窓から快適、リフォームレポート -富山県 U邸-
立地 | 富山県魚津市 |
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住宅形態 | 木造2階建て(1995年竣工、外壁リフォーム/サンルーム増築) |
住まい手 | 夫婦+子ども2人 |
間取り | 3LDK+和室 |
リフォーム工期 | 2010年12月(2日間) |
窓リフォームに使用したガラス | エコガラス |
工事費用 | 約90万円 |
利用した補助金等 | 住宅エコポイント(即時交換) |
日本屈指の良港・富山湾に面する魚津市は、蜃気楼やホタルイカ漁で知られ、また北アルプス立山連峰をまぢかに望む自然豊かなまちです。
海にも山にもほど近い田園地区に建つ家をUさんは1999年に中古で購入、以来少しずつ手を入れながら、家族の成長とともに大切に住まってきました。
多雪で寒さがきびしい土地の気候に合わせ、今までに数度のリフォームを行いました。塗装仕上げだった外壁にタイル調サイディングを張り、洗濯物を干せるようダイニングの南側にはサンルームを増設。玄関には風除室を設け、数年前には設備のオール電化も完了しました。
それでも「まだ寒いねって、言っていました」とUさん。「リビングの窓際でパソコンを使っているんですが、カーテンの下からすごく冷たい風がスーッと入ってきてね。うわあ寒いなあって(笑)」
奥様が感じていたのはキッチンの勝手口からの寒さです。ガラスを張った扉のゴムパッキンが劣化して気密が取れなくなっていたこともあり「すきま風のような冷気でした」。
リビングと続き間になっている和室も冷えがきびしく「ふすまを開けると、冷蔵庫みたいな空気がウォーッときます(笑)」と奥様。まだ小さいふたりの息子さんと家族4人で寝る時以外は「あまり使いでがなかった」とUさんも振り返ります。「暖めているところ以外の部屋には、行くのがいやでしたね」
当初使っていた暖房機器は、ファンヒーターのほかに灯油の遠赤外線暖房機。人がいる時は常にフル稼働だったといい「5リッター入るタンクが一日で空になるくらい」と聞けば、光熱費もかなりのものだったことでしょう。
その後、オール電化に合わせてエアコンと蓄熱暖房機も導入したものの「ファンヒーターで少し暖かくなると、エアコンは止まってしまうでしょ。だから結局、全部回しておかなければならなかったんです」。使い分けも難しかったようです。
もうひとつの悩みが、ファンヒーターも大きな要因となっていた激しい結露でした。「ものすごい量でしたよ。窓際の床がはがれてきたし、湿気で歪むのか、和室の障子が冬は開かなくなるんです」
当初Uさんは、自らの手で床にパテを入れたり、障子のかまちを削ったりもしたそうです。しかし「自分で少しはやってみたんですが、やはりこんなことしとったらまずいなあ、と思って(笑)」
相談したのは、以前に風除室の工事を依頼した新田建商の新田健太郎さんでした。
「窓はほんの数ミリのガラスで外と内を隔てているものだから、壁よりも外気の影響を室内に伝えやすいんですよ、と言われ、確かにガラス1枚だけでというのは無茶な話だな、と。効果があるならやってみようと思いました」
こうして2010年の暮れ、トイレと納戸を除くU邸すべての窓のエコリフォームが行われたのです。
工事の方法は各窓の位置や使い勝手を考慮し、ガラス交換と内窓設置の両方を選択しました。
リビングの出窓やその隣にあるサンルームの掃き出し窓は「ふだんの生活を考えたら夏場は開けたいですよね。見た目もあるし」との奥様の希望で、既存サッシを生かしてエコガラスに交換。
換気はもちろん、洗濯物の出し入れなどで頻繁に使う窓は、開け閉めが煩雑になりがちな内窓よりもガラス交換を選択するケースが多いようです。工事後の生活で負担が増えないことも、エコリフォームの大切な要素と言えるでしょう。
反対に、普段はあまり開け閉めのない窓や断熱効果を重視したい部分には、内窓を採用しました。U邸では吹抜けの玄関ホールの高い位置に切られた3つの窓と浴室、さらに和室が内窓設置の対象となっています。
「自分としては効果を上げるのが最大の目的だったので、できることなら全部内窓にしたかったんです」とUさん。でも、2回開けるのは煩わしいということでね、と、ちらりと奥様を振り返って笑いました。
これを受けた奥様は「吹抜けの窓は北向きだから寒いし、高くて脚立がないとそうそう開けられないですから(笑)お風呂も迷わず内窓ですね」
同様に和室では、もともと入っていた障子を和調の単板ガラスの内窓に、外側の窓をエコガラスに交換。合計3枚のガラスで断熱力を上げました。使い勝手も従来と変わらないのはいうまでもありません。
そして実際の効果は?
「ファンヒーターは、子どもたちが寒いという朝以外、もうほとんど使いません。エアコンも朝方と夜のみで日中はつけず、蓄熱暖房機の熱だけで十分です」
奥様の言葉を裏付けるように、取材にお邪魔した11月半ば、Uさんファミリーはそろって裸足ですごしていました。床暖房は入っていません。厳寒期以外は和室のふすまも開け放つようになったそうです。もちろん結露も解消しました。
光熱費はどうでしょう。「灯油は買わなくなっていますね。エアコンの使用回数も減っているので、電気代が月2000円ずつぐらい下がっている気がします」
3つ並んだ部屋のひとつが奥様の仕事スペースになっている2階も「工事前はあまり行きたくなくて(笑)、必ずエアコンで暖めてから上がっていました。今は、玄関ホールに面した扉を開けっ放しにして仕事しています」と、メインユーザーも満足の状態に。
ところで、富山県の1住宅あたりの延べ面積は約149m2(平成20年住宅・土地統計調査より)と、全国第1位です。その例にもれずゆったりとしたU邸においても、住まいの顔である吹抜けの玄関ホールはとりわけ印象的な広さ。その一方で「吹抜けは寒い」もまた定説となっています。
しかしUさんいわく「2階のエアコンを1台つけて開け放っておけば、玄関もそこそこ暖まるんですよ。工事前はそんなことはぜんぜんなかったんだけど」。
従来の風除室に内窓が加わって開口部の気密がより保たれ、小さな熱が大きな空間を十分暖めている…エコガラスがつくり出す快適さのしくみがそのまま現れた空間、と言えそうです。
今回の窓リフォームで獲得したエコポイントは、即時交換として勝手口まわりの歪みなどの補修工事にあてられました。勝手口はゴムパッキンの劣化以外にも「強い風にあおられてドアがねじれ、蝶番に相当無理が来ていたんです。いつも寒くて」すぐに工事してもらいました、と奥様はにっこり。
工事を担当した新田さんは「ゴムパッキンの交換からドアクローザーの調整、扉の補修までを、即時交換の対象としました」
暮らしを見つめ、時の流れとともに積み重ねられてきたU邸のリフォームも、このエコリフォームで一段落を迎えたようです。
「やるとしたら、あとは床暖房くらいかな? でも、今はとくに考えていません」とUさん。
「大成功ですよね。お邪魔した瞬間にわかりましたもの、あったかいなあって」
帰り際にふともらした新田さんのこの一言は、エコガラスが運んできた心地よさのみならず、取材の間じゅう笑顔の絶えることがなかったUさんご一家の温かな空気感を、そのまま表しているようでした。