-神奈川県・T邸-
立地 | 神奈川県秦野市 |
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住宅形態 | 木造2階建(1978年竣工) |
住まい手 | 夫婦 |
リフォーム工期 | 2016年11月(1日間) |
窓リフォームに 使用した主なガラス |
アタッチメント付エコガラス/ エコガラス(内窓) |
工事費用 | 約28万円(うち補助金5万円) |
利用した補助金等 | 国土交通省 平成29年度 住宅ストック循環支援事業 |
寒い季節は何よりも結露が憂鬱! という家も多いのではないでしょうか。
Tさんの住まいもそのひとつ。朝のみならず、一日に何度も拭かなければ間に合わないほどの激しい結露に、30年以上も悩み続けてきました。
「窓ガラスもカーテンもびしょびしょ。床や壁紙もカビて、夫と『これはいやだねえ』と話していました。カビたカーテンなんて汚らしいし、健康にもよくないですよね」
冬場は気温が零下にもなる土地に建つ家で、Tさんが愛用する暖房機器は石油ファンヒーターです。
「すぐ暖まるから好きなんです。エアコンは苦手だし」との言葉にうなずきながら、燃焼時に水分を出すヒーターが招く激しい結露と、住まい手のご苦労を思いました。
実は9年前、T邸は耐震から間取り変更までを含む大規模なリフォームを行っています。
けれど窓まわりはリビングの出窓を強化ガラスにしただけで、他はシングルガラスのまま。「リフォームすれば結露もなくなるだろう」という住まい手の期待もむなしく、その後も結露との戦いは続きました。
「エコガラスのことを、当時は知らなかったんです」
窓リフォームに踏み切ったのは2016年の晩秋でした。
インターネットで調べた“結露を解消する工事”を近くでやっているガラス屋さんを捜し、市内のプロショップ・諸星硝子店にたどりついたのです。
「電話をしたのは11月。その後は早くて、翌12月には工事をしてもらいました。諸星さんはこういう人柄だし、地元のお店だからいいかげんな仕事はしないだろうと思って」とTさん。
担当した諸星硝子店の諸星 孝さんも「お正月前にすっきりしたいというご希望におこたえしました」と笑顔を返しました。互いの信頼関係が見える、気のおけないやりとりです。
こうして、新年を気持ちよく迎えるための年末窓リフォームは無事終了し、T邸にエコガラスがやってきました。
リフォーム箇所は1階リビングとダイニングキッチン、そしてキッチン脇の納戸です。
諸星さんが提案したのは、窓枠は残してガラスだけ交換する方法と、既存窓の内側にもうひとつ窓をつける方法の2種類です。「それぞれメリットとデメリットがあるので、適材適所でご提案しました」
ガラスだけを換えれば、使い勝手を変えずに断熱性能を上げることができます。その一方で、古い窓枠には結露がつき続ける可能性も。
内窓の設置は断熱効果が高く、窓枠ごと断熱力が高まるので、室内の結露の心配はほぼ解消します。しかし窓自体がひとつ増えれば開け閉めの動作も2倍になり、また部屋が狭くなった感じを受ける人もいるのです。
工事箇所によっても向き不向きはあり、どちらを選ぶかは住まい手にとって考えどころといえるでしょう。
T邸のリビングは南面の掃き出し窓と、東面の出窓の二面採光。掃き出し窓は窓枠はそのままにし、ガラスだけをエコガラスに換えました。
一方、テレビ背後の出窓には、くもりタイプの強化ガラスが入っています。9年前のリフォームの際に施工者が入れてくれたというこのガラスを「換えるのはもったいないと思いました」とTさん。開け閉めもめったにしない窓で、内窓の選択も出てきます。
しかしTさんには“内窓をつけて出窓の窓台スペースが使えなくなったら困る”という気持ちがありました。
この思いをくんだ諸星さんは、内窓の位置を外窓ぎりぎりまで近づけて設置することでできるだけ多くのスペースを残す、という方法を提案します。
そして今、かつて30cmほどあった窓台の奥行きは20cm以上残り、以前と変わらずファクシミリや電話を置くスペースとして機能しています。
ダイニングキッチンへと目を移しましょう。
窓はテーブル脇の掃き出しとキッチンシンク前の引違いの2箇所です。ここは両窓ともガラスだけをエコガラスに交換し、シンク前には外から面格子も設置しました。
さらに奥にある納戸の窓も同様にガラス交換し、寝室となっている和室を除く1階居室の全開口部が、大きく断熱力を上げたのです。
リフォーム後の住まいの変化を、Tさんは満面の笑みを浮かべ「窓の結露がなくなった! 朝、カーテンを開けてびっくりしました。 全然違います」と話してくれました。
工事後も石油ファンヒーターを愛用していますが、既存の窓枠にも結露はほとんどつかない、気にならないといいます。
「全部エコガラスにすれば、もっとよくなると思います。迷っている人には、絶対やった方がいいと言いますよ。効果てきめんですから」
さほど気にならなかったという寒さの感覚にも、気づきがありました。
「寝室にしている和室は、こっちの部屋よりやっぱり寒い。寝る前に暖めてから就寝しています」引戸一枚を隔てて、エコガラス窓のある部屋とシングルガラス窓の部屋との体感の違いを、この言葉はよく伝えています。
工事にかかったお金については、どうだったのでしょう。
Tさんにうかがうと「もっとかかると思っていましたし、しかもあとから戻ってきました」
“戻ってきた”とは、補助金の交付を意味しています。T邸では国土交通省の支援事業に申請し、リフォーム金額の2割弱の補助金を受け取れることになったのです。
住宅リフォーム関連の補助金は、国や市町村がやっているものなど、実はいろいろあります。
しかしいざ申請となると、書類作成が専門的で煩雑だったり、工事と申請のタイミングが合わなかったりと、一朝一夕にいかないのが実情。
T邸リフォームの申請は、プロである諸星さんが9年前の耐震リフォームまで遡って書類を揃え、申請にこぎ着けました。
リフォーム工事の依頼先を探す際には、施工技術はもちろん、こういったマネジメント的実力を持っているかどうかも、判断材料のひとつとなるかもしれません。
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「どれくらい省エネになったのかは、正直よくわかりません。でもそれ以上に、ずっと気になり悩んでいた結露が解消されたのが嬉しいんです」
Tさんの言葉は、窓のエコリフォームのメリットが、電気料金や灯油代ダウンといった家計面・省エネ面だけではないことを物語っているようです。
諸星さんいわく「同じようにお困りの方はたくさんおられると思います。白い窓サッシがカビで黒ずみ、でもどうすることもできないと思っている方もいます。だからこそ多くの方に、窓の性能を上げればいろんなことが解決できるんだ、と知らせたいですね」
開口部の断熱力向上が、暮らしやすさや健康面、美的な面をも含めた“心地よくて快適な住まい”に果たす役割は、地味ではあれ決して小さくないのではないでしょうか。
「お正月は毎年、子どもたちが孫を連れて帰ってきます。リビングに14人も集まって、にぎやかに過ごすんですよ」
かけがえのない家族の時間を結露や寒さからそっと守る。エコガラスの大切な役目をもうひとつ教えられて、T邸をあとにしました。