窓から快適、リフォームレポート -広がる景色と快適さを両立 東京都 M邸 戸建て-
立地 | 東京都青梅市 |
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住宅形態 | RC造一戸建(1993年竣工) |
住まい手 | 夫婦 |
リフォーム工期 | 2006年12月(1日間) |
工事費用 | 21万8,000円(施工者により独自に設定された保証を含む) |
窓リフォームに使用したガラス | 真空ガラス |
山梨県に発して東京湾に注ぐ全長約138kmの多摩川は、関東を代表する河川のひとつ。今回訪れたのは、その川面に面して建つMさんのお住まいです。
M邸は、建物の北側が竹林を隔ててすぐに川、その向こうは緑の山肌という静かなロケーション。以前に住んでいた青梅駅近くの家が道路の拡張計画にかかり、竣工以来住む人がなく新築ながら空き家だったというこの家に引っ越してきたのは、約4年前のことです。
青梅のまちは中央を多摩川が流れ、その北と南とに大きな道路が走っています。川へ向かうほど土地は低くなり「うちは上の道路から100mくらいは下っているかな」とMさん。真冬の気温がマイナス2~3度まで下がるこの地にあって、M邸ではさらに1度ほど低くなる寒さに悩まされていました。といっても、実は家全体の話ではありません。際立つ冷気でMさんを困らせていたのはピンポイント、"浴室"でした。
M邸はリビングや寝室など、ほとんどの部屋の窓にペアガラスが使われています。その効果もあるのでしょう、仕事場から帰宅して玄関を開けると夏はひんやりし、冬もあわてて暖房のスイッチを入れたくなるような寒さは感じずにいられる、四季を通じて快適な室内環境が保たれているのです。
そんな家の中で浴室だけは例外でした。北側の裏庭に面した浴室からは、大きなコーナーガラスの窓を通して多摩川の流れやその手前の青々とした竹林が一望でき、まるで旅館のような眺めです。しかしそんな魅力とは裏腹に他の部屋とは比べられないほど冷え冷えとして、高血圧などいくつかの生活習慣病を持つMさんにとっては「心臓が痛くなるほど」。入浴する前は換気扇をつけずに浴槽にまずお湯を張り、立ち上る湯気で浴室内を暖めてその後ようやく足を踏み入れていたそうです。
一緒に住む奥様も体が弱く、どうにかしなければと思っていた2度目の冬のはじめに、窓やサッシュを専門とする地元の工務店・M工房と出会い、相談をもちかけたのでした。
寒さの原因は、やはり窓。単板ガラスが入ったコーナーガラスの窓は眺望こそ抜群ですが、冷たい外気温はほとんど遮断されずに遠慮なく浴室内に入り込んできます。当然結露も激しく、これでは眺めどころではありません。
相談を受けたM工房は、浴室の最大の魅力であるコーナーガラスを、意匠はそのままに真空ガラスに交換することを提案します。真空ガラスはエコガラスの中でも断熱性能が高いガラス。その分コストもかかりますが、このガラスを提案したのにはわけがありました。
今回の工事内容は既存のアルミ枠を残してのガラス交換です。もともと単板ガラスが入っていた枠に、2枚のガラスを合わせて間に空気層をはさんだエコガラスをおさめるとすれば、そこでは当然薄さが求められてきます。加えてこのエコリフォームには、真冬の入浴でも寒さを感じない浴室にするという大目的がありました。薄い上に強力に断熱する、この要求にこたえるもっとも高い性能を持っていたのが、真空ガラスだったのです。
提案にあたって、M工房は単板ガラスと真空ガラス両方のサンプルとコールドスプレーとをMさんのもとに持ち込みました。スプレーでサンプルに冷たい空気を吹きつけ、その反対側に手を触れてもらうことで、断熱性能の差をMさん自身に実体験してもらったのです。体感だけでなく、温度計を使っての具体的な数値確認も行いました。あくまでも住まい手に納得してもらった上で最善のエコリフォームをしたい、M工房の真摯な姿勢がここに表れています。
実はこの工事にはもうひとつ重要なポイントがありました。2枚のガラスを直角に突合わせるコーナーガラスは通常の窓工事に比べてより高度な施工技術が求められます。とくに真空ガラスの場合、劣化や破損の危険が大きくなるため直接の突合わせができないのが実情です。
そこでM工房は、コーナー部分にオリジナルのアルミ方立てを入れてガラス同士をじかに接触させない施工を提案しました。この方法では、今までガラスだけだった視界の中央に新たに方立てが立つため外の見え方が少し変わってしまいます。それは風景がカナメのこの浴室にとって決して小さくはない変化。しかしM工房は、エコガラスの性能を最大限に生かして暖かい浴室にすることが住まい手にとっては大切と考え、あえてこの施工方法を提案しました。担当したUさんは「方立てを入れずにリフォームするのはやはり難しかったと思いますね」と振り返ります。
提案を受けたMさんは、方立てについてもコストについても理解し、快く了承しました。そして引っ越し後2度目の真冬を迎える前に、コーナーガラス窓をエコガラスに交換するという、あまり例のない貴重なエコリフォームは無事に終了したのです。
今は寒さによる体への負担がなくなり、安心して入浴できるようになったMさんご夫妻のもとへは、お子さんやお孫さんもしばしば訪れては広いお風呂と窓からの眺めを楽しんでおられるとか。
住まい手と施工者とが互いに最善策を考え納得し合うことで実現した、デザイン的にも技術的にも高いレベルのエコリフォーム。コーナーガラスごしに揺れる竹の緑に、心安まるバスタイムを想いました。