東京の建築設計事務所で10年勤めた後、故郷の長野県で独立されました。信州という土地で住宅や建物の設計を行う前提はなんでしょう。
冬の寒さにどう対応していくかですね。室内の構成から窓の向きまで、暖かくすることを考えます。
事務所設立当初から、窓は高断熱の木製サッシを使ってきました。長野県は結露が大問題なので。
それから、薪ストーブをなるべく室内の真ん中に置くようにします。薪ストーブって圧倒的に発熱量が多くて、それが見える場所は基本的に暖かいんですよ。県からは補助金も出ています。
また、建物の外も内も木を多く使います。長野は森林県ですが、木材県ではなくて、使い切れていないんです。産業として使えるようにしたいですね。
性能を確保した上で、意匠設計に入るのでしょうか。
いえ、基本はデザインやプランニングで、数値はその後です。
住宅の設計では、お施主さんにオリジナルのアンケートを書いてもらいます。趣味の内容から持っている靴の数まで、プライベートなことも全部わかるようなものですね。
それを読み込むことで“どんな家をつくりたいのか”を組み上げ、そこからデザイン・機能・コスト・メンテナンス面まで掘り下げていきます。
性能よりデザインやコストが優先される場合もありますか。
お施主さんは、数百万円のサッシでも「青木さん、予算を削ってもこの窓は残してね」とおっしゃいますよ。
こちらが強制しなくても、住まい手自ら「これを使わないとダメだよね」と言っていただけるまで、丁寧に説明します。
きちんと話し続けていくと、竣工の頃にはお施主さんは“プロ”になるんです。室内環境の調整やメンテナンスも、使う人が自分の手でどうにかできるようになります、工務店さんと一緒に。