールしては、押し売りになるだけです。

採用も同じだと思っています。
「うちはこういうスタンスで、残業もあるし冬はあまり休みがない、けれど今は発展途上で、こういう理念のもとで会社を発展させたいし、こんないいこともあるんだよ」とちゃんと話します。
今の社員さんはみんな、この「発展途上」というスタンスだから来た、と言ってくれる人たち。だから一緒に仕事をしていてすごく楽しいですね。

――中途採用以外に、若い人を一から育てていこうといったお考えは?

ありますよ! とくに即戦力を求めているわけではないので。
例えば、仕事はできるけどちょっと性格が難しい(笑)職人さんと、まだ若くて戦力になるのはまあ1年後かな、という人だったら、絶対に若い人と一緒に仕事がしたい。

――そうなると、定時制高校の講演会もやりがいがありますね。

その通りです、高校生との接点なんてまったくないので、これは面白いなと。
みんな昼間は仕事している人たちだから、講演中にきっと寝るだろうなあと思っていたら案の定寝てました(笑)でも2回目も呼んでもらえたし、こちらも接点を持ちたいという気持ちはありますね。

――現在おられる社員の方の業務は、営業担当・工事担当と分けていますか。

多い少ないはありますが、どちらか専門というのはありません。工事をする人も打ち合わせにいくし、みんなどちらもできるようにどんどん現場に行かせています。

一般のお客さまにとって、工事に誰が来るのかは不安ですよね。だから「技術さえ持っていればいい」という感覚はありません。
腕はあるけどぶっきらぼうで「職人ですから」は通用しない、普通に挨拶できて話ができないと困ると思います。その一方で工事ができることは営業にも有利なので、営業業務が多めのスタッフでも工事の8割程度はこなせる技術を身につけています。

扱っている商材が少ないですから、原則なんでもできるようにしたいですね。工事が多い人も普通に電話を受けて説明できるようにね。


大事な仲間と、1人ではできない仕事を

下請けで仕事を受けることは考えない。「集客力と技術力の両輪を常に磨いていきたい」という独立独歩の志向と、明るく楽しいと社員が絶賛する職場の雰囲気づくりの共存。この人柄がスタッフの結束をより固くする。

――お仕事をしていく中で大切にされていることはなんでしょう。

お客さまももちろんですが、一番大切にしたいのは社員さんかな。
とはいっても、難しくてもかなえてあげたいと思うお客さまの要望もあるので、そんなときには社員さんに無理をお願いすることもあります。

経営者に憧れたのはたぶん、本田宗一郎や藤沢武夫のように、理念を持って会社を経営する姿、生きている姿をカッコいいと思ったからなんです。
そして今ようやく、少しずつ人を集めて仲間を増やせるようになってきた。1人ではなくチームで協力し合って仕事をする喜びがあります。いつも先を見て、踏ん張ってやっていける。

――常に適正価格でエコガラスを売る御社の手法も、その姿勢を支えているのでは? 無理な安売りなどせず、スタッフを守りながら仕事ができるという面で。

うん、エコガラスにはそういう力があると思います、本当に。

がんばってやってくれる仲間は、絆を大切にして守りたいし、守れるだけの力を会社につけたいです。
例えば異業種の社長さんと会う機会があればできる範囲で連れていったり、成長するために会社で用意できることは、やっていきたいですね。


取材日:2012年8月3日
聞き手:二階幸恵
撮影:渡辺洋司(わたなべスタジオ)
窓工房
窓工房
東京都青梅市
社員数 5名
業務内容/窓ガラスの結露防止・断熱・防音の各工事・リフォーム・販売

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