開口部にこだわった新築レポート -東西南北に開口部のある家 東京都 イェー邸-
窓は、単なる家のパーツではありません。光の取り込み、風の通り道、断熱・防音、眺望、インテリアetc……と、 生活を快適に保つさまざまな役目をあわせもっています。そう、開口部にこだわるということは、生活にこだわるということ。 そんな生活にこだわるご家族のお住まいを拝見しました。
今月の家を手がけた建築家:豊田 健太郎
取材企画協力:OZONE家づくりサポート
<建築家選びから住宅の完成までをコーディネートする機関です>
数年前にご家族でアメリカから日本へとやってきたヴィンセント・イェー 様ご一家。マンション住まいでは子育てが窮屈と、家づくりを決心。都心の一角に土地を見つけ、家づくりに着手しました。
設計は、ヴィンセント様が以前所属していた設計事務所でニューヨーク近代美術館のプロジェクトを一緒に担当していた豊田先生。アメリカの建築家のライセンスをもっているヴィンセント様との二人三脚で家づくりに取り組みました。
「一番の懸案事項は限られた広さの土地を最大限に活用することでした」とヴィンセント様。
その結果、容積率をめいっぱい使用した地下1階、地上4階の家(3、4階は賃貸用)ができました。1階はエントランスからキッチンリビングに続くワンフロア、地下は家族でくつろぐファミリールームとヴィンセント様の仕事場、そして土間と庭代わりのドライエリア。
地下は容積率に含まれず、外から見えないのでプライバシーも守ることができるうえに、ドライエリアも作れて一石三鳥。
「外にも内にも開かれた家にしたかったんです」という言葉通り、大きな窓を設けたことで、外から見ても内にいても圧迫感を感じさせない住まいが実現しました。エントランスから明るいキッチンリビングスペースへのアクセスのよさも、外との敷居を低くすることに一役買っています。
さらに内側の「開かれ感」は、キッチンリビングの吹き抜け部分と間仕切りの少なさなどから申し分ありません。この吹き抜けは2階のホールと子供部屋、夫婦の寝室の窓にもつながっています。「一人になりたい時には一人になれる、でも基本は家族の一体感!どこにいても家族の空気がわかります」とヴィンセント様。
窓が多いということはガラスも多用しているということ。イェー邸では、基本的にはペアガアラスを使用していますが、場所によってガラスを使い分けています。
まずは南西に面した階段わきの大きな窓はエコガラス。たくさんの光をとりこみたい、でもその分、熱と暑さが入り込むのは避けられない…ということからLowーEのエコガラスを選択しています。 「ここは光がほしかったので大きな窓が必要でした。でもかなりの熱も取り込む場所…。
エコガラスでなかったらここにエアコン一台は必要だったでしょう。家をつくるときにガラスを考慮したことで、その後のエネルギーを節約したことになりますね」と豊田先生。
1階の北東側ドライエリアに面した大きな窓やバスルームの窓などには遮熱フィルムをはるなど、それぞれの状況に応じて使い分けています。
イェー邸に足を踏み入れるとまずおどろくのは、1階の壁面。コンクリート打ちっぱなしの壁面なのにあたたかい感じがするのです。その秘密は木目の型 押し。色も木の床とマッチして、なんともソフト。「あたたかくて優しい家」がいいというふたりの建築家のアイディアだそうです。
さらに見渡すと、ご一家お気に入りの和の雰囲気をだすために、随所に和紙を取り入れるなどの工夫が見られます。
「木と和紙の自然の感じが落ち着きます」とヴィンセント様。
そしてご家族のいちばんのお気に入りの場所は、ファミリールームのある地下。
ここは土間や畳、障子など和とフローリングの洋が融合したスペース。ソファもおいてありますが、過ごし方の基本は床の上。家族や親しい人たちとともにゆったりとした気分で思い思いに過ごす部屋です。
土間のわきにはヴィンセント様の仕事場があり、帰宅したお子さんの声を聞きながら仕事をするのがヴィンセント様の至福の時だそうです。
家族の「今」が心地よく過ぎていく、そんな家になりました。
家は家族とともに暮らし、くつろぐための場所。つまり、家の主役は家族です。家族の笑顔こそ「居心地の良さ」の証。とはいえ「居心地の良さ」は家族それぞれによって違います。まずは自分の生活や嗜好を見つめ直して、家族が折り合う着地点をさぐってください。ただし、見た目の好みを追求するあまり、「スタイリッシュ」だけど「落ち着かない」家になることもあります。「その刺激が好き」というものは、くつろぎスペース以外にもっていくようにしましょう。