Builder’s Voice 工務店・ガラス店の声

木と住宅にこだわる材木屋のDNA(後編)

小城清二郎(おぎ・せいじろう)
1953年生まれ。一級建築士。
大学建築学科を卒業後、大手不動産会社で集合住宅や戸建住宅の設計を担当。1998年、実家である大竹市の老舗材木商(株)小城六右衛門商店内に、建築設計部門としてリファインおおたけを開設。店長としてスタッフを束ねつつ自ら設計図面を引き、顧客折衝から施工監理まで全業務の先頭に立つ。「トータルにすべてを見ることで、"自分のもの"としての愛着を持てる。そんな家を提供したいという気持ちがあるんです」


暑くなる気候に合わせ、柔軟な間取りと外皮の通気・断熱を考える

「ドイツでは"家は第三の皮膚"だといいます。そう考えたら、何を使ってどうつくるかは自ずと分かりますよね」

――今年の夏も暑くなりそうですが、これからの日本の気候・環境に配慮しての家づくりをどうお考えですか。

気候的には、南の世界が日本に来たようなもの。だとすれば当然それに合うように家のつくり方も変わってきます。
たくさん日が入る南面のリビングをエアコンで冷やす、あれこそエネルギーの無駄ですよね。今からならリビングは北側でもいいんじゃないかな(笑)本当に。

逆に言えば「両方使えるような間取り」を、これからはつくらなくちゃいけないんじゃないかって思います。固定観念として日当たりのいいところにリビング、というのはもう合わない。

――工法などはどうでしょう。

基本的に僕は必ず通気を取ります、通気工法でね。
リフォームで古い家を壊すと、小舞壁の家は内部が傷んでないんですよ。水道管が錆びてボロボロになっていても壁は全然腐ってなくて。それだけ湿気の排出がうまく行っている。
今の建て方ではそれはとてもできないですが、内部結露を防ぐために通気工法は必ずやります。

加えて相当の断熱効果もあるんですね。西日がひどかった家が、通気工法の壁にしてからは暑くないと言われるのがほとんどです。断熱プラス通気・通気口が絶対必要だと思いますね。

――高断熱高気密の家、という考え方もありますが。

防水性や台風のことを考えれば、今のサッシにかなうものはないと思います。だから「気密性とは別の空気の流れ」というものですね。それを、そのつどやる。この家のケースではこう、という感じで。

――従来の考えに縛られない間取りで、エコガラスの窓が開口部の断熱・気密を担い、通気を持たせた木の壁でも面的な断熱を実現する…ここでもやはり、バランスが大切なんですね。


木に関わるものすべてをやって地元の山を守りたい

リファインおおたけの母体である小城六右衛門商店。小屋裏の迫力に圧倒される。小城さんの魂を育んだ、天然木の存在感。

――新築で手がけられるのは、木造軸組住宅のみですね。

RCで、という話もたまにあるけど、何度も話をするうちにだんだん変わっていきます(笑)

極端なことを言うと、新築でもリフォームでも木に関わるもの全てをやりたい、もともと材木屋ですから。木と住宅、家もデッキも造作材の加工も。
"材工共"で、材木を売るだけでなく組み立てる能力がないと、これからは置いていかれてしまうんですね。

――広島には「安芸佐伯杉」という県産木材もあります。

そう、地元の山の問題があるんです。広島県で一番多いのは杉材ですが、山を維持するための税金が県民1人当たり年500円かかっています。
山の活性化・メンテナンスを含めて、家のつくりの中にどうやって県産材を多用していくか、それもやっぱり材木屋の使命だと思うんですね。

――以前は国、今は広島県によって、県産材を柱や梁に使った住宅の新築・購入への助成も行われています。

これも、単純に何十万もらえるという話ではなく、国土保全といった大きな目で見ることが必要かと。そういうこともアピールしていかなきゃいけないと思っています。

――新築では常に県産材だけを使われるんですか。

すべてはまかなえないですね。たとえば梁せい36cmの梁をつくろうと思ったら、戦後に植林された木ではとれない。九州の方から持ってきたり、集成材を使うこともあります。

ただ、輸入材は使いません。北海道やヨーロッパの木材はシロアリに対する抵抗力をもっていないんですよ、もともといないから。
でもシロアリは決して害虫ではなく、環境多様性の中のひとつの要素ですからね。あれがいないと山に栄養分が行き渡らない、必要な生き物なんですよ(笑)


"田舎"で仕事をするには、生身で話す情報交換こそ不可欠

長期優良住宅にも積極的に取り組む。現在手がけている一軒は、開口部のほとんどが「遮熱Low-Eガラスです、天窓も含めて」

――地域の風土環境を思い、故郷に根ざして仕事を続けていくとき、必要なことはなんでしょう。

ここは田舎ですから情報は必要だと思います。今はインターネットもあるけれど、やはり生身で話をしないと得られない情報がある。
だから地元の建築士会の講習などもできるだけ行くようにしています。

そういうネットワークは物事を考える上で必要不可欠、すごい下地になります。リファインをやっている店同士で定期的に集まって情報交換したり。ほかに、青年会議所といった同業以外のネットワークが仕事になったりもしますね。

――会社経営という面では、これからどのようにやっていかれますか。

今後は、僕が今やっている仕事を社内の若いスタッフに任せて、今までと少し違った角度で会社全体を見たいですね。

――小城六右衛門商店の専務というお立場でありながら、リファインおおたけ店長としてずっと最前線で仕事をしてこられたから…?

僕はほとんど建築の仕事ばかりでね。本来の専務のあり方はもう少し別だと思うんだけど。
後進を育てて、そしてゆくゆくは個人で設計的なことをしたいです。65過ぎたら、それもありかなと思って(笑)


取材・文:二階幸恵
撮影:渡辺洋司(わたなべスタジオ)
リファインおおたけ
リファインおおたけ 広島県大竹市
社員数 5名
住宅の新築と増改築の設計・施工

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