練馬区は東京23区内で居住人口第2位です。武蔵野台地上に広がるこのエリアで行われたエコリフォーム住宅を訪ねました。
低層マンション内、最西に位置するM邸は角住戸。「風向きと日射とで季節がわかるんですよ」との住まい手の言葉からうかがえる通り、隣接住戸との境にベランダがついていて東西南北全方位に窓があります。
フラワーアレンジメントと刺繍の講師であるMさんは、竣工と同時に入居して以来、アトリエとしても使いながらこの自邸で長い時間を過ごしてきました。
「春は東向きのコーナー窓から朝日が入り、夏は西日が強い。冬は北向きの風が吹いて、陽の光は一日中部屋の中に射し込みます」とは、室内での一日を春夏秋冬見つめてきた人の確かな目線でしょう。
たくさんの開口部に囲まれ明るく広がりのある住居はしかし、外の冷気や熱気の影響を大きく受けてしまう一面もあります。
西面に窓が多いM邸の夏は、西日がもたらす厳しい暑さに毎年のようにさらされました。
一方、冬にはすべての窓が結露し、巾木の傷みも如実に。「とくに北の部屋は、扉を開けると冷蔵庫のようでした。窓際にはヒーターも置いていたのですが」
カーテンを引いてもその裏から冷気が流れ落ちてくるのがわかり、窓を背にしたダイニングチェアに座れなかったそうです。温度ムラも激しく、とくに玄関から続く廊下は寒かったとのこと。
部屋ごとに閉め切ってそれぞれエアコンを回していたのは、いうまでもありません。
しかしMさんは札幌出身で、セントラルヒーティングが普通な中で育ちました。「人がいる部屋だけ暖めるのは今でも好きではないんです。家中の扉を全部開け放しておきたくて」
あいにく、北海道ではスタンダードな二重窓や床暖房がこの家には備えられていませんでした。
我慢を続けていたある日、たまたま親しいご近所が見せてくれたのが、同じ練馬区内にあるガラスのプロショップ・南ガラス工業所のチラシです。エコガラスの一種である真空ガラスの効果や、エコリフォームについての説明が記載されていました。
窓ガラスで結露や寒さを解消する方法を初めて目にしたMさんでしたが「10年保証もあるというし、試しに北の部屋だけやってみようと思って(笑)」気軽に電話をかけたのでした。