開口部にこだわった新築レポート -緑の中の家 神奈川県 K邸-
窓は、単なる家のパーツではありません。光の取り込み、風の通り道、断熱・防音、眺望、インテリアetc……と、 生活を快適に保つさまざまな役目をあわせもっています。そう、開口部にこだわるということは、生活にこだわるということ。 そんな生活にこだわるご家族のお住まいを拝見しました。
今回は、「ようこそ、我が家へ」初の建築家のご家族が登場します!
高台にある造成地の一角、南傾地に建つK邸は、シックな茶色と白のツートンカラーの外観が目印です。玄関は2階の北側。天窓と低い位置の窓から常に光の入るホールを抜けて南面のLDKへ。そこは仕切りのない約30畳の大空間です。 足を踏み入れると、南面から東面にかけてぐるりと巡らした一面の窓がど~んと目に飛び込んできます。
大きな窓からは180度以上のダイナミックな風景が広がり、昼はにぎやかな街並が、夜はほんのりとあたたかな夜景が、大きな一枚絵のように映し出されます。高台でもあり、前面が開けているので、景色の広がりはまるで高層階にあるホテルのスイートルームのようです。
「ここの土地はじつは崖だったので、人気がなかったんです。でも、ぼくは普通の平凡で平坦な土地よりも、いいと思いました。高台で景色も抜群にいいし、思い描いていたウッドデッキもつくれそうだし…。とにかく気にいっちゃったんですよ」とK様。
「それで結局大正解」と語ります。多数にとっての正解が必ずしも自分にもいいわけではない、ということでしょう。
「この素晴らしい景色を、年中無休24時間貸し切り状態なんて、こたえられませんよ」とK様。
週末には、ダイニングで夜景とワインを楽しみながらの、夫婦のひととき。もちろんリビングに設置したオーディオシステムからはK様お気に入りの音楽も流れます。
竣工は昨年11月。
「こんなにガラス張りで冬は寒くなかったですか?」と聞くと、「ガラス張りにしたかったからこそ、うちはエコガラスにしたんです」とK様。
冷気を入れないエコガラスだからこそ、南面から東面につらなるガラス張りも寒さを感じさせません。随所にある天窓も熱ではなく光を取り込みつつも、不要な暑さ寒さをシャットアウトしてくれます。もちろん結露もありません。
さらに、軒先を深くとってあるため、冬はまんべんなく部屋の奥まで光が差し込みます。
「ここは窓からの光だけで昼間は暖房が不要なくらいぽかぽかなんですよ」と奥様。じつはK様が選んだ床材では床暖房が使えなかったので、床材を優先して床暖房はつけていません。それでも不便はないそうです。
一方、暑い季節になると、今度は風が快適さを運んできます。海からの風、林からの風、それらが家の中を抜けていきます。
幸い「角度的に外から見えないので、カーテンを閉めない生活ができています。名実共に風通しがいいですよ」とK様。
「エアコンを使わなくても冬暖かく夏涼しい家を実現する鍵は、やはりエコガラスの選択ですね」。
近くに視線を移すと、リビングの窓に面して広がるウッドデッキ。室内のフローリングとはまた違った材質の木を使い、さらに広がりを持たせた空間です。
ここはK様ご一家みなさんのお気に入りの場所。
「小2の男の子と年長の女の子がいますが、平日は仕事が忙しくて、ほとんど子どもたちと食事をともにできません。だからこそ週末を大事にしています」とK様。ウッドデッキの東南角にテーブルを常設し、週末は必ずここで家族そろってゆったり朝食をとられるとか。さらに週末の夕食もウッドテラスでバーベキューをしたりと、リゾートのようなライフスタイルを実践しています。外のテーブルとキッチンが近いため、気軽に準備や片付けができるのもうれしい仕掛けです。
南面の窓から開けた景色が楽しめるのとはうってかわって、東南面は緑深い竹林。
ウッドデッキのテーブルの西側に座ると、緑の森が目に入ります。車もあまり来ない静かな場所なので、自然の中にいるような心地よさが味わえます。
「子どもが小さいうちに、自然の中でゆったりと過ごす家族の時間をたくさんもちたいんです」というK様ご夫妻。冬はぽかぽかと日当たりがよく、夏はタープが設置されており風通しもいいので、常に大活躍の空間です。
土地の弱点がわかっていたK様。きちんと土台さえ補強すれば安全で強い家ができると、オゾンの家づくりサポートで、構造に強い建築家さんを紹介してもらいました。
3人の建築家によるコンペでプランを出してもらったそう。「条件はホームシアターのある広いリビング、家族そろってこの景観を生かし食事もできるようなウッドデッキなど。もちろん、安全で丈夫な家というのはいうまでもありません」。そこで出会った佐藤先生。
「先生のプランを見て、それまで言葉になっていなかった自分たちの望みまでも形になっていると思いました。そのときの設計図こそ今の家って感じですね」とK様。それからの日々は、「細かな素材など、佐藤先生がめずらしいものをさがしてきて提案してくれました。ああだこうだと一緒に選ぶのは楽しかったですよ。今見ると、玄関のタイル床のタイルやリビングのレンガなど、どれもエピソードのあるものばかりです」とK様。
「基本はおまかせだったのですが、結果的に家事動線もしっかり考えてくれていたので、変に細かいことを言い出さなくてよかったなあと思います」と奥様。
土地購入から数えると、地盤の補強なども含め約3年という月日をかけてじっくり作り上げた家です。ゆっくり新しい生活を思い描きながらの家づくりは、思いのほか楽しかったそうです。
1階は、子ども部屋と夫婦の寝室、書斎と比較的区切られた空間です。どの部屋にも明るい光が差し込み、ゆったりした感じが漂います。お子さんが遊んだり宿題をするのはもっぱら1階。集中するのにちょうどよさそうです。
外がよく見渡せるお風呂も、リゾートホテルの露天風呂のようです。
「中途半端な場所だったらもう旅行には行けません。家がいい!」と奥様。
最近、家の西側で家庭菜園を始めたというK様。「土壌を改良したり、給水タンクを設置したり結構大変ですよ」。野菜づくりを通信教育で学んだり、作業着も買いそろえたりと、マイペースで楽しんでいるご様子。秋にとれた野菜でバーベキューをするのが次の目標とか。
「自然の中で心ゆくまで家族の時間をつくっていける家です」とK様は爽やかな笑顔を見せてくれました。