窓から快適、リフォームレポート -大きな窓を抜ける冷気・熱気を遮断 兵庫県 A邸-
立地 | 兵庫県篠山市 |
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住宅形態 | ALC造2階建(1983年竣工) |
住まい手 | 夫婦+子ども2人 |
間取り | 3LDK+和室 |
リフォーム工期 | 2010年12月(1日間) |
窓リフォームに使用したガラス | エコガラス・遮熱エコガラス |
工事費用 | 約180万6000円(うちNEDO補助金約63万2000円) |
利用した補助金等 | 平成22年度NEDO断熱リフォーム補助金制度 |
京都と山陰を結ぶ要衝として古くから栄えてきた丹波篠山は、白壁に黒い屋根瓦が並ぶ景観が美しい山あいのまちです。
この地で生まれ育ったAさんは、30年前に勤務先の大阪から故郷に帰ってきました。そして建てたのは、当時まだ珍しかったALC(軽量気泡コンクリート)の家です。
篠山盆地は冬は雪深く冷え込み、夏は気温が33度まで上がる内陸性気候。土地柄をよく知るAさんは「昔ながらの家は寒いし、窓が小さくて薄暗くてね。住みにくいんですよ」
大阪出身の奥様も「新しい家は大きな窓が魅力でした。明るくてね」
歴史と伝統的な家々に囲まれた環境の中で、アルミサッシの窓や新しい壁材、しっかりした断熱や防水技術を駆使した「現代の家」をめざしたのです。
大きな窓の明るい家には、しかし予想外の困りごとがありました。「全然暖かくないんですよ。熱が窓から抜けていくんです」
断熱には定評のあるALC材の効果で壁は問題ないものの、天井まで伸びる窓を通じて、暖かさはどんどん外に逃げていました。夏には玄関のガラス開口から熱が入り込み、キッチンの窓は西日にさらされます。
厳しい篠山の気候は、窓を通して長い間A邸に猛威をふるい続けました。
2010年12月のエコリフォームでは、家じゅうの居室と洗面所、トイレにエコガラスの内窓を設置しました。玄関の開口は枠を生かしてガラスのみを交換。
「家全体が寒くないんですよ。冬はトイレもつい後まわしになりがちでしたが、今はすごく気持ちが楽になりました」寒さから解放された住まい手の暮らしや気持ちの変化が自然に伝わってくる奥様の言葉です。
加えて不思議なことも。「湿度が嫌い(笑)」なAさんは、真冬でもトイレや浴室の窓を常に少し開けておくといいます。工事後も変わらない習慣ですが「今までのような寒さがなくなりました。全体的に部屋がぬくもって、暖かさが出て行かないというか(奥様)」
「窓から逃げる熱がそれだけ多かったんでしょうね」とは、施工を担当したヨネダ商店の米田泰士さん。十数箇所の窓工事を職人4人と共に一日で完了したガラスのプロは「やはり家じゅう全部をやったからでしょう」と続けました。
リビングのエアコン設定温度は26度から22度、ときには20度まで下げられました。以前は寝るだけだった2階の部屋は、今は息子さんの仕事場となっています。
「夏は少しエアコンをかけて扇風機で空気をかき回せば、かなりの効果を期待していただけると思います」米田さんのアドバイスに、ご夫妻は「夏もほんとに楽しみです」エコガラスの断熱力ににっこりしました。
リフォームこそ昨年ですが、ガラスやサッシからの熱の出入りに気づいた時点ですでにAさんは高機能の窓への交換を考えていたそうです。
情報を集めて勉強しつつ、何年も踏み切れなかった理由を「やっぱり高いんですよね」。やるなら全部の窓を一度に、と決めていたご夫妻にとって、価格は大きな問題でした。
そこに転機が訪れます。
NEDO(ネド:新エネルギー・産業技術総合開発機構)が住宅を対象に行った省エネ改修補助事業をインターネット上で発見。工事費用の3分の1にあたる金額が助成される制度でした。
「NEDOは知っていましたが、一般住宅対象の事業は知らなかった。これだ、と思いました」このときは公募期間は終わっていましたが、その後もチェックを続けました。
同時に工事の依頼先もインターネットで探索。長年の商品研究の蓄積で採用する窓をすでに決めていたAさんは「近くで同じ製品を扱っているお店を探しました」
ヒットしたのは、西宮を中心に窓リフォームの実積を積むヨネダ商店のサイトです。
「問合せをきっかけにメールのやりとりが始まりました。NEDO関係をHPに載せている希少なお店ですし。他はNEDO自体を知らないところも多かった」とAさん。
「エコガラスに惚れています」と公言する米田さんのこだわりとAさんの思いは一致し、互いの信頼感を醸成する中で、2010年8月にNEDOがふたたび補助事業を発表します。即、応募したのはいうまでもありません。
「工事費3分の1の補助は魅力的ですよ。NEDOあってのエコリフォーム、なんて言ったら怒られるけど」いえいえ、と米田さんが答え、笑い声が上がりました。
こだわりの窓はデザイン面でもA邸に貢献しています。
リビングの段窓掃き出し窓につけた内窓は、あえて一枚ガラス。「前とイメージが変わらなくてよかった(Aさん)」。存在感ある大窓ならではの感想でしょう。
和室の内窓は障子仕様です。「これはすごい。最高やなと思います」Aさんに続いて「組子が入れられるエコガラスを選んでよかった、やっぱりいいですね」と米田さんもうなずく仕上がりに。
外観にも注目です。内窓サッシは室外側にアルミが使われ、外からは「白い縁取りに見えて、奥行きと厚みを感じるんです」。わずかにグリーンがかるガラスの色は「高級感があっていいですよね」こちらは奥様の言葉です。
Aさんは言います。「(今回の窓リフォームは)マイナスがない。プラス面ばかりですね」エコガラスの断熱性能が実現した快適性と暮らしの変化、デザインまで「百点満点。久々の大ヒットですよ(笑)」
そんな中、これからの注目は暖冷房費です。
「寝るだけだった部屋に昼間いられるようになれば、エネルギー量は前より上がるかもわからんね」Aさんの指摘に、米田さんも「考えられます。お子さんひとり生まれるだけで変わってきますから」
「本当に豊かな住まいとは?」 が、ここでは問われているのではないでしょうか。
「住みやすくなってるんですよ」Aさんの言葉を待つまでもなく、リフォーム後のA邸は、暑さ寒さにちぢこまる毎日から住まい手をのびやかに解放する空間になりました。
この豊かさを、単純な省エネ数値と引き換えにするのではなく、効率の良い機器の採用から使い方まで熟慮する意識を持って両立させていくこと。未来に続く環境時代にあって「今後の課題ですね(米田さん)」
その言葉に暗さはありません。暮らしの中でごく自然に環境とエネルギーを考える。私たちみんなの中に、そんなライフスタイルはもうしっかりと根づき始めているのですから。