五十嵐慶三(いがらし・けいぞう)
1955年生まれ。竹原屋本店代表取締役。
江戸期の北前船による海運業をルーツとし、明治時代に硝子問屋として創業した竹原屋本店を2002年より引っ張る三代目。本業のほか、エコガラス チームやまがた、山形県サッシ・ガラス協同組合、山形県地球温暖化防止活動推進員、くらしのエコアドバイザー、山形うちエコ診断員等、多くの活動団体に参画し、窓・ガラスの専門家として山形の環境・生活文化の向上に向け東奔西走する毎日。
中越地震後に行われた、避難施設への防災ガラス寄贈キャンペーンに関わったことがきっかけです。
2007年に、エコガラスを扱う地元特約店を中心に「エコガラス チームやまがた」を立ち上げ、県内の幼稚園や保育園を対象としたエコ紙芝居コンクールなどのエコ活動を始めました。
昨年、地元のサッシ・ガラス協同組合にて無償でエコガラス入りの内窓などの設置を行った蔵王第二中学校では、設置後も夏と冬の教室内の温度測定を続け、データとしてまとめるお手伝いをしています。山形版スクールニューディールのような事例になっていけばいいと思いますね。
通常の窓リフォームをしっかりやるほか、住宅の温熱環境と高齢者の健康との関わりを探る学術調査・データ解析への協力や、環境マイスターの資格保有者として「うちエコ診断士」の委嘱を受け、住宅の省エネ診断・アドバイスなどもやっています。
窓の断熱改修でお年寄りの血行がとてもよくなり、活動的になるんですよ。山形は夏暑くて冬寒いので改修後のデータが取りやすく、また高齢者も多いので全国的にも注目されている地域といえます。
2002年に三代目として会社を引き継いだ後、従来の業態でこのままやっていけるのか、非常に不安でした。
ものづくりの原点に立ち返ったとき、ただガラスをはめる工事ではなく、ガラスでしか味わえない魅力や独自の性能、本当のよさを体感してもらうことこそ大事だと気づいたんです。それをどうやってお伝えしようかと考えたとき、火がつきましたね。
もちろん、できることなら一番いいエコガラスを選んでもらいたいです。体感的にも省エネ面でも喜んでもらえる自信がありますから。
でも、話の仕方に順番があると思うんです。お客さまの悩みについて話をし、改善できる生活の仕方を伝えた上で、最終的に「エコガラスにすれば解決できる」というクロージングに持っていくための順序が。
例えばカビで困っている家では、壁紙の張り替えとかもあるけれど、まずよく換気をすればなくなる、と話します。その次に「エコガラスへの入れ換えと適切な換気でカビは解決しますよ」と。
「丸ごと完全装備型」でやるのは、僕はあまり好きじゃないんです。経済的な負担も考慮し、困りごとの要点を把握して、一番有効な生活の仕方や冷暖房方法を「窓のプロからのご提案」として打ち出し、それを会社の持ち味にしていければいいと思っています。
お役にたてる情報をまず話題として提供し、エコガラスは最後の「決め技」。
いいんですよ。たぶん買ってもらえるから(笑)
でも、買っていただく前に、お役立ち情報を提供することでエコに関心をもってもらうこと、そこから生まれるファン、仲間づくりの方が大事な気がするんです。
また、機械・工具の清掃・点検から作業工程まで、出荷品すべての基準の見直しをはかっています。品質の向上には人材の資質向上が大切。ひとり1人が会社の品質そのものでなければなりません。人、もの、すべてが「オール竹原屋本店」として出荷されるわけですから。精度の高い製品に仕上げるには、仕事への情熱と志が必要だと思います。
まだブランドになってないんです。でも、なりたい。
それにはやっぱり「人」でしょうね。スタッフみんなが常に「気づき」を持って仕事に取り組み、そこで働くこと自体がブランドになっていくぐらいになって初めて、ものへと転化されていくんだな、とすごく感じています。
先祖から受け継いだ志を高く持ち、世の人々と関わり合いながら「竹原屋本店ブランド」を作り上げていきたいですね。