窓から快適、リフォームレポート -三重県 K邸-
立地 | 三重県菰野町 |
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住宅形態 | 木造2階建(1983年竣工) |
住まい手 | 夫婦 |
リフォーム工期 | 2015年2月(3日間) |
窓リフォームに使用した主なガラス | エコガラス(内窓)、真空ガラス |
工事費用 | 約155万円(天井裏断熱工事含む) |
利用した補助金等 | 国土交通省 既存建築物省エネ化推進事業 |
名峰・御在所岳を擁する鈴鹿山脈の麓、1300年の歴史を誇る湯の山温泉郷にほど近いK邸は、瓦屋根の深い軒が印象的な真壁造の木造住宅です。
『鈴鹿おろし』の西風にさらされる冬は最低気温−4℃、真夏は最高気温33℃を記録するこの地で、Kさんご夫妻は長い歳月を過ごしてきました。
築33年目で断熱リフォームに踏み切った理由を、奥様は笑いながら「夫が寒がりになったから(笑)」と言います。若い頃からフルマラソンを含む陸上競技に取り組み、国際・全日本マスターズ選手権での優勝経験も持つKさんは、現在も地元のランニングクラブの指導者として活動するスポーツマン。けれどここ数年で、今までとは違う寒さを感じるようになったというのです。
加えて、激しい結露にもずっと悩まされてきました。現役時代はガラスメーカーにお勤めだったKさんは、長い間「窓を換えたい」と思ってきたそうです。そんな折りに「インターネットで国交省の省エネ補助金があることを知りました」
エコガラスの知識も持っていたKさんは、さっそく知り合いのガラス店に相談。同じ三重県内で、環境に配慮した窓の断熱リフォームを手がける小黒硝子店装(株)を紹介されたのでした。
実は、当初Kさんが希望していたのは“広縁と居間の窓交換”だけ。予算面もあり、既存のサッシをそのまま使って、エコガラスの一種である真空ガラスを入れるつもりでした。ふた部屋とも、自室と並んで家族が長く使う空間です。
しかし、相談を受けて住まいの様子を見にきた小黒硝子の小黒正博さんからは、まったく違う提案が出されたのでした。“一部を除いて家じゅうの開口部をエコガラスで断熱し、さらに無断熱だった天井裏に断熱材を入れる”というものです。
小黒さんは「ガラス交換では、古いサッシが冷たいままなので結露は止まりませんし、日常的に使う部分は全部工事した方が省エネになりますよ」さらに内窓設置を基本とすることを推奨し「真空ガラスより15%安く、性能は2割アップします、とご説明しました」と笑顔で振り返りました。
ポケットマネーでこぢんまりとリフォームしようと考えていたKさん、提案内容には納得しつつも、予想外に大きくなった話にあわてて奥様に相談します。
快諾を受け、納戸および町営の温泉施設を利用するため使わなくなった浴室を除くすべての開口部にエコガラスを施し、さらに天井裏には厚さ200mm近いセルロースファイバーを吹き込む断熱リフォームが決まりました。
内窓採用の提案も、以前北海道を旅行した際にご夫妻はその暖かさを実感していたため「拭き掃除がちょっと大変」と奥様は少し心配しながらも、問題なく同意できたといいます。
工事は2015年の2月。工期3日の『居ながらリフォーム』で、暮らしへの大きな影響もなく終了しました。
寒かった玄関は、引戸と明かり取りを真空ガラス入りのものに新調することで明るく暖かい空間になりました。框を上がったホールに切られた引き違い窓は、もともと内障子が入っていたのを和紙調の意匠があるエコガラスに交換。奥様お気に入りの窓へと変わっています。
キッチンでは、シンク部分の出窓はガラスだけを交換し、ダイニングテーブル脇の腰窓には内窓設置と、使い分けがなされました。
最大の懸念だった和室の広縁と居間の開口には、内窓を採用しました。2階に上がり、階段の踊り場やご夫妻それぞれの自室の窓にも内窓をつけ、こうしてほぼすべての開口部がエコガラスで守られることとなったのです。
リフォームして一番変わったと感じるのは広縁、とKさん。「以前は、昼は暖かくても日が陰るとすぐ寒くなり、その時点で居間に移動していたんです。今は3時過ぎに内窓を閉めればいつまでも暖かい。夕食まで本を読んだりしますね」
昼食と夕食をとる居間には大きな掃き出し窓と出窓があり、開口部の多い空間です。家族でゆっくりだんらんし、かつメインの暖房に石油ファンヒーターを使うため、寒さのほかに結露の激しさもとくに目立った部屋でした。
工事の後は結露がなくなり、つけっぱなしだったファンヒーターも消す時間帯ができたといいます。
SNSで情報発信することが多いKさんにとって、パソコンのある2階の自室も長い時間を過ごす場所です。
北東向きの8畳は朝日がよく入るものの、日が当たらなければすぐに冷え、工事前は「午後は広縁に行きました(笑)」。夕食後もパソコンの前に座りますが、就寝までエアコンをつけたままだったといいます。
リフォームしてからは、夜1時間ほどエアコンをつけ、スイッチを切れるようになりました。
室内での服装にも変化が。
奥様は「リフォーム前より1枚薄着になりました。夫はカイロも貼らなくなったし」。以前は30個入りのカイロの箱があったんですよ、とにっこりしました。
光熱費についてうかがえば、ひと冬で10個購入していた18リッター入りの灯油缶が、今年は8個目がまだ残っているとのこと。電気料金も月5000円に届かず「恥ずかしいくらい少ないんです」
エコガラスの断熱力は、体感面でも省エネ面でも、きっちり効いているようです。
施工を担当した小黒さんは「K邸は真壁の部屋が多くてサッシが内付けだったので、けっこう厄介でしたよ」と笑います。
この状態で普通に内窓をつけると不細工になる。だから通常のやり方を取らず「サッシの見付け分のふかし枠を無垢の桧材でつくり、むき出しでつけました」
K邸が桧造の“日本の家”であることを考慮した、長く家族を支えてきた住まいに対する敬意がにじむような施工。大学で建築を先攻した小黒さんらしい心配りといえるでしょう。
「工事の後は、新築したときのような桧の香りが家じゅうぷんぷんしていたんですよ」奥様が楽しそうに振り返りました。
横幅2m半を超えるリビングの掃き出し窓につけたのは、4枚引きの内窓です。フレキシブルに開け閉めできて拭き掃除もしやすく「2枚引きより圧倒的にいいと思います」と小黒さん。
欄間窓ごと一枚の内窓でカバーする形も、住まい手いわく「もし欄間で切ったら断熱の意味がなくなるでしょう? これはいいと思いますよ」
「暖かいと、気分的になんでもできますよね!」自室~広縁~居間~また自室、と一日の活動に合わせて住まいのさまざまな空間を快適に行き来するKさんならではの言葉でしょう。
施主の隠れたニーズを施工者が見抜いて実現したフル断熱改修は、暖かさと一緒に、のびのびと暮らす元気と豊かさをも贈った…そんな思いを胸に、味わい深い桧の家をあとにしました。