伊藤 健一(いとう・けんいち)
1962年生まれ。高等学校卒業後、名古屋市内のガラス工事会社で修行し、1983年より伊藤硝子代表。2015年~2017年、AGCいいまどショップリグラスプラチナステータス認定。2017年AGCリグラスカップ販売店の部総合部門第2位、同ガラス交換部門中部エリア第2位、同まどまど部門中部エリア第1位。
他がしないこと、できないことをやるという信念の下、常に先頭を切って汗をかく。人なつこい笑顔と明快でユーモアあふれる話しぶりは誰にも愛され、仕事に対する真摯な姿勢と相まってダイナミックに周囲を巻き込み、中部エリアの雄としてメーカー内で知られる存在。
仕事外ではグルメの顔を持ち、ワインに対する造詣も深い。食を通じてのネットワークも全国に広がっている。自称“ノムリエ”
名古屋のガラス工事会社で修行している最中に、父の体が思わしくなくなって戻り、そのまま実質的な代表になりました。
その後、仕事をガラス修理・交換に特化。修業先を出る時に何軒かの工務店を紹介すると言っていただいたのですが、それも断りました。
ゼネコンであれ工務店であれ、下請けの仕事をする気がなかったからです。
それから20年間、年間3000件の仕事をひとりで回しました。台風のときなんかは一日40件をこなしたり。
こんなこと普通ですよ(笑)やるなら中部でトップにならなければ意味がない、という気持ちでしたね。
マンションの管理会社さんや管理組合さんから受注しています。
改修を請け負うゼネコンの下請けで入るのではなく、一次下請けまたは元請けで。対等な立場で仕事をしています。
ゼネコンの下請けでは工事の内容を知らないままで現場に行くので、トラブルが少なくありません。
そんなとき、たまたま業務の最初から仕事できる機会があり、工事内容がわかった上での作業が評価されました。そこから広がって、今はマンショントップ企業のうち8割の会社の管理会社さんと直接取引しています。
住民の依頼を受けた管理会社さんから話が来ることもあるし、こちらから仕掛けることもあります。
管理組合さんの予算が基本にあるので、それを念頭に“目に見える改修”を提案しますね。
設備の錆落としや外壁を少々直すといった一般的な大規模改修と比べて、窓のエコリフォームは結露がなくなったり室内が暖かくなったり、住まい手が直接感じることができるという意味です。
住民の方々から希望をうかがい、それにあった建材や施工方法をこちらから提案するのが通常です。
その後の管理組合理事会さんによる議案づくりから説明会、工事、最後の補助金申請まで、全部やりますよ。
住民説明会ではオリジナルの資料やエコガラス体験デモ機を持参し、出てくる質問すべてにその場で答えます。質問には住民の不安や疑念が全部入っていますから、即答することで信頼していただけるんです。
“何のために改修するのか”をきちんと説明するのが大事。とくに高齢者の方は、室内が快適になると知れば「それいいね」と言ってくれますよ(笑)
それに加えて、質問にならないくらいの小さな声を聞き逃さずに、あとからでもきちんと説明すること。ご理解いただくには大切です。
常に“一番いいもの”をお勧めします。もちろん理由もちゃんと言いますよ。「安いものとはつくりが違います。あとからわかってきますから」とね。
費用が上がると言われたら、工期を短くして効率的に作業をすることで吸収します。そのために、現場の協力体制をしっかりつくっているんです。
仕事は短工期が基本。機動性重視です。
職人15人で、250戸のマンション改修を27日間で完了したこともありますよ。そのときは職人の親方が「社長、無理です」と言うのに「違う。やるんだよ」と返していました(笑)
職人さんは弊社の宝です。だから人工は絶対にケチらない。
現場ではとにかく「声を出そう」と言います。自然に話していれば何かあった時にもすぐに声がけして危険回避できますから。ときには冗談を交えたりするのも大事。みんなで“楽しく無駄なく”仕事をしています。若い子も多いし。
採寸は僕が全部やります。各住戸を回っての日程調整も。築30年くらいのマンションになると、同じはずの寸法がなぜか少しずつ違っているといったトラップもありますが(笑)
工程や段取り、近隣対策、補助金申請も僕の仕事です。
ないですよ。上に立つ者は失敗できない、これだけやるのが当たり前だと思っていますから。
こういう仕事の仕方は楽しいですよ。
社員や職人さんと一緒に、食事会という名の反省会を毎月開きます。飲んで、話して、わかりあえることもあるでしょう?
自分が今までやってきたことを、次の世代にいかに上手く伝えるかが、僕にとっての大事な仕事であり課題だと思っています。
僕はやれても他の人には難しいこともあるだろうし、反対に自分がやれないことをできる人がいるかもしれない。
伝えていく方法も自分なりに考えていかないと。
自分自身のこれからですか? プロとして楽しく安全にやっていきたいですね。
お客さまにはいつも「あれやって、これやって」とガラス以外のこともいろいろ言っていただくんですが、いつも「できません、ガラス屋なんで」(笑)
本当のガラスのプロになるべき。それを究めていくべきだと思っています。