窓から快適、リフォームレポート -埼玉県 桐山邸-
立地 | 埼玉県越谷市 |
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住宅形態 | 鉄骨造3階建て(1989年竣工) |
住まい手 | 夫婦+子ども3人+両親 |
間取り | 3LDK |
リフォーム工期 | 2011年4月 |
窓リフォームに使用した主なガラス | エコガラス |
利用した補助金等 | 住宅エコポイント |
かたわらにご自身の建築設計事務所が寄り添う、3階建の家。ご両親が住み続けてきたこの建物を、桐山和広さんは昨年春、二世帯住宅として改修しました。
エコリフォームのメインとなったのは、三世代が集う2階リビングダイニングスペースです。
以前は敷地南側、現在の事務所部分に隣家が建っていました。お隣が転居したのち土地を買い取り、いざ改修となったとき「それまで十分でなかった分、両親には日差しへのこだわりがありました。そこで父母の寝室を一番日当たりのいいところに配置。リビングも同じ考えで窓を大きくとり、明るく開放的に太陽の光を取り入れようと考えたのです」と桐山さん。
リビングのある2階部分は、改修前は2つの部屋が並び、バルコニーに向かってそれぞれ一間の掃き出し窓がありました。中央の間仕切壁を取り払ってワンルームにするとともにバルコニー側は新たに大きなFIX窓が切られ、南東側の壁はほとんどがガラス張りに。
東西両面の壁とキッチンに元からある窓も残し、開口部の多い明るい空間となりました。
一方で窓の多さは室内外の熱が出入りしやすくなることを意味します。「当然、断熱性能が高いガラスを使いたいと思って」。 予算も考慮してバルコニー側は複層ガラス、結露が特にひどかった東西両面の窓にはエコガラスを選んだとのこと。
さらに東西の窓は、全面的な改修工事となったバルコニー側と違い、既存の窓枠をそのまま利用しました。
「サッシごと取り替えると、外壁部分にも工事が発生してしまいます。ガラス部分以外は一切いじらない方針でやりました」と語る桐山さんが、既存サッシにそのままエコガラスをはめ込める「ガラス交換」を選んだのは、自然な流れだったのでしょう。
リフォーム後は、結露の解消はもちろん「それまでマンション住まいだったので、一軒家は寒くて…」という奥様の心配も吹き飛ぶ、真冬もエアコン1台で室温20度を保つ大開口リビングになりました。
床暖房も入れていませんが、厚さ12ミリのパイン材フローリングを既存の床の上にそのまま張ってあることも、断熱に一役買っているようです。
リビングから続く事務所棟の2階はご両親の寝室。
複層ガラスの大窓に加え、高い天井に切られた天窓はエコガラスです。部屋の主であるお父様いわく「太陽さえ出ていれば、どんなに寒い日でも温室みたいですよ。この冬も、暖房をつけるのは朝晩だけで十分でした」
シェード付きの電動の天窓は「一年を通して朝晩必ず開け、風を通しています。閉めておけば冷気が下りてくることもありません」
3月初旬の取材日は肌寒い雨模様でしたが、暖房が切られた部屋の室温計は22.7度を示していました。
ダイニングテーブル脇の窓辺は、桐山邸のギャラリー空間です。
隣家が間近に迫るため曇りガラスを選んだエコガラスの窓は、もともとは出窓。改修時に壁を張り出してアルコーブ風の空間を新たにつくり、上部には間接照明を設置しました。
「祖父が書家で、古い作品が残っていたんです。それを飾りたいという両親の希望があってピクチャーレールを取り付けたのが、最初のきっかけですね」と桐山さん。
「この窓はけっこう楽しんで使っています。クリスマスのときとかも」とこちらは奥様。
改修前はもっとも結露が激しく手入れが大変だった窓は、リフォームとともに家族みんなの共有スペースに変身。リビングを彩るポイントとなりました。
設計者のデザイン感覚は、他の窓にも生かされています。
リビング東面、エコガラスに交換された2箇所のうち、左側の引き違い窓の下部には、もとは欄間をはさんでFIX窓があったそうです。「ここは以前和室で、障子も入っていました。改修後はテレビを置く予定もあったのでFIX窓はつぶし、右の上げ下げ窓とひと続きの窓に見せよう、という考えです」
その大きさゆえに、当初は家族全員が「外の視線が気になる!」と言っていた南東の大開口も、今では「普段は全開にして過ごしていますね」と奥様はにっこり。夜になり室内に灯りがともってから、やっとブラインドを半分ほど下げるそうです。
ここで活躍しているのが鉄板製のバルコニー手すり。「下半身が目隠しされるだけで、まったく違うと思っています」桐山さんの予想どおり、当初はカーテンの設置を望んだご両親も「今はぜんぜん気にならないって言っていますよ(奥様)」。
大きな窓はあるけれど、一日中レースのカーテンが引かれたまま…とは、よくある話でしょう。
しかし、窓には本来、開放感や明るさへの思いが詰まっているはず。遮るものを減らしつつ住まい手の快適さを守る桐山邸の窓は、そんな思いに自然な佇まいでこたえています。
「窓は、あけた瞬間にそこが人の住む場所になる。住まいの設計にとってめちゃくちゃ重要な要素だと思うんです」桐山さんの言葉です。
窓から射し込む光は室内に立体感を与え、暗い廊下の先に明るく照らされた壁が目に入ればそこには奥行きが感じられる。「家の中に風景を作る、そういうものですね」
内にいながら外とつながる心地よさをつくるのも、窓の大切な役割かもしれません。
奥様は言います。「キッチンに立って、窓から空が見えるのが気持ちいいですね。仕事しながら楽しめるというか。暖かさや涼しさなどの体感ももちろんですが、外や空が見えることで楽しく作業したり座っていられることも、気持ちのいい空間といえるのではと思います」
「窓は空間をつくるもの。その部屋に対してどういう窓をあけるかが、開口部の最大のテーマです(桐山さん)」。設計者がなしとげた成功を、家族の笑顔が誰よりも雄弁に語っているようでした。