窓から快適、リフォームレポート -子どもたちに伝える和の心 東京都 K邸 戸建て-
立地 | 東京都品川区 |
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住宅形態 | 木造一戸建(1962年竣工/1977年第1回改修/2005年第2回改修/2009年和室部分エコリフォーム) |
間取り | 5LDK+和室 |
住まい手 | 夫婦+子ども6人 |
リフォーム工期 | 2009年 |
工事費用 | 169万5,750円 |
窓リフォームに使用したガラス | 遮熱エコガラス+防犯ガラス |
今回のエコリフォームの舞台は、大事に使われながら半世紀近い時を経てきた「和の空間」です。住まい手のKさんご一家は、ご夫婦+上は18歳から下は0歳まで、男女3人ずつ計6人の子どもたちからなる大家族。にぎやかでのびのびとした暮らしの中心に、その和室はありました。
過去に一度大きな改修がされたものの、築後すでに40年近かった木造住宅に一家が移り住んだのは約10年前のこと。「サザエさんの家みたいに子どもが畳の部屋をかけ回るのが夢だったんです」というKさんが、床の間・広縁・障子・欄間と本格的なディテールがそろった和室をひと目で気に入り、購入を決めたそうです。
その後、家族の生活に合わせてLDKや居室を全面的にリフォームした際も、和室だけはそのまま残しました。「畳や障子のある和室で遊んだ記憶を手渡したい」そんな思いでKさんはこの部屋を子どもたちに開放。プロレスごっこをし、おもちゃを広げ、昼寝ができ、障子に穴をあけてお説教もくらう、自由な空間にしたのです。
悩みは冬の寒さでした。壁が少なく開放的なつくりに加えて、古い木造の建物はすきま風が通りやすく、断熱材の入っていない広縁は冷えきり、部屋全体が冷蔵庫のようでがまんできなかった、とKさんは振り返ります。
2009年、6番目の子どもの誕生がKさんに和室のリフォームを決断させます。小さな子どもたちとお母さんの寝室にもなっているこの部屋を「新しい家族が病院から帰ってくるまでに暖かくしたいと思って」。和の空間性はそのままで快適な部屋をめざし、選んだ方法は、和室を囲む8枚の掃き出し窓の交換+広縁の断熱と張替のエコリフォームでした。
できるかぎり和のディテールを残して雰囲気を保つことを念頭に、リフォームは進められました。エコガラスと防犯ガラスを組み合わせた窓は、室内側サッシュに本物の木が使われ、畳と障子と木の柱とで構成された和室の風景になじんでいます。当初残したかった木の欄間は寒さ対策の大きなネックとなることがわかり、思い切りよくあきらめました。
きしみがひどくて踏み抜く危険もあった広縁は断熱し、かすかなざらつきが裸足に心地よい竹のフローリングに張り替えました。スクリーンは和風の巻き上げ式すだれに。その一方で障子や欄間、柱などには手がつけられていません。収納スペースにされてしまうことが多い床の間もそのまま残し、軸を掛けた本来の姿で和の空間をひきしめています。
こうして古いものと新しいものとを同居させた本格和室のエコリフォーム、さて結果は?「寝ていて温度が全然違う! ひやっとしないですね。子どものおねしょも減ったかな」。大成功でしょう、とKさんも奥さまも満足げな笑顔です。
日中の部屋の使い方も変わってきました。冬は寒さで障子を閉めずにいられなかったのが、リフォーム後は障子を開けて庭を眺める機会がふえたとのこと。
これから迎えるリフォーム後はじめての夏にも期待がふくらみます。昨年までは南西からの日ざしで広縁はサウナのよう、障子を全部閉めないとエアコンが効かない状態でした。遮熱エコガラスの窓を通して真夏の明るい光や庭の緑を、障子に目隠しされずに涼しい部屋から楽しめるのも、もうすぐです。
では、この家の主役である子どもたちと和室との関係はどうなったでしょうか。Kさんいわく「リビングより広縁でよく遊ぶようになりましたね。前と違って床が冷たくなく寒くないし。竹の無垢材にしたのも正解だったかも、裸足で歩いて気持ちがいいですから」
電車や車が大好きなK家の子どもたちは、障子の敷居におもちゃの電車やミニカーを走らせ、畳や広縁を鉄道レールで埋めつくし、疲れれば場所を選ばず寝ころんだりと部屋全体をフル活用しています。使うときだけ一時的に座卓などの家具を置き、ふだんは広い空間を保つという、和室本来のありようが十二分に生かされているようです。
その姿に目を細めるKさんは、大家族の中に育って畳の部屋で遊び、若い頃には海外を放浪して異文化の生活もまのあたりにした経歴の持ち主。そんな経験からなのでしょう、「縁側でスイカの種をとばして食べたり、和室で鍋やそうめんを囲んだり。日本にいるなら日本人らしい暮らしをして子どもにその良さを体験させてあげたい。大人になったとき、そういう親父の価値観をできれば共有してほしいじゃないですか」子どもたちに"心の故郷"を贈りたい、そんな思いが言葉のはしばしから伝わってきました。
住まいは夏を旨とすべし、とは『徒然草』の一節です。地域によって違いはあるものの、昔から日本の住宅はその多くが風通しよく湿気を逃がしやすい、いわば「夏向き」につくられてきました。石の壁でできた西洋の家とは対照的に、柱と梁で組まれて開口部が多いのが日本の伝統的木造家屋の特徴。やはり寒さには少々弱いといえるでしょう。
この弱点をカバーしたK邸のエコリフォームは、四季を通じて居心地のよい「和の空間」を住まい手にプレゼントしました。エコガラスに抱かれた和室とともに暮らす家族が、それぞれの記憶の中にこの宝物を刻んでいく…古くて新しい家にまた積み重ねられていく歴史の一端に、ほんの少しだけふれたような気がしました。