窓から快適、リフォームレポート -寒さも結露も暑さも消えた 東京都 M邸 戸建て-
窓を着がえて、暮らしも着がえて。寒さや暑さのお悩み解決から楽しくここちよい家づくりまで住まいに新しい豊かさを運んでくれる、さまざまなエコリフォームをご紹介します。
多摩丘陵の自然の恵みを受けつつも0度を下回る冬を快適に過ごすのはやっぱり大変…
二重窓と床暖房のWリフォームは、寒さや結露の完全解決はもちろん家族のDIY心をも引き出して、住まいに彩りと個性を添えました。
緑豊かで閑静な住宅地、その一角にM邸は建っています。14年前、横浜のマンションから移って以来悩んでいた"寒さ"と"結露"の問題をエコリフォームで見事解決したお宅です。
引っ越した最初の冬から、外気温は−8℃と横浜では考えられない寒さ。暖房すれば結露でカーテンがびっしょり濡れ…と大変でした。「窓に問題があるのはわかっていましたが、建売住宅の窓を全部取り替える余裕はなかったですね」と話すのは、住まい手であるMさん夫妻の奥様。当初輸入住宅を建てたいと思っていたご夫妻はペアガラスや二重窓について十分な知識があり、ペアガラスを使った長野県の親戚の家が八王子の自邸より暖かいと実感したことも手伝って、最初から「リフォームするならとにかく窓!」とお考えだったそうです。オーディオ好きで音に敏感なご主人の防音への意向もありました。
リフォームに踏み切ったきっかけは、ご主人が定年退職を迎えて時間的ゆとりができたことと、同居するお母様の健康を考えた寒さ対策、のふたつだったといいます。そこに、NEDO(ネド:独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が窓と床暖房をセットにした住宅リフォームに対して補助金を出しているのを知ったことで、ご夫妻の心は決まりました。
今回のリフォーム最大のポイントは「二重窓」です。これはNEDOの補助金を使う条件でもありました。M邸はリビングや一部の和室を除くほとんどの居室をエコガラス使用の二重窓にリフォーム。結果、「寒さに関してはもう全然! 以前は窓の近くに行くだけで冷気を感じましたが、今はガラスをさわっても全然冷たくない。結露もどこにもないですね」と奥様はにっこり。
一枚ガラスの窓の場合、暖房の熱は窓を通って5割近くも外に流れ出てしまいます。室内の空気が窓で冷やされ足もとに流れおりる現象「コールドドラフト」も起こりやすく、これは不快なだけでなく、急激な温度変化で脳卒中の危険が増すなどとくに高齢者への影響が心配です。二重窓は、高齢のお母様が同居するM邸のこの不安も一掃してくれました。
寒さ対策のもう一方の立役者が「床暖房」。窓リフォームと同時にリビングスペースに設置されたガス温水式床暖房は、今や欠かせない存在になっています。
「1月2月もエアコンやストーブは使わず、本当に床暖房だけ。朝5時にタイマーをかけ、起きる頃には部屋全体が寒さを感じない温度になっています」エアコンの風は苦手、室温も20度くらいで十分だから…とおっしゃる奥様ですが、なにしろ外気温が零下になる土地での真冬の話です。下から室内全体を暖める床暖房と、暖かい空気を外に逃がさない二重窓のコンビネーションによる暖房の威力は、まさに推して知るべしでしょう。
せっかくのリフォーム、おしゃれさや楽しさだって考えたい…そんな思いも大事にしたいものです。
M邸のリビングの大きな魅力は、真南に面したコーナーガラスの出窓です。ここと、同じくリビングにある掃出し窓は二重窓にせず、既存のサッシを残してガラスだけを交換しました。「二重窓だとコーナー部分に柱を立てる必要があり、そうはしたくなかったんです。出窓もこのまま使いたかったし」ピンクや赤のシクラメンや観葉植物の鉢が並ぶ窓まわりはリビングの顔といっていい空間、大切にしたいとの奥様の言葉もうなずけます。デザイン性をきちんと考慮した柔軟な考え方は、これからのエコリフォームのお手本のひとつともいえそう。
デザインへの視点は二重窓にも表れています。Mさん夫妻が選んだのは、サッシ部分が明るい木目調にデザインされた窓。木の風合いが好きで家具もほとんど木製、しかもご主人は木工が趣味という生活志向から、自然に決まっていったそうです。そして実際に取りつけるとそこには予想外の効果が。「もとの窓枠は黒色ですが、それが二重窓で隠されて部屋がすごく明るい感じになって。室内全体のイメージが明るくなりました」窓リフォームは快適さと一緒に「いい雰囲気」をも、M邸に連れてきてくれたようです。
せっかくのリフォーム、おしゃれさや楽しさだって考えたい…そんな思いも大事にしたいものです。
もうひとつのエコリフォームがM邸には隠れています。1階北側の水まわりも全部二重窓ですが、こちらはなんとM夫妻のご主人の手づくりなのです。
ご主人は解体した古民家の材木を買い込んでは棚やテーブルなどの家具や小物をつくるのが趣味という器用な方。今回のリフォームで出た廃材の窓ガラスを利用し、キッチンからバスルームまですべての窓に、内開きで固定もできる二重窓をつくりました。
DIY二重窓の活躍は主に夏場です。北側は隣家の居間の正面に近く、窓が開けづらいという問題がありました。DIY二重窓の内窓を調整することで視線を遮りながら外窓を全開できるようになり「家全体に風が流れて過ごしやすくなりました。南側も庭木が直射日光を防いでくれるし、エアコンは暑さがかなり厳しいときに使うくらいかな」とは奥様の言葉です。
プロの仕事をきっかけに住まい手自身も家に手を入れ、使いこなしてさらに気持ちのいい住空間がつくられていく…M邸に流れる心地よさの中には、窓リフォームが実現した快適さと、そこにシンクロする家族の思いや暮らし方が溶けあった豊かさが満ちています。「夏は雑木林の中にいるよう」という緑に囲まれた家で、エコリフォームの新たな魅力に触れた一日でした。