事例紹介/リフォーム

ガラスの結露は見事解消!でも、既存サッシは…?

窓から快適、リフォームレポート -埼玉県 K邸-

Profile Data
立地 埼玉県和光市
住宅形態 RC造8階建マンション(2000年竣工)
住まい手 夫婦+子どもひとり
間取り 3LDK+和室
窓リフォームに使用した主なガラス エコガラス(真空ガラス)
利用した補助金等 住宅エコポイント・省エネリフォーム減税(固定資産税)


一年中吹きつける北風で、冬の窓には結露がいっぱい

リビングでKさんご夫妻にお話をうかがった。正面奥は東南のコーナーガラス、右手が掃き出し窓となっている。
東側には出窓や勝手口等ガラス張りの開口部が一直線に並び、北からの卓越風を受け止めている。
北側洋室のFIX窓につけられた内窓。

埼玉県和光市は、3つの鉄道路線と3本の幹線道路を市内に擁し、30~40才代が市の人口のメインとなっている若々しいまち。住みやすさや通勤通学の利便性で多くの人が集まるこの地に、Kさんご一家は2000年にやってきました。

お住まいはRC造8階建のマンションの角部屋。東側から南側まで幅広のベランダがぐるりとめぐり、掃き出し窓や出窓なども多い、開放感のある住戸です。

その開口部につく結露が、エコリフォームに踏み切るきっかけとなりました。
「たまらなかったね」30分かけて家じゅうの窓を拭いて回る毎日を、Kさんは苦笑いで振り返ります。スクイーズについた水を溜める筒が「窓1枚でいっぱいになったんですよ」と、こちらは奥様。

流れるほどの結露で壁紙は浮いて黒ずみ、カーテンは何度洗ってもカビで汚れるばかり。それでも、そういうものだから仕方がないと暮らしてきたそうです。

結露の主な原因は2つありました。
ひとつ目は、高台の土地でほぼ一年中吹く北寄りの風が、冬場に運んでくる冷気。東側に並ぶ出窓やガラス張りの勝手口扉などに、この冷たい空気はまともにぶつかります。

もうひとつの原因は、やはり窓の状況でしょう。
東に鉄道、南に幹線道が走るマンションは、新築時に6ミリ+6ミリの「防音合わせガラス」が採用されていました。音については問題ないのですが、複層ガラスのような中間の空気層がなく、ガラスとサッシだけで外の冷気と室内の暖かい空気を隔てる状態のため、室内の水蒸気が冷やされて水滴になりやすい、という具合だったのです。

取材は夏のさなかでしたが、RCマンションの冬の困りごとにこたえるエコガラスの力をお聞きする、予想外の機会となりました。


室内を流れていた冷気が止まり、家全体の温度がアップ

逆梁工法で2メートル30センチのハイサッシになっているリビングの掃き出し窓は、開放的な反面「結露を拭くのは大変でした」。内窓は4ミリ+空気層10ミリ+Low-E4ミリと通常よりも厚く「エレベーターに入らない大きさで、3人がかりでかつぎあげました」と施工を担当した折原さんは振り返る。
リビング東南のコーナーガラス。ゆったりとした空間性を失いたくないとの住まい手の希望のほか、窓台があるため内窓設置に大がかりな工事が必要になることもあり、既存枠を生かしてガラスのみを真空ガラスに交換する選択がなされた。
キッチン脇の勝手口扉も真空ガラスに交換され、北からの風が遮断されるように。
北・東の2面に開口部がある玄関脇の洋室は、Kさん言うところの「冷気の発生源」。ベランダに出るための扉は真空ガラスに交換、その脇のFIX窓と東側の出窓には内窓が設置され、汚名返上となった。

住み始めて12年、結露拭きの我慢をやめてエコリフォームを実現したきっかけを、Kさんは「同じ状態の住戸に住むご近所と相談しあったこと」さらに「エコポイント」と「省エネリフォーム減税」が追い風になった、と言います。

窓リフォームの効果について「窓を二重にすれば結露が防げることは、周りから聞いて知っていました。それに私の郷里は北海道で、向こうはみんな二重三重の窓にして結露は全然ありませんから」。
近所のガラス販売店からホームセンターまで、窓の工事を行うお店のチラシを集めては見積を取り、最終的に依頼したのが「一番親切に見積してくれた」折原硝子店でした。

工事は2011年6月。和室と洋室ひと部屋ずつを除くすべての窓が、リフォームの対象です。
北側の玄関脇から東面の開口部、さらにリビングの掃き出し窓にはエコガラスの内窓を設置し、東南のコーナーガラスと勝手口等の扉は既存枠を生かしてガラスだけを防音タイプの真空ガラスに交換しています。
当初はコーナー部分も内窓設置希望でしたが、構造面で難しかったとのこと。また和室は障子を取り去ることになるため、今回は見合わせました。

「とくに冬がいいね。工事の前はリビングでくつろいでいるとスースーしてすごく寒かったのが、今は全然、大丈夫になりました」効果のほどをKさんにうかがうと、第一声でこんな言葉が返りました。
リビングのコーナーガラス前がKさんお気に入りのスペースですが「以前は冷蔵庫を開けた時みたいな冷たい風が流れていて、なんでカーテンをもっと長くしなかったんだろうと話していたんですよ(笑)」カーテン下から流れ出ていた窓からのコールドドラフトが軽減されているのでしょう。

家全体の室温にも変化が見られました。
「リフォーム以前は、人がいる部屋を暖房してもあまり暖かくならなかったのですが、北側の部屋も一緒に暖房することで家全体が暖かくなりました。つまり、北側からの冷気で相当冷やされていたんだと思うんです」と奥様。Kさんも「マンションの室内扉は密閉しないで下が開いているでしょ。あそこから冷気が流れてきたと思うんだよね」
玄関脇の北側の部屋の冷気が扉のアンダーカットから流れ出して廊下を通り、南のリビングまで届いていたというのです。とくに廊下の終わりにあたるリビングの入口がとても寒かったそうですが、工事後はそれもなくなりました。
「冷気の発生源にカバーをしたことで、家全体の温度が上がっているんだと思います」

観葉植物も、断熱効果の証人として登場しました。
「寒さに弱い種類のものは、窓際に置いておくと葉が溶けたようになっていました。今はずっと置いていても大丈夫です」

続けて「テレビを見ながらリビングでうたた寝しても風邪も引かなくなりました。それが一番大きい効果ですよね」とにっこりしました。


既存のサッシに今も残る結露に、改めて窓リフォームを考える

リビングのコーナーガラス部をベランダ側から見ると、がっしりとした窓枠の存在感がよくわかる。
既存の枠が残された勝手口の扉。サッシ部分の面積が広いため結露はやはり気になるという。リフォーム後も冬は毎日拭いている。
愛用のスクイーズを前に、熱心に語ってくれたKさん。取材に同席した折原硝子店の折原雄二さん(右)について「アフターケアもしっかりやってくれるんですよ」と笑った。個人商店ならではのきめ細かい対応の訴求力。

ところで、エコリフォームのきっかけとなった結露は、その後どうなったのでしょうか。

「以前とはもう、雲泥の差です。でも、サッシのところだけはどうしてもね…けっこうつくので、毎日拭いています(奥様)」「サッシがダメだね(笑)全部取り替えるのが一番いいのかな(Kさん)」

おふたりの言葉は、内窓をつけなかった勝手口の扉やリビングのコーナーガラスの「窓枠につく結露」を指摘するものでした。

前述の通り、リビングのコーナーガラスとキッチンおよび北側のガラス扉は、既存のサッシを残してガラスだけをエコガラスに交換しています。扉部分はもともと内側にスライド網戸がついていたため、内窓設置となりませんでした。ガラス面の性能は当然アップしましたが、さわっていない枠部分は気密面の性能も竣工当時のままです。

加えてK邸のサッシはすべての窓に共通してがっしりとしており、ガラス面と比較しても存在感のある枠になっています。ここに結露がつけば、やはり拭き取るのが自然と思われました。
「台所の勝手口は、ガラスとサッシの面積を比べるとどっこいどっこいかな? というところもありますから」奥様の言葉にもうなずけます。

枠部分に結露が残ることは、工事前に折原さんからもちろん説明済みでした。その上で「サッシの上に気密効果・断熱効果のあるカバーみたいなものがかけられればいいんでしょうね」
全体的にはよくなっているんだから、何かうまい工夫があれば…という、Kさんからのご意見なのです。

その一方で、既存サッシを残し、ガラスだけを交換する開口部エコリフォームは、従来の室内の雰囲気が変わらないというデザイン面や、予算面、さらには建材のリデュース面など多くのメリットを持っています。
一般的な窓枠程度のサッシ面積なら結露はほとんど気にならない、という方も少なくありません。

ひとつとして同じものはないであろう、それぞれの住まいの状況と住まい手の考え方。それらが如実に現れるのもまた、住宅リフォームの一面なのでしょう。
毎日の暮らしを守り育んでくれる私たちの家に、どのように手を加えることでより心地良い室内、さらにはより良い地球環境を作り出せるのか…
住まいと真摯に向き合い、自らのライフスタイルに思いを馳せる、エコリフォームはそんな機会でもあるのかもしれない。そう教えられた気がしました。


有限会社折原硝子店


取材日:2012年07月23日
取材・文:二階幸恵
撮影:渡辺洋司(わたなべスタジオ)

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