Builder’s Voice 工務店・ガラス店の声

高断熱住宅は本物。だからブレない(前編)

諸星 孝(もろほし・たかし)
1972年生まれ。建材会社の営業職を経て2005年に諸星硝子店入社。09年、株式会社化と同時に社長に就任。同年および2010年の2期連続で旭硝子(現AGC)ペヤプラス販売コンテスト全国3位を受賞。明るい中に気配りあふれるトークと、自称「ビビリのA型」と笑うその謙虚な人柄とで多くの顧客の信頼を集める。「今日はスーツを着ようかと思ったけど、普段の仕事のスタンスを崩すのはおかしいかなって、やっぱり作業着にしたんですよ(笑)」


修業先から家業に戻り、1年で建て直しに成功

「1年目は、スーツにネクタイでの建材問屋の営業職と、細かく小さいことまでお客さまと一緒にやるガラス屋さんの仕事とにすごくギャップがあって、新たな発見やストレスに一生懸命順応していました(笑)」
住宅のほかに工場内部の改修なども手がけるため、長い材料や大掛かりな機械にも対応できる大きな工場設備を持っている。

――11年に及ぶ建材会社での修行を経て家業に戻り、建て直しに取り組まれましたね。

当時はかなり仕事が減ってしまっていて、父に「戻らなくていいよ」と言われたんです。でもやってきたことを無駄にしたくなかったので、話し合って1年間だけやってみることになりました。

それからは必死でした。「あいつ戻ってやっぱり失敗したな」と前の仕事仲間や先輩に言われるのは悔しかったし(笑)一生懸命やって、業績はVの字といっていいくらい持ち直しました。やる気に満ちあふれていましたね。

――たった1年でのV字回復は簡単ではないはず。何か秘訣が?

父の代からのお客さまのほか、修業時代におつき合いのあった工務店さんを数社、のれん分けしていただいて、お世話になりました。でも、それだけではないんです。建設会社さん以外の、設備屋さんや塗装屋さんからご紹介いただく受注がとても多くなりました。

ちょうどその頃から、僕らガラス屋さんと同様の業種の方々がそれぞれに危機感を持ち、自身で仕事を取っていくスタンスになっていたんです。それにともなって横の展開が始まっていた、そういうことだと思います。


一般ユーザー向けの仕事はまだ駆け出し。真似して勉強し、やり方を探る

HPや広告は制作会社に任せきりにせず全体構成やデザイン、表現の仕方までこだわる。「小さいお店のPRはきれいにできすぎてはいけない」が持論。

――2年目からは、いろいろ「新しいこと」を始められました。

1年やって「今まで通り待っているだけでは食べていけない、こちらからお客さまを迎え入れる方法を考えなければ」と感じました。
それで、まず成功しているガラス屋さんのご商売のやり方を研究、真似してみようと思ったんです。インターネットでガラス屋さんを探し、セミナーを聞き、建材フェアに行って、出会ったガラス屋さんと交流を深めて話を聞きました。

――対エンドユーザーの仕事を増やし始めたのも、この時からですね。

一般のお客さま向けの仕事はすごく喜んでもらえるし、他のお客さまを紹介してくれたりして、いいことだらけなんですよ。この方面を伸ばしていきたいと、最初の1年ですごく感じましたね。

新築住宅の着工数が減った今、僕らのような会社が食べていける受注は実質的にもう無理です。そのとき、既存住宅のエコリフォームはすごく大きなメリットになる。
でも一般売りはまだ売上全体の1割もないくらいで、これからなんです。

そんな駆け出しですから、一般売りで成功しているガラス屋さんをとにかく真似して勉強しました。そして「悩み追求型」の方法でやってみようと。

――それはどういったものですか?

HPでも広告でも、結露や寒さなど「窓のお悩み」をまず最初に並べるんです。目にした方に悩みがあれば「うちの状態もこうだ、解決するのかなあ」と、その後に書いてある商品説明を見たり、電話をかけたりするでしょう? そんな形でお迎えできるお客さまが必ずいるだろう、と考えました。

ガラスは割れなければ使えてしまうので、とくに換えなくてもいい、いわば「嗜好品」に近いものだと僕は思っています。でも、悩んでおられる方は換えるんですよね。それが僕の探しているお客さまなんです。

抱えた悩みをお聞きし、中学生にもわかる話し方でご説明します。ときにはお客さまの質問を先回りしてお話していることもあるかもしれません。プロだから「わかりません」とはもちろん言えないし。

――「悩み追求型」は、その根底にお客さまの状況や気持ちへの思いやりが欠かせない方法なんですね。


これでもかと思うほどお客さまに尽くす、それが商売人

「インターネットが普及しても、僕のやり方はやっぱりアナログ的なface to faceです。やってよかったよって直接言われると、喜んでいただいているのがひしひしと伝わってきて嬉しい」

――お仕事の依頼に、すべてご自身で対応されるそうですが。

初期の電話対応から僕です。事務所にかかってくる電話は携帯電話に転送して、受付・訪問・実測・積算・取付・集金までやっています。工場・現場は従業員に任せ、営業的な部分は僕、というのが今の体制です。

とくに一般のお客さまには、商品が良い、安ければ良いということではなく、トータルできちんとした接し方をしたいんですね。そうでなければだめだ、という考えがあります。

――修業時代に培われた営業の経験に基づくお考えなのでしょうね。それにしてもすべておひとりでは大変では?

自分で始めて自分で終わりにする、そういう達成感ややりがい、充実感はすごくあります。でも万一僕が倒れたら会社が大変ですから、将来的には僕の考え方に賛同してくれる、営業に堪能な人材も欲しいですね。

「お客さまとのご縁を大切にする」というのが、僕の中では一番なんです。だからお客さまが嬉しくなることを存分にやる、これでもかと思うほど相手に尽くす。そこをベースに持っていなければ、商売人ってだめなんじゃないでしょうか。

――お客さまとの接し方へのこだわりも、そんな気持ちから。

修業時代の僕は、月2500万とか目標を立てて「モノ」を売っていました。でも家業に戻って感じたのは、ここは「モノ売り」ができない業界だということ。
お客さまを理解し、それに対してアドバイスすることで喜ばれ、商品の話はそのあとから出てきて「そういえば諸星さんのところに何かあるの? じゃあそれをちょうだい」となるんです。

価格じゃないところで商売させてもらえる、そこがやっぱり大事なのかな。コミュニケーションがまずあって、モノはあとからついてくるんじゃないでしょうか。


取材・文:二階幸恵
撮影:中谷正人
(株)諸星硝子店
株式会社 諸星硝子店
神奈川県秦野市
社員数 4名
業務内容/住宅・店舗・ビルのガラス工事、修繕/住宅のガラス・リフォーム/サッシ工事・修繕・リフォーム/フェンス・門扉・バルコニー等の販売、取付

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