吉岡長行(よしおか・ながゆき)
1946年生まれ。父の経営するガラス店に入社し、1988年、兄の独立にともない代表取締役に就任。現在に至る。2009年、エコガラスの内窓を採用した住宅リフォーム案件が、東京都の選定による既存住宅の省エネリフォーム優良事例に選出。リグラスゴールドステイタス認定店。
顧客への細やかな気配りに定評があるほか、相手の立場に立ち誠実を旨とする仕事ぶりで多くの建設業者・職人との信頼関係・ネットワークを獲得。既存の枠にとらわれず、現場を見た上で求められる技術・部材を考え、自ら創作するアイディアマンの顔も。二級建築施工管理技士、宅地建物取引主任者
この道に入って、もう50年くらいです。
入社から10年ほどでアメリカからアルミサッシが導入され、日本の住宅にサッシが使われるようになりました。それまで新築一棟の売上が1万2千円くらいだったのが、玄関やバルコニーまでアルミが使われて、一棟100万円に。それを年間100棟200棟やっていた時期もありました。
いい仕事をきちんと丁寧にやる。それが第一です。
10年後にまた仕事を依頼してくれたり、廃業前に仕事を頼んでおきたいと言ってくださるお客さまもいます。そんな方がおられるからいい加減な仕事はできない、今後も体力が続く限りやろうと思っています。
現場では寸法やおさまりや通りを見ることが重要と考えています。
アルミやステンレスの直線定規を自分で30本くらいつくっていて、これをあてると窓の反りがわかる。開口部に合わせて現場に何本か持っていきます。
お客さまから「こんなに丁寧に寸法を測る人はいなかった」と言っていただいたこともあります。見ていないようで見ておられるんですね。
安全面や使い勝手にも配慮しなければいけません。
寒いとおっしゃるのはお年寄りの方が多いですが、二重窓はすごく重いので、使いやすいものでないと。家にいるのはまず女性、それからお年寄りですから。
仕事にこだわりがあって、自分でも困るんですよ(笑)
なんでもまず自分でやる。できないというと仕事がなくなるのでできることを考えて、そのためにどうしたらいいかな、と。
手間がかかるけれど、その分だけ仕事はうまくいくんですね。
この通称は、20年ほど前からです。
サッシの取替工事をさせていただいたお客さまのご縁で、お友達のお宅のキッチンリフォームを依頼されたとき、ご主人から「お宅はガラス屋さんなの?」と言われて、これはまずいなと(笑)
今の仕事は、工務店やリフォーム会社にサッシを売ること、インターネット経由での機能ガラスなどの受注販売、3本目がリフォーム工事の請負。
最初はガラス修繕を依頼されたお客さまにサッシ取替を提案するなど小さく始めて、今ではトイレやシステムキッチンのリフォーム、バスルーム工事、屋根・壁の塗装など、全般的なリフォーム工事も請け負います。この仕事をたくさんやりたいと考えています。
サッシ屋としての仕事だけでは心もとない、もっといろんな仕事をさせていただきたいと思ったのです。
30年40年と建築会社にサッシをおさめてきて『下請けはばかばかしい、元請けにならなきゃいけない』と常に思ってきました。下請けでは、いい仕事をしても上がるのは工務店の評判だけです。元請けになれば評価がじかに入ってくるし信用もつく、リピートもある。やりがいもあります。
下請けからの脱皮をめざし、リフォームを始めました。
大工さんの仕事ぶりを見て『僕の方がうまくできる』と思った面もあります。
つきあう大工さんの中には、仕事がルーズだったり約束を守らなかったり、見積はいいかげんで現場もやりっぱなし、そんな人もいました。
自分が工事するときはお客さまの立場に立ってしっかり打合せし、現場は汚れないように養生し、手抜きしないで一生懸命仕事して、終わったらきちんと掃除する。そうすることでお客さまが信用してくださり、何かあったらと言ってもらえることが増えたんです。
極端に言うと、ガラス屋というのはえらい商売だなあ、と(笑)
例えば昔、新築マンション向けにガラスを見積もったとき「ガラスなんて、叩けばいくらでも安くなるんだ」と言った現場監督がいたんですよ。そして仕事は結局来なかった。いい思い出ではないですね。
ガラス屋さんというのは、なにか安値で当たり前だと思っている人が多いんです。自分の仕事に自尊心がない。私は面子つぶされるなら仕事なんかいらない(笑)そういった気持ちでやっていますが。
大手は別として、いわゆる街のガラス販売店はあまりガラスにこだわってはいけないんじゃないかと。
窓から発展し、なんでもチャレンジして請け負うような商売の方向にもっていけないと、だんだんすたれていっちゃうと思います。
そうでないと、窓がなくなったら生きていけない。ガラスやサッシだけにこだわっていたら、うちの店ももうなかったと思います。
木工事・設計・重機・タイル・土木・生コン・ブロック・左官・建具・産廃・避難ハッチまで、私には協力してくれるプロの職人さんが100以上もいるんですよ。
そういう人たちといつでも頼めるつながりを持って、受注したら依頼します。
これだけの業者を揃えるのは本当に大変です。しかも約束を守り、仕事をきちんとやってくれ、人柄のいい人でないと(笑)
10年20年かけて少しずつ横のつながりを増やしてきました。いい職人さんと出会うよう、常に努力してきたんですね。
すべて自分の責任ですから、できるだけ丸投げにはせず、わからなくても現場に飛んでいきます。自分ではやらなくても、段取りよく采配を振れば仕事できるのがリフォーム工事のいいところですね。
建築の世界には、わからないことが山ほどあります。そんなときはわからないままにするのでなく、人に聞いて教えてもらう。わからないのは恥ずかしいことではないし、きちんとした工事をすることがお客さまにとって重要なことなのですから。
人の仕事は大変ですが、場数を踏めばわかってきます。
大切なのは、良い職人さんとたくさん知り合うこと、元請けとして責任を持って管理すること。お客さまからの信頼もそれで厚くなります。そのためには普段から誠実だったり、約束を守ったり、支払いをきれいにしたり、努力して認めてもらうことが重要です。やる人の気持ちになって、迷惑をかけないように、ということでしょうか。
長年やってきて思うのは「細かい仕事は細かい仕事をやる人に来やすい」ということなんです。
お客さまは連想するんですよ。「戸車やサッシのカギの修繕などの細かい仕事を頼むならこのお店。でも玄関ドアのリフォームはここではない」と。
小さいことでも面倒を見ていれば必ずいいことがあるんじゃないかと思って商売をやってきました。でも大きい仕事となるとよそに行かれてしまうのはやはり悔しい。小さい仕事も大事にしながら、大きな仕事をめざしていきたいのです。
複層ガラスの登場で、ガラス業界の仕事の形態はびっくりするほど変わってしまった気がしています。
だから窓屋として生き残るために他の業種にどんどん進出する。一生懸命努力すれば、信用はもらえます。やる気さえあればけっこうできる、そうじゃないかな(笑)