開口部にこだわった新築レポート -3つの箱で構成された家 群馬県 K邸-
窓は、単なる家のパーツではありません。光の取り込み、風の通り道、断熱・防音、眺望、インテリアetc……と、 生活を快適に保つさまざまな役目をあわせもっています。そう、開口部にこだわるということは、生活にこだわるということ。 そんな生活にこだわるご家族のお住まいを拝見しました。
今月の家を手がけた建築家:桐山 和広
取材企画協力:OZONE家づくりサポート
<建築家選びから住宅の完成までをコーディネートする機関です>
長方体の3つの箱がならんだ、ちょっと楽しげな印象のK邸。木をふんだんに使った外回りは、古くからの日本家屋のようなぬくもりを感じさせます。一方、フラットな屋根部分はモダンな雰囲気。両方が組み合わさったちょっと独特な趣です。
玄関は?…と見ると、ありました。西側に引き戸。外回りと同様、木製なので、外回りになじんでいて、一見気がつきません。まさにびっくり箱のように、わくわく感たっぷりです。
一歩なかに足を踏み入れると、コンクリート打ちっ放しの、モダンでシンプルな空間。すっかり世界が切り替わります。
K邸はコンクリートの箱が南側から順に小、中、大と配置され、外装は唐松の板。しかも箱ごとに微妙に板の幅を変えている。みればみるほど味のあるお宅です。 南側の箱は玄関とバスルーム。といっても閉ざされた空間ではありません。オープンエアのテラスを併設してあり、露天風呂気分が味わえます。もちろん外からは見えないよう計算されています。真ん中はLDK、奥が2フロアの個室スペースという構成です。南に面したボックスの上部にワイドな窓があるため、通りから屋内はほとんど見えないのに、屋内がとても明るいK邸。大中の箱の南面にあるガラスの扉がとても印象的です。
光を取り込むだけでなく、低い位置から天井までの縦ワイドの眺望が得られ、外と双方向でつながります。上部のガラスと扉は、つながったガラスエリアとして、一体化して見えます。このL字になった部分はエコガラスを使用。冬のしんしんとした寒さも、もうれつな日差しもさえぎってくれます。さらにもう一つ、うれしいことがあるそうです。
「ここから夜は星がよく見えるんですよ」とK様。間接照明でそれほど明るくない屋内から、天気のいい夜は星空がきれいに見えるそうです。ちょうどダイニングテーブルから南の空が望め、くつろぎの時間をより楽しませてくれます。
もともとログハウス風の家が欲しかったという奥様、星空のもとでとる夕食、窓から見える自邸の木の外観など、ちょっとしたログハウス気分が味わえると満足のようです。
天井の高いリビングを希望されていたK様。念願かなって、最大(若干傾斜しているため)で5メートルの天井高のリビングが完成。
奥の個室スペースは、一応区切ってはありますが、普段は開放していて、天井もつながっているので一つの空間のよう。しかも2フロア分なので、真ん中にあるLDKスペースとあわせると実に大きな空間です。
現在、4歳と10か月の息子さんたちとご夫妻の4人で暮らすご一家は、この空間をフル活用してお過ごしです。子育てでお忙しい奥様は、家のなかを広く見渡せるのでお子さんの動きが手に取るようにわかるのがありがたいと言います。奥様のたっての希望で随所に設けた収納は、「急なときにさっと片づけられる」と重宝しているそうです。
実は、この家を設計した桐山先生は、K様のお兄様。
「兄が理想とする家にぼくらの希望をいれてできたのがこの家というところでしょうか」。コンクリートの箱をつなげた構造も桐山先生のアイディアだそうです。
「こだわりたい部分についてはきちんと話しましたが、基本はお任せでした」。昨年秋に竣工し、これから初めての夏を迎えるというK様ご一家。
「冬も苦もなく乗り切りましたので、夏もきっと涼しく、気持ちのいい暮らしができそうで楽しみですね!」