窓から快適、リフォームレポート -マンションの窓リフォーム 埼玉県 T邸-
立地 | 埼玉県狭山市 |
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住宅形態 | RC12階建マンション(1996年竣工) |
住まい手 | 夫婦+子ども1人 |
間取り | 3LDK+和室 |
リフォーム工期 | 2009年10月 |
窓リフォームに使用したガラス | エコガラス(真空ガラス) |
住まいの悩みと、それを解決するエコリフォームには、住宅の姿形によって決まったり、総合的なバランス面から自ずと導き出される要素もあります。
今回は、鉄筋コンクリートのマンションで窓のリフォームに取り組んだT邸のケースをご紹介しましょう。
関東三大七夕まつりのひとつが催される街に、東京都内からTさんご一家が移ってきたのは15年前。以来、12階建の新築マンションの部屋は、床や壁の張り替え、水まわり部分など数度のリフォームを経て、家族にふさわしい姿へと進化してきました。
ところが、困りごとがあるにもかかわらず手をつけなかった部分があります。それが、激しい結露に悩まされてきた窓。
昨今のマンションは気密性が高く、木造一戸建住宅と比べて結露ができやすい環境になっています。
「諦めていたんですよ、結露を防ぐ方法を知らなかったので。仕方ないなと思っていました」と語るTさん、冬の3ヶ月間は毎朝、T字型の結露取り用スクイジーで家じゅうの窓をぬぐってきたといいます。
寒い朝には、1回の拭き取りでコップ数杯分の水分がたまり「植木の水やりに使っていました(笑)」
しかし2年前、インターネットの検索を使って、窓のリフォームで結露が解決できるとつきとめます。そしてパートナーとして選んだのが、窓ガラスとサッシに特化して販売・施工に取り組む窓工房の海野さんでした。
最初の問い合わせから約1年をかけ、住まい手と施工者は最善の窓リフォームを検討。選んだ方法は「既存の窓枠を利用し、ガラスをエコガラスに交換する」エコリフォームです。
窓リフォームでは多くの場合、①既存の窓枠は残してガラスのみを交換②新たに内窓を設置③窓枠ごと交換、の3つの方法が検討されます。
窓枠ごとの交換は、工事期間やコスト面からTさんの選択肢には入りませんでした。
内窓設置も、窓自体が増える違和感のほかに、6箇所ある窓のうち3箇所が出窓だったことで見送られました。
出窓の場合、障子が入ったりカーテンが引かれるスペースに内窓をつける形になります。「そんなのはねえ」とTさん。海野さんも「やはり内窓には不向きかもしれませんね」とうなずきました。
そして「できるだけ加工せず、現状のままで。それが一番いいです」というTさんの希望に沿う形で、既存の窓枠を生かすことが大前提となったのです。
加えてマンションには共用部である窓枠を基本的に変更できないルールがあり、その点においても、ガラス交換の選択はほぼ必然ともいえるでしょう。
さらに、リフォームの方針を左右する大きな条件がありました。そこにはマンションという住宅形態の性質が反映されています。
それはTさんの望んだ改善が、暑さでも寒さでも西日でもなく「結露」ただ一点であったこと。
木造戸建住宅と比べてRCマンションは「とにかく窓ガラスには結露が出ます。ときには普通のペアガラス(金属膜の入っていないもの)では防げないくらい(海野さん)」。
その反面、上下左右の壁を複数の世帯間で共有するため直接外気に触れる面積が小さく、暑さや寒さの影響が比較的少ないこともマンションの部屋の特色といえます。また内窓が高い効果を上げる防音についても、T邸ではとくに問題と感じられてはいませんでした。
こうなると、目的を結露の改善にしぼった姿勢は、マンションの住まい手としてごく自然なケースのひとつとも考えられそうです。
こうしてT邸のエコリフォームは「マンションの既存窓枠に、ガラス交換で結露退治のエコガラスをはめ込む」という基本条件が設定され、さらなる検討が進められていきました。
窓工房の海野さんいわく「マンションの窓枠は、単板ガラスから複層のエコガラスに交換するときに普通のアタッチメントがすんなり入りにくく、アタッチメントを使わずなんとか入れようとすると中空層を薄くしなければならないので、今度は性能が落ちてしまうんです」。
インターネットで調べ続けたTさんも、当初は「既存の枠に二重ガラス(ペアガラス)は厚くて入らないと思っていた」とのこと。
しかしTさんは諦めず調査を続けました。そしていきあたったのが「真空ガラス」です。
薄くても高い性能を持つこのエコガラスなら使えるだろう。Tさんの予想は的中し、7年以上前から真空ガラスを扱ってきた海野さんによって、T邸のすべての窓で無事にガラス交換が行われました。
その後迎えた冬は「もう、まったく結露しない。全然ナシ! 完全ですね」とTさん。
とくにこだわらなかった断熱面も「リフォーム前と後とでは電気料金が下がった」という形で一定の効果が見られ、また前の道路を通る車の音や人の声が気にならなくなるなど防音効果も感じられるそうです。
加えて「ガラスが汚れない感じがするんですよ。前はしょっちゅうクリーナーを使っていたけど、今はたまに乾いた雑巾でさっと拭くだけですぐきれいになる、不思議だよね(笑)」と、予想外のおまけもついたようです。
しかし、ガラスは新品でも窓枠は15年選手では?
この問いにTさんはあっさりと「サッシのところには結露がつきますよ、今でもね。それはしょうがないよね」
海野さんが続けます。
「既存のアルミ枠部分の結露は防ぎきれていないけれど、窓全体をみれば9割以上はガラスです。そこを改善できれば問題はほぼ解決し、喜んでいただけることが多い。全体のバランスを考えれば、今回はやはりガラスのみを入れ替えてそこに性能をもたせることが、お施主さんの望みだと思いました」
全体のバランス。この言葉にはさまざまな要素が含まれているようです。結露に特化した問題意識、内窓には不向きな出窓、既存枠活用の希望、コストなどなど。
Tさんと海野さんのなごやかな会話を聞けば、今回の窓リフォームがこれらを総合的に考え、納得した上での最善策であったことは、想像に難くありません。
多くの要素を満たすことに重きをおくか。もっとも大切な部分を見極め、その解決に向かって柔軟に進むか。リフォームを考えるとき、そっと心に留めておきたいことのひとつではないでしょうか。
バルコニーにはTさんが丹精したゴーヤのグリーンカーテンや、一昨年は800個もの実をつけた水耕栽培の獅子唐が青々と茂り、メダカたちも泳いでいます。 「ここは七夕祭りの街だから、グリーンカーテンには短冊もかけてるんですよ」 エコガラスを通して見る小さな空中庭園の、さわやかな緑が心に残りました。