窓から快適、リフォームレポート -東京都 K邸-
立地 | 東京都墨田区 |
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住宅形態 | SRC13階建てマンション |
リフォーム工期 | 2014年4月~6月 |
窓リフォームに使用した主なガラス | エコガラス(内窓) |
利用した補助金等 | 地球温暖化防止設備導入助成(墨田区) |
東京都内・江東デルタ地帯と呼ばれる地域に建つ都営白鬚東アパートは、別名〈防災団地〉。災害時には足下の公園とともに周辺住民の避難拠点になる集合住宅です。
隅田川に沿って、13階建ての団地が東西1.2kmも壁のように連なる威容は、まさに都市の城塞。大火災をはじめ地震や水害から人々の命を守る〈防火壁〉の使命も帯びて、1982年に建てられました。
ここの分譲エリア内の一住戸がKさんの家です。東京スカイツリーが一望できるこの部屋に建物竣工と同時に入居し、ずっと暮らしてきたKさんは昨年、30年ぶりに住まいのリフォームに取り組みました。
「身辺から無駄なものを捨てて、ミニマムに暮らそうと思って」畳敷きからフローリング、砂壁をクロス張りにと考える中、目にしたチラシに誘われて足を向けたのが、リグラスショップ・ウチヤマです。
窓ガラスの施工・販売をメインに、住まいのリフォームまで手がける同店で提案されたのが、床や壁の工事に加えて窓の性能もアップすることでした。
30年来の激しい結露やすきま風に悩んでいたこともあり、Kさんは快諾。こうして、暮らしやすさを向上する内装リフォームと、建物の外皮性能を上げるエコリフォームの同時進行が決定したのです。
依頼を受けたリグラスショップ・ウチヤマがまとめ役となり、木工事や電気工事を担当する工務店との協力体制がつくられて、2014年の春、2ヶ月にわたる総合リフォームが実施されました。
K邸のリフォームはいわゆる〈居ながら工事〉。フローリング、天井・壁のクロス張り、水まわりの全面交換、給排水管や電気・ガス設備まで、ほぼ全体リフォームといえる工事のほとんどの期間、Kさんは現場に住み続けて工事を見守ったのです。
「居られるなら居られるだけ居た方がいいよ、居るのと居ないのでは違うから。と息子に言われてね」とKさん。
普段使わない布団などはトランクルームに収め、日常生活に必要な家具をひと部屋に集め、そこで寝起きして過ごしました。
これは正解だった、とKさん。
「スイッチを増やして、とか、この線はここにつけられますか、と直接伝えて、コンセントも随分増やしてもらいました。ここは建物が古くて少ないから」
現場を仕切る助監督がいい人だったし、お湯は電気ポットで沸かせるから何も困らなかったのよ、とにっこりしました。
住まい手の希望を現場で直接伝えることがリフォームの成功に貢献するのは、想像に難くありません。施主の目が現場で働く人の姿勢に与える影響も当然あるでしょう。参考にしたいものです。
窓については、エコガラスの内窓設置によるエコリフォームが選択されました。南向きの2窓、北西向き1窓の計3箇所が対象です。
リビングでは、既存の掃き出し窓に合わせて3枚引きの内窓を設置。工事にともない、アルミの柱が新たに立てられました。施工を担当したリグラスショップ・ウチヤマの菅原康弘さんは「柱は内窓を留めつけるためのものです。配管がある右脇の壁には白い化粧パネルを張りました」
白い樹脂サッシの内窓は、6mmの空気層を持ったエコガラスが入っています。
二重窓のわずらわしさや開け閉めの重みはありませんか、と問うと「感じません。内側の出っ張り?部屋の端っこだもの、全然気になりませんよ」カラッと明るい答えが返りました。
うっすらと入るエコガラス特有の緑色も「目にはいいです、まぶしくなくて。部屋も落ち着くと思います」
ほぼ都心に位置するK邸周辺の気温は、夏は最高で約35℃、冬は0℃前後といったところ。
夏期、ベランダのある南の窓から日が射し込むことはありません。深い庇が功を奏しています。反対に冬は奥のキッチンまで日射が届き、工事前から「日中は暖房がいりませんでした」
北西と南と両方の窓を開ければ、隅田川の川風が一年を通じて室内を通ります。「住んでいる人は、夏は開けていることも多いですよ」とKさん。
その一方で冬の窓を冷やし、拭き取りタオルが2枚あっても足りなかったという激しい結露の元凶となるのも、この風なのです。
エコリフォーム後はどんな室内環境なのでしょう。
夏のエアコンは設定温度は以前は25℃くらいでしたが、工事後は「あまり使わないかな。窓を開けて風を通したり、出かけるときは全部閉めていきます。帰ってくると、すーっと涼しいんですよ」
今は真夏でも日中のエアコンはなし。それでも室内は27~28℃程度なので十分いられます、とKさん。取材時はエアコン運転中でしたが、これは梅雨時の湿気対策で「真夏よりもこの時期の方が使います」
運転するのは就寝前だけ。眠りやすいようにね、とのことでした。
冬は、工事前でもホットカーペット1枚で室温約18℃をキープ。これは13階建てマンションの中層に位置するメリットでしょう。しかし窓リフォーム後は同じ条件で23℃に。気になっていたすきま風がなくなりました。なによりも「結露が違いますね。前は毎日、今はまったく拭きません」
さすがに真冬は冷たい川風の影響で内窓の室外側は露を結びますが「それも、あとで拭いておこうかなと思う程度。前は朝から『ほら拭かなきゃ!』だったのに」結露との戦い? が解消されたKさんの笑顔です。
実現した快適さに、部屋を訪ねてきた同じマンションに住む知り合いからも「随分違うね」との感想がもれたそうです。
さらに電気料金は「半分くらいですね。以前5月からエアコンをつけていた頃は月に1万円、それが先月は6000円くらいですから」
省エネの実力も証明されたといえるでしょう。
窓リフォームを統括した菅原さんは「夏は内窓をしっかり閉める方が外部の熱が入りにくい。反対に冬の日中は開けておいた方がいいんですよ。夕方閉めちゃえば、取り込んだ熱は逃げていかないし」と内窓の開け閉めテクニックをアドバイス。
エコガラスの断熱力を理解し活用してほしいという、ガラスのプロの思いがにじみます。
それを受けてKさんいわく「宣伝マンになりたいくらい(笑)エコガラスは本当にお勧め。みなさんおやりになった方がいいです。リフォームする時にはお金をしっかりかけなきゃダメですよ。それだけの効果はあるし、なによりも気分よく生活ができるから。暮らしは衣食住がやっぱり大事、しっかりお金をかけて、住を大切に暮らそうと思って、やったんです」
率直な言葉に驚く筆者に「いいことはちゃんと言わないとね、わからないでしょ」とにっこり。人生の先輩の朗らかな教えに感服しつつ、K邸をあとにしました。