窓から快適、リフォームレポート -北海道 T邸-
札幌市の北西部は明治時代のはじめ、屯田兵によって最初に開拓された歴史ある地域です。
碁盤の目のように整備された街並が今も続くこの地に建つT邸に、2月の一日お邪魔しました。
施主のTさんが想定していたのは、外壁改修と車庫・風除室の増築です。
なのになぜ窓のエコリフォームを? と問うと「藤井さんが結露の実験を見せてくれたからね」と、工事を担当した藤井建業の藤井功貴さんをちらりと見て笑います。
それを受けた藤井さん、「ヒアリングをしていく中で〈結露がすごい〉という話が出たんです。階段室にあった天窓からは、しずくが垂れるほどだった、と」と振り返りました。
T邸では、床暖も含めて1台の石油ストーブによる全館暖房をしています。冬場は28℃設定で24時間運転してきました。
もっとも寒い時期で外気温がマイナス7~8℃まで下がる環境下、燃焼時に水分を出す石油ストーブで暖めている室内。ここで複層ガラスの窓が結露でどうなるかは、想像に難くないでしょう。
「実は結露が大変で…」住まい手が漏らしたつぶやきをすくいあげて藤井さんが持ち込んだ結露実験機。その結果を確認したTさんは、エコガラスを使った窓リフォームの追加を決心します。
工事は2015年5月に実施されました。
エコリフォームの対象となったのは、T邸の居室にある窓全部です。樹脂サッシに複層ガラスが入っていたところを、ガラス部分のみエコガラスに入れ替えました。
加えて結露がとくにひどかった階段室のトップライトをつぶし、代わりに踊り場に小さく切られていた窓を大きくして、従来と変わらない明るさを確保しています。
採用されたのは、Low-Eガラスと真空ガラスを組み合わせて実質3枚のガラスで構成したエコガラスです。寒冷地・札幌で求められる高い断熱性能を備え、かつ「もとからある樹脂サッシの厚みとのバランスも考えて選びました」と藤井さんは話します。
1階部分はリビングダイニングキッチンの一室空間。隣接する公園に向かう南西側に出窓がつき、ソファーとテーブル、テレビが置かれたこの一角で、在宅時のTさんはほとんどの時間を過ごすといいます。
2階は寝室や和室など3つの居室に分かれ、それぞれに窓がついています。階段ホールに光を入れる開口部は、大きなFIX型ガラスの高窓に。
計10箇所の開口部にきっちり断熱が施された住まいは、さてどうなったでしょうか。
リフォーム後も、Tさんは全館暖房の設定を特に変えていません。しかし、変化はあちこちに現れました。
最大の困りごとだった結露は、工事後ほとんど見られなくなったといいます。「やっぱり結露がなくなったのが一番だよね」Tさん の言葉に、藤井さんも「安心しました」とにっこり。
うっすらとつけていたパネル式床暖房も、この冬は使わずにすんでいます。
もっともわかりやすい変化はT邸の熱源・灯油の使用量でしょう。
以前はひと月に約500リッター購入していましたが、工事後は350リッターまで減り、使用量3割減の省エネが実現しています。
さらに注目したい部分があります。それは“凍りついた窓”。
リビングの出窓まわりを外側から見ると、小さなつららがついたり、枠に氷がたまっていたりとなんとも寒々しい様子です。しかし「こういうのを見ると感動ですよ!」と藤井さんが思わず声をあげるほど、この姿こそが窓の高い断熱力をもっとも雄弁に物語っているのです。
断熱力が低ければ、室内の熱は窓を通って外に伝わり、氷は溶けて水になるはず。溶けずに凍ったままなのは熱が逃げていない証拠、というわけです。
「これを見たときはうれしかったなあ」しみじみ語る藤井さんの横で「実は欠陥工事と思っていたんだよ…」Tさんの言葉に、一同爆笑となりました。
冬のみならず北国の夏にも、エコガラスは効果を発揮しています。
北海道といえども暑い時期は最高気温が32℃程度まで上がるこの地域では「閉め切って外出し、帰ってきてドアを開けるとムッとくるんです」とTさん。リビングの出窓からは強い西日も入ってきます。
「でも、この夏はそういうのがなかったんだよね」
さらに「エコリフォームをやるなら妥協しない方がいい。自分自身が住む家なんだから、いいと思ったものは全部取り入れて、できる限り最大限にやるのがいいですよ」と続けました。
住まい手にとって“想定外”だった窓リフォームをここまで成功させた藤井さんは「一番の驚きはやっぱり省エネ。結露の減少が確認できたのもよかったです。なによりもこういう形でお邪魔して“経過観察”ができ、すごく勉強になりました」笑顔がこぼれます。
ちかぢか内装のリフォームも考えているという、自身も建築業を営むTさんとふたりで“次の工事”を楽しげに語り合う姿は、施主と施工者の間柄を超え、力を合わせて良い結果を出す仕事仲間のようでした。