窓から快適、リフォームレポート -岐阜県 K邸-
立地 | 岐阜県大垣市 |
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住宅形態 | RC造3階建2、3階部分(2001年竣工) |
住まい手 | 姉妹 |
間取り | 3LDK+納戸 |
リフォーム工期 | 2012年秋 |
窓リフォームに使用した主なガラス | エコガラス/真空ガラス |
利用した補助金等 | 住宅エコポイント |
大垣市は日本列島のほぼ中央に位置し、古くから東西交通の要衝として栄えたまちです。豊富な地下水に恵まれ「水都」の異名も持つこの地で、うどん店を営むKさんのお住まいを訪ねました。
瓦葺きのお店に隣接する3階建住宅の竣工は2001年。1階はご両親の家、2、3階がエコリフォームの対象となったKさんと妹さん姉妹の居住スペースです。
「北側の窓は、冬は凍りついて開かなくなります。寒くて眠れず、最初はとにかくこの部屋が寒くなくなればいいと思っていました」
と言いながらKさんが案内してくれたのは、西に掃き出し、北に腰高の窓がある3階の寝室です。
ベランダは岐阜と滋賀の県境を走る伊吹山地の主峰・伊吹山も望める眺望ですが、実はここから吹き下ろしてくる冷たい北西風「伊吹おろし」が大垣の寒さの元凶。
「ここは寝るだけの部屋なんですが、夜になってリビングから眠りにくると、室温は5度ありませんでした」
就寝時はフリース素材のパジャマを着、電気毛布に毛布を重ね、さらに布団とベッドカバーをかけて、それでも寝不足だったとKさんは振り返ります。
「寒さはもちろん、電気毛布で乾燥してのどはカラカラ、それなのに窓まわりは結露でカビが生えている状態。健康面も心配でした」
エアコンは使わず、さらに窓から外の冷気がどんどん入り込むことで「息が白くなるほど」室内が冷やされ、寒さで眠れない環境にしていたのでしょう。
もっとも長い時間を過ごすリビングダイニングには、東側の大きな掃き出し窓のほか、北側には隣り合うキッチンも含めてふたつの出窓が並びます。こちらも「冬は真っ白に凍って、外の景色もわからなかった」。
結露にも悩まされました。
エアコンが苦手なKさんは、20畳程度用の大きな業務用石油ストーブを、食事の時はダイニング側、テレビを見る時はリビング側へとせっせと移動させていたといいます。
「だから窓の下は全部、白や緑のカビで水玉模様(笑)ひどかったです」
もともとK邸の窓はすべてシングルガラス。「建てるとき、予算の都合で、予定していたものより100万円くらい安い窓になっちゃったんですよ」とKさん。
窓を換えたら結露がなくなるのでは…? 姉の家の窓リフォームを手がけた縁で相談をもちかけたのは、タバタサッシの田端隆さんです。提案されたのは、結露のみならず寒さや騒音対策まで考えた、エコガラスの内窓設置と真空ガラスへの交換による複合的な窓リフォームでした。
エコリフォームは2012年の秋、冬を迎える直前に行われました。
まずは最大の懸念だった寝室です。2枚の窓にはともにエコガラスの内窓が設置されました。
室内側にもうひとつ窓ができることに抵抗は? の問いにKさんは「ものを置いていたわけではないので」とあっさり。
窓の額縁の奥行きが比較的大きかったこともあり、部屋が狭くなる感覚はなかったそうです。
リビングダイニングとキッチンは、掃き出し窓には内窓を設置し、出窓は「すごく気に入っていて変えたくない」という住まい手の意思でガラスだけを真空ガラスに交換する方法を選択。
妹さんの部屋や2階西側の予備室、納戸も含めた全10箇所の工事は、一日で終了しました。
効果について、うかがってみましょう。
「寝室で温度計を見るのが楽しみです。エアコンもつけてない12月で、扉を開けっ放しにしているのに、朝も晩も13度あるんですよ!」
パジャマは以前よりずっと薄着になり、一晩中使っていた電気毛布も就寝前に1時間暖めて後はoff、寝不足もありませんと笑顔で話してくれました。
リビングでは業務用ストーブがお役御免になり、短時間のエアコンとソファーにかけたホットカーペット、そして小さめの電気ストーブを使うようになりました。
「考えられないことですよ、12月にこんなストーブ1台で過ごしているなんて」
実はこのスペースは、Kさんの仕事に合わせて一日2回、主に使われています。夜、就寝するまでの時間はもちろんですが、それ以外にうどん店での仕事の休憩時間である午後の2時間ほどを過ごすのが、ここなのです。
前の晩から翌日午後までほぼ無人になるため冷えきり、大きな石油ストーブでも暖まるまで時間がかかっていたリビングは「今はエアコンを強めに入れてガーッと暖めたらすぐにスイッチをオフ。あとは電気ストーブ1台で過ごせます」
窓リフォームで断熱・気密力が上がれば前夜の室温が長く保たれ、さらにエアコンの効きがスピードアップします。素早く部屋を快適にしたい休憩時間には、まさにドンピシャの効果といえそう。もちろん、仕事を終えて帰ってきても同様にすぐ暖められます。
また、休日にはリビングの大型テレビで趣味の映画鑑賞を楽しむKさんにとって、外からの騒音も悩みでした。
「道路を通る車の音や犬の声で映画に集中できなくて」というKさんの話を聞いて、田端さんは内窓を提案したといいます。
「寒さだけなら真空ガラスでいいんですが、うるささの改善もとなると、やはり内窓。その場に合わせて複合的に考えて、工事方法をチョイスしました」
住空間としてのK邸には大きな要素がもうひとつ。「猫の住む家」の側面です。
愛猫は4匹で、主人のいない昼間はベランダからリビング、キッチン、寝室まで家の中はすべて彼らの思うまま。移動を妨げないよう室内の扉はすべて開け放しています。
つまり、空気の流れから見ればワンフロア=ワンルーム。2階と3階は階段でつながるため、実質的には家じゅうが一室空間のような状態といえるでしょう。
こうなると寝室だけ、リビングだけを窓を変えるよりも、家全体の断熱・気密アップこそがエコリフォームのカギとなることは想像に難くありません。
当初は自室の寒さの解決だけを考えていたというKさんですが、田端さんの話を聞いて最終的に全居室の窓をリフォームした決断を「本当にやってよかったです」とうなずきました。
階段に接し、リビングと居室を結ぶ廊下は猫たちの格好の遊び場です。
<夜もたくさん遊ばないと寝てくれないから>と Kさんは猫じゃらしを片手に毎晩相手しますが、火の気のない板張り空間でも「パーカー1枚はおって遊んでいて大丈夫です」
リフォーム前は、冬場は扉を閉めてリビングで遊ばせていましたが「どうしても猫が開けるので、そのたびに隙間風が入り、もう! って怒っていました(笑)」猫と暮らす人なら思わずそうそう! と言いたくなるエピソードも、過去のこととなりました。
真空ガラスのはめ込まれた出窓は「外が見えるし、キッチンの方は隣の屋根に雀も来るし」と、猫たちお気に入りの居場所といいます。
冬になっても北の窓辺でのんびりくつろぐその姿こそ、K邸エコリフォームの成功をもっとも雄弁に物語っているのかもしれません。