Builder’s Voice 工務店・ガラス店の声

めざすは窓のスーパーマン(前編)

小酒井 善久(こざかい・よしひさ)
1979年生まれ。1級ガラス施工技能士。
八幡ガラス二代目として2005年より地域向けイベント開催やリサイクルガラス活動等、新機軸を次々に打ち出す。2010年、AGCリグラスカップペヤプラス交換工事部門西日本エリア4位入賞。地元・郡上八幡を愛し、ブログその他ではことあるごとにその魅力をアピール。郡上の子どもたちの通過儀礼として有名な吉田川飛び込みを若干10才でクリアした猛者にして、比類なき愛妻家でもある。


うちの仕事をわかってほしい。イベントや展示で一般向けに積極アピール

小酒井商事は、祖父の代から郡上の地で営む陶器店と、小酒井さんの父・良平さんが1979年に立ち上げた八幡ガラスとの2業態で経営。「ガラスの修繕のほかに窓まわりとエクステリア関係に力を入れています」
以前はサッシの在庫を並べていたというショーウインドー。「たまに小学生も見てくれていて、やってよかったと思います」
感謝祭の風景。「大工さんが端材をくれたり、パン屋さんが時間に合わせてメロンパンを焼いてくれたりと、近所の方々が協力してくださるんです」(写真提供:八幡ガラス)
感謝祭ではクラフト体験コーナーも。懇意にしているガラス工芸作家との協働で、来店した人に楽しんでもらえる企画を毎年練る。かわいいカードスタンドは板ガラスの端材を使った作品のひとつ。

――「八幡ガラス感謝祭」と銘打ったイベント開催をはじめ、地元意識に基づくお仕事のPRに積極的に取り組んでいらっしゃいます。

2002年に会社を手伝い始めました。入社当時は新築関連が主でしたが、3年目あたりからは言われたことをやるだけでは面白くなくて…。自分からやる仕事があればいいなあ、と悩んでいました。

そんなとき、住宅の外装リフォームの研修に誘われたんです。
ちょっとした仕事でも一般のお客さまは喜んでくれるのが楽しかったし、建築屋さんからの仕事でなく自分で全部担当できたらやりがいがあるだろうな、と考えて参加しました。そこから変わってきましたね。

―― 一般の方向けに新しいことを始めたのですね。

お店正面のショーウインドーを変えることから始めました。きっかけは、あるお客さまに「八幡ガラスさんってガラスの修繕だけでよく生活していけるね」と言われたこと(笑)ガラスしかやっていないイメージが強いんですよ。

そこで、現場にデジカメを持ちこんで工事の前と後を撮り、施工例として展示しました。そうすれば「玄関の取替もカーポートもできるんだ、なら頼んでみよう」と思っていただけるだろうと。

現場から帰ってきて、散歩している方が見ているとうれしいですよ。そうやって見てもらえる魅力ある展示について、日々考えています。

――時を同じくして感謝祭も始められました。年1回、会場はお店のスペースですね。

地域の人に来てもらい、うちの仕事を知っていただくためのイベントです。
「こんなサッシがあるのか」と知り、数年後にリフォームを考えたとき「そういえば八幡ガラスでこんな窓を見たなあ」と思い出してもらえるような。
同時に、窓のリフォームなら工務店さん経由でなくガラス屋さんが直接できることもPRしていかなければと思っています。

それに、来てくれた人にはやっぱり楽しんでもらわないとね。2010年で5回目ですが、徐々によくなっています。オリジナルのチラシも作り始めて、感謝祭はいろいろ考える良いきっかけになりました。


結露と寒さが際立つ土地だから、提案の基本はエコガラス



エコポイントの影響もあり、郡上の窓の基準も複層ガラスからLow-Eガラスに変わってきているという。

――エコガラスを積極的に扱うようになったのはいつですか。

僕が帰ってきてからだと思います。それまでは工務店さんから依頼されるガラス交換程度で、内窓の取付けもほとんどありませんでした。

郡上市は盆地で、雪が多く結露がすごいですが、工務店さんもお客さまも複層ガラスの窓なら結露しないと思っている人が多い。新築の家に行くと、住まい手の方に「複層なのになんで結露するの?」と聞かれるんです。

感謝祭は毎年11月、寒くなって結露もひどくなるこの時期にエコガラスの良さを知っていただく機会も兼ねています。
水まわりや壁、屋根の断熱材にこだわる人は多いのに、なぜか窓は工務店さんにまかせておけばいいと思っていた(笑)という方が多いので、もっと窓に興味を持ってもらうことは目標ですね。

――窓リフォームの依頼には、まずエコガラスを提案する?

現場を見て、予算とお客さまのご要望を考慮しますが、せっかく換えるので複層ガラスは提案しません。ちょっとしたことで効果が倍になるいいものがあるなら、それをお勧めして当然だと思います。

郡上はIII地域で、ガラス交換がエコポイントの対象にならないんですよ。でも頻繁に出入りする箇所とか、お客さまの状況や要望に合わないと思うときには、ポイントがつかなくてもガラス交換を提案しました。お客さまもすごく満足してくれますし。

――ポイント以上に、お客さまにとって最善のものをお勧めする、というスタンスですね。


人としてお客さまに親身になる。それが当たり前で大切

お客さまにとっての見やすさを第一に考え、オリジナルの資料やチラシづくりにも力を入れる。「他社の面白い広告を集めて研究していますよ」
どんなに小さいことでも嫌な顔をせず聞くことに心を砕く。めざすのはディズニーランドのキャストの笑顔。「そうすることで、うちのファンになってくれている方も多いのでは」

――工務店さんからのお仕事以外で、営業はどのように?

インターネットでの注文も少しありますが、基本は地元重視。近所でエコリフォームすると「どこでやったの? 小酒井さんとこやったら私も頼みたい、ついでに電話しておいて」となる。そういうのが郡上って強いんですよ。

お客さまと話す頻度が高いと仲良くなるじゃないですか。その方が友達に「八幡ガラスさんに頼んで、あそこの息子さんにやってもらったんやで」と言い、それでうちには「息子さんに来てほしい」と電話がかかってきたりして(笑)
すごくやりがいがある、こんなに楽しいことはないですよね。

――いわゆる口コミがメインだと。ある意味、最も信頼度が高い情報なのでしょうね。

現場でも「野菜できたから持っていって食べて」とか、集金に行ったら「ちょっと飲んでいかん? 飲まんとお金払わんよ」とまで言われる。本当にありがたいです。家に上げてくれるくらい、僕に安心してくれているということですから。

自転車でふいにお店に相談に来られる方もいます。「サッシ換えるんやけど、どんなもんがあるやね」とか聞いてくれる。リフォームは警戒されやすくて集客が難しいのに、うちはお客さんが入りやすいお店で、それはすごく重要だ思います。

――地元の方に本当にかわいがられているんですね。これだけの信頼を得るには何か要因があるのでは。どのようなお仕事を心がけておられますか。

そうですね、郡上で下手な仕事はできないです。

何気ないこと、ちょっとした鍵の修理でも、来てほしいと言われたらできるだけすぐ行くとか、お客さまのために親身になることが、僕は人として当たり前で大切だと思うんです。
そのときはたいしたことでなくても、あとから「小酒井くんにこうしてもらったんで、今度娘が家を建てるときにサッシ全部を頼みたい」なんて言ってもらえる。 金額も大切ですが「この人なら仕事を頼みたい」と思っていただけることこそが重要だと思っています。

それから、お客さまの名前を覚えますね。なかなか難しいですが、次にお会いしたとき「○○さん」と呼びかけると、私の名前を覚えとってくれたの、と喜んでくれる。やっぱり重要だと思っています。

妻には「おばさんキラー」なんて言われていますが(笑)


取材・文:二階幸恵
撮影:渡辺洋司(わたなべスタジオ)
(有) 小酒井商事 八幡ガラス
有限会社 小酒井商事 八幡ガラス
岐阜県郡上市
社員数 3名
業務内容/玄関・勝手口・サッシ取替、雨戸・シャッター・テラス・カーポート・フェンス等工事、網戸の作成・張替、エコガラス・防犯ガラス・内窓工事 等

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