開口部にこだわった新築レポート -神奈川県 K邸-
今回訪問したK邸のご主人は、都市開発にたずさわる不動産の専門家。そのうえ『渡辺篤史の建物探訪(テレビ朝日)』や『大改造!!劇的ビフォーアフター(朝日放送)』を欠かさず録画し、研究されるほど住宅建築が好きな方です。そんなKさんが、たまたま建築雑誌で見かけたのが、設計を担当された北川さんでした。
「北川さんのプロフィールや家づくりへの姿勢に、好感が持てました。これはと思ってご連絡させていただき、実際に北川さんのご自宅へ伺ったんです。そのセンスと機能性に夫婦そろって感激してしまって。北川さんこそ僕らの運命の方だと感じました」とご主人。北川さんも、「当時、私が印象的だったのはA4用紙1枚を手に、Kさんがいらしたこと。優先したいご要望を、まとめられていたんです。家づくりへのこだわりや想いを感じました。さっそく土地を拝見し、そのご要望を実現することが私の使命となりました」。 まずは、幸運な出会いから、家づくりが始まったようです。
Kさんが購入されたのは、横浜市の丘陵にある住宅街の一角。南面傾斜の上段で、北側と西側が道路に面した角地です。恵まれた立地である一方、人気エリアだけに住宅が密集しています。とくに、肝心の南側は隣地住宅と接していて、採光や外部からの視線に対応した工夫が必要でした。そこで北川さんはある発想に。一般的に家の中はオールフラットなのですが、それにとらわれることなく、南に傾斜した土地の形状に家をなじませようと考えたのです。こうして、K邸は北側の床が南側の床より60センチ高い階段上の配置計画となりました。
いちばん低い1階南側に水回り(浴室、トイレ、洗面室)。そこから上がった同1階に寝室と子ども部屋。水回りが低いことを利用して、中2階のロフト収納を設けました。2階に上がるとリビングを中心にキッチン、書斎がひとくくりになった居住空間が広がります。 さらに吹き抜けにアーチ階段を渡して外のテラスへ。この大きなテラスによって南側隣地住宅との間にスペースが生まれ、大きなガラス窓からの採光と眺望が叶いました。"土地形状に家をなじませる"という基本アイデアが、大きな窓の明るいリビングでの生活を生み出しました。
K邸の魅力について伺ったところ、ご夫婦そろって大きな窓とおっしゃいます。奥様が指さす先には、大きな窓。「オフィスや公共施設では見かけますが、こんなに大きい窓はふつうの家にはありませんよね。カーテンを必要としない大きな窓、というのも最初からお願いしていましたが、まさか、こんなに大きな窓とは!」と、とても気に入られている様子。
最初に土地を見学したとき、テラスの腰壁で南隣地の視線は遮る必要はあるものの、プライバシーを守りながらも角度によっては大きな開口部を作れると感じていた北川さん。リビングの一面に大きな窓を設計し、さらに2階の居住空間はいろいろな方角に高窓も。日中はどの方角からも陽射しを得られるリビングとなりました。
「家の中で子どもと遊んでいても、なんだか外で遊ばせているような雰囲気なんですよ。また、すべての窓に複層ガラスを使用していますから、冬は暖かくて暖房がいらない日も。夏は各方向の窓を開ければ風通しが良く快適です」と奥様。
日々の暮らしに光があふれ、快適なリビングに惚れ込まれていました。K邸のもうひとつの特徴は坪庭です。K邸の南東角には坪庭が配置され、それを囲むように寝室と浴室が配置されています。
「まさか、自宅のお風呂から外の眺めが楽しめるなんて。坪庭の照明だけで入浴すると、まるで露天風呂のような雰囲気です。ゆったり過ごせて、一日の疲れも癒されます」とご主人。「坪庭は1階の水回りや寝室に光を取り込むための工夫と北川さんに聞いています。住んでみると、階段上からふと緑を感じられる癒しの空間でもありますよ」と奥様。
坪庭は光を取り込みにくい1階を明るくし、2階からも眺めを楽しめるK邸の癒しの空間となっていました。
大きな窓と坪庭という特長を持ったK邸。実はその他にも魅力がいっぱいあります。
「壁は自然素材を選びました。ちょうど子どもが生まれる時期でもありましたから、調湿性や人にやさしい素材に越したことはないと考えていたんです」とご主人。「シラス壁を採用しました。ナチュラルテイストというより、ご主人の好みに合わせてシンプルな色味にしています」と北川さん。
生涯住まう家だから、お子さまが自立された後のことも考えて、家づくりをされたとか。「子ども部屋は可動間仕切りにしておいて、大きく使ったり、いずれは夫婦それぞれの趣味の部屋にしてもいいかなと思っています」、「マッサージルームにしたり、エステタイムを一人で楽しんだりしたいですね」とご夫婦で将来のあり方も楽しみにされている様子。
「この子が大人になった時、私たち夫婦がこれだ!と思うデザインの家に住んでいたことを誇りに思ってほしいんです。この家は私たち夫婦の好きなデザインですが、そこで感性を磨きながら育つことで自分の好みを探していってほしいですね」とご主人。
考え抜かれたデザインほど機能的で人にやさしくなる住宅デザイン。K夫妻のお子さまの感性を刺激するいちばんの環境は、他ならない"我が家"なのでした。