省エネ基準をはじめとする建築物の性能を常に意識した意匠設計をなさっています。重視する点は?
木造住宅ではまず耐震・制震を考えます。
耐震等級は3にもできますが、建物を固くするだけよりも、等級は2程度にして制震性能を加える方が多いですね。
組み合わせることで、繰り返す大きな地震に対する粘り強さが増すからです。固さだけ上げても、繰り返す地震動で釘や金物が緩んでしまえば設計時の耐力を維持することができません。
等級3より、等級1で制震を入れた方が粘り強いという実験データもあります。
制震システムで揺れを吸収し、建物を長持ちさせるということですね。断熱・省エネ性能はいかがでしょう。
とくに住宅では、断熱等級4以上を必須にしています、ローン減税などにも関わってくるので。住宅建設時の補助はここ十数年で基準も制度も大きく変わり、設計者がすべてを把握するのも大変ですが。
性能の確保を強く意識されるのはなぜですか。
事務所設立以前はゼネコンに勤務していました。そこで棟数を踏み、多くの経験を積んだのがきっかけです。
とくに断熱性能については“夏あったかい屋根”をたくさん見てきたので(笑)
そこから省エネ基準について調べ始めましたが、当時はハウスメーカーが建てている家でも断熱材は薄かったです。
そこで独自に、屋根にはスタイロフォームを最低でも10cmは入れよう、というところから始めました。15年前には、自宅の屋根部分をふかして断熱改修もしています。
設計される建物はどれも、屋根・床・壁などに十分な断熱性能を持たせています。開口部の断熱は?
窓はほぼ全部エコガラスです。断熱等級に直接影響してきますから。
富士山が見えるなどの良い条件があって西側に窓を取る場合は、遮熱性能の高いものを採用します。加えてそこに落葉樹を植えることで西日を遮ったりもしますね。
南側の窓では、日射取得型のエコガラスにして冬の日差しを室内に取り入れるようにしています。
ここで使い方を間違えると、暖房費がとても高くなるんですよ。夏の暑さの方がどうしても印象に残りますが、実は冷房より暖房の方がよりお金がかかるんです。