窓から快適、リフォームレポート-
セカンドライフが変わった 第二の人生を変えたエコリフォーム 群馬県 K邸 戸建て-
立地 | 群馬県前橋市 |
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住宅形態 | 木造一戸建(1970年竣工/2000年一部改修) |
住まい手 | 夫婦 |
間取り | 2LDK+和室 |
リフォーム工期 | 約6ヶ月、2009年3月終了 |
窓リフォームに使用したガラス | ペアガラス |
利用した補助金等 | 2009年NEDO断熱リフォーム補助金制度 |
「息子が自立して家を出たことがリフォームの契機でしたね」。
Kさんご夫妻のお住まいは利根川の右岸に広がる住宅地の一角、道路を隔てた正面には小さな菜園も広がる静かな環境です。
4人家族の暮らしを見守ってきた家は、築40年のベテラン選手。エコリフォームのタイミングは、娘さんの結婚後にご主人が定年退職、 さらに一昨年の息子さん独立と、住む人と住まい方とが大きな節目を迎えたときに訪れました。
K邸の竣工は1970年です。この時代に建てられた一般木造住宅によく見られるように、断熱材は入っていませんでした。 夏暑く冬寒い盆地型気候の前橋にあって、冬はひと部屋ごとにストーブをたき、夏は熱気がこもる部屋には行かないなどでしのいできたといいます。
とくに外気温が氷点下になる冬はソファのある応接間や2階には寄り付けずに、 夫婦でストーブ・エアコン・こたつのあるリビングにいることがほとんどだったそう。
「お風呂場や洗面所と茶の間(リビング)との温度差も、すごくありました」とKさんは振り返ります。
子どもたちが巣立ち、全面的に建替えてしまうことももちろん考えました。 しかし、10年前にキッチンとリビングを部分改修したことが、建替えに踏み切ろうとする気持ちにブレーキをかけていたのです。
そんな折りに目にしたのが、ポストに入っていた地元の工務店、(株)アライによる新築住宅見学会のチラシでした。 「場所も近かったし、何よりもリフォームや断熱に関する記事が載っていましてね。すぐに話を聞きにいくことにしたんですよ」
見学会を開催した新井政広さんとの出会いで、ご夫妻の新たな家づくりはリフォームへと舵を切ります。
断熱改修や地域に根ざした健康住宅づくりに力を入れてきた新井さんが、ご夫妻の相談を受けて提案したのは「開口部のペアガラスへの交換」と 「壁断熱」を柱とするエコリフォームでした。
新井さんの手がけた断熱住宅を実際に目にし、相談時に示されたリフォームの考え方・アイディアに納得したご夫妻の決断とそれからの行動はすばやいもの。 技術の高い大工さんの体がちょうど空くというチャンスも重なり、工事は見学会から1ヶ月もたたないうちに始められたのでした。
リフォーム済みのリビングとキッチン以外はシングルガラスだったK邸の窓は、トイレや洗面所も含めて全部が、サッシごとペアガラスに交換されました。
サッシは外側は茶色のアルミ、内側は木目調や焦げ茶、白色の樹脂と、各室に合わせて色調と素材を変えています。 床をヒノキ材に張り替えたり、ビニールクロス張りだった壁をしっくいに塗り変える内装工事なども同時に行われ「家の中が明るくなりました」とKさん。
もうひとつ施されたのが、リビングを含む家じゅうの壁と屋根の断熱工事です。 外壁は一度はがされ、耐震用の構造用合板をはさんだ二重の断熱材が入れられました。
たっぷりとした断熱材の厚み分はすべて家の外側に出され、室内の広さはリフォーム前と変わっていません。 新たな外壁に合わせた窓部分には出窓のような空間が生まれて、ちょっとした小物も飾れるスペースになりました。
さらに2階の天井裏はグラスウールを充填して断熱、建物の基礎にも断熱材を張り付けています。
こうして、無断熱だったK邸は一転、高気密・高断熱のエコ住宅に変身しました。
リフォーム後の最初の実感は「雀の声や雨音とか、外の音が聞こえなくなってびっくり。気密性がすぐれてるんですよ!」。
体感温度については「部屋そのものがふわーっとして」家全体の温度差がなくなりました。 暖房機器は朝と夜に短時間使えば部屋全体が暖まり、その後はスイッチを切っても一日中快適さが保たれるとのこと。 掘りごたつひとつで十分なのよ、と奥様は笑顔です。
かたやKさんは、南側の掃き出し窓から日がよく入るリビングの窓際がお気に入り。「日中はこたつも使わないで、ここに寝転んで生活しています」。
こんな調子で、リフォーム後のK邸では石油ストーブを一切使わなくなり、毎週20リッターずつ買っていた灯油代がゼロになりました。
加えてエアコンやガスストーブも1日数時間しか使わないとなれば、実際にかかる光熱費は、その大半がお風呂や台所などの給湯関連のみ、と考えられるでしょう。
さらに、エコリフォームは「夫婦それぞれの自由な時間と空間」をK邸にプレゼントしました。
Kさんの定年退職後の約10年間、いくつも部屋があるのに、おふたりとも一日の大半をリビングで過ごしていたそうです。理由はやはり室内環境。
2階は夫婦の寝室でしたが、冬の寒さはもちろん、断熱力がほとんどない屋根から伝わる夏の熱気も不快で 「上に行くのは洗濯物を干すときと寝るときだけ(奥様)」という状態でした。
1階も、西側の和室は息子さんの部屋になっており、ソファやテーブル、ピアノ、飾り棚が置かれた応接間もふだん使いのスペースにはしづらいものでした。
テレビやこたつがあり、キッチンと連続したリビングが、おふたりにとって唯一居心地のいい場所だったのです。
リフォームが終わって新たな夫婦2人暮らしが始まると同時に、1階和室をKさん、2階を奥様と各自が部屋を確保しました。 日中はKさんが主にリビングで過ごし、奥様は2階でこたつにあたりながら趣味のアートフラワー作りや縫い物、テレビを楽しんでいます。どちらもエアコンやストーブなしで過ごせる快適空間なのはいうまでもありません。
奥様は「夫の定年後に夫婦が同じ場所で24時間一緒、というのは窮屈なんですよ。趣味もテレビも室温の好みも違うし。 少しでもけんかしないで仲良くやっていくには、お互いに干渉しない部分があっていいんじゃないでしょうか」。
Kさんも「毎朝2人で歩いていますが、私たちは歩数もスピードも違うんです。一緒にやるのが無理なことも、あるんですね」とうなずきました。
人と人とが密接に関わり合うとき、それぞれが自由な時間と空間を持ち、好きなことを我慢せずにやれることは、 お互いを尊重し良い関係でいるための大切な要素のひとつではないでしょうか。長年ともに生きてきたご夫婦だって、それはきっと同じはず。
お話をうかがう中で、ご夫妻の間に自然で心地よい空気が満ちているのが感じられました。 肩の力を抜き、よい距離感を保ちながら長く仲良く暮らしていく…おふたりの選んだ生活スタイルを、 エコリフォームのもたらした快適な部屋が、足元から応援しているようでした。